にじさんじライバー、そしてブランド商品、それぞれの新しいカタチを目指して
──にじさんじとコラボレーションしたブランド「UN-DIMENSION(アンディメンション)」は、どのような経緯・背景で生まれたのでしょうか?
ANYCOLOR営業 丸田(以下、丸田):以前からウエニ貿易さんとは香水のコラボレーションをさせていただいていたんですが、その際に非常ににじさんじとライバーに寄り添ったご提案やご進行をしていただけたんです。そのうえで、次は香水以外でファンの皆さんが日常生活で違和感なく使えるような商品を、ライバーたちのプロデュースでお届けする企画がやりたいと思った際に、ウエニ貿易さんならと思ってお声がけさせていただきました。
「にじさんじライバープロデュース香水」第1弾のラインナップ。
しかもウエニ貿易さんはたくさんのブランドを抱えておりまして、その中で「PELLE MORBIDA(ペッレ モルビダ)」という革製の鞄やアクセサリー類において、国内の業界でもトップクラスの人気とシェアを誇っているブランドをお持ちなんです。また、そういったブランドの知見や技術、体制がすごく整っている会社さんでいらっしゃるので、いの一番にウエニ貿易さんへご提案させていただいたという経緯です。
ウエニ貿易担当 児玉(以下、児玉):弊社としては、もともと香水のお取り組みがあったこともそうなのですが、やはり社内にもにじさんじさんのことをすごく好きなメンバーがおりまして、社としてもスタッフとしても「にじさんじの魅力」を感じる土壌がありました。
その中で、当時はコロナ禍でオンライン販売が主流になっていたので、だからこそにじさんじさんの魅力をリアルで体験できる価値を付けられるものにできないかと考えました。それに加えて、「PELLE MORBIDA」ブランドの販売は百貨店さんがメインで取り扱っていただいているのですが、そこに今までのファングッズとは異なるご提案を差し上げたいという考えもあったので、ANYCOLORさんのご相談をぜひにと受けさせていただき、今の「UN-DIMENSION」というプロジェクトの土台となるご提案をさせていただきました。
弊社の中にもさまざまなセグメントがあって、もっと安価なものを作っている部署もあるのですが、そうなるとどうしても既存のものとの差別化が図りづらいんです。ですがANYCOLORさんとであれば、百貨店さんで取り扱っていただけるようなもので、ほかとは大きく差別化した新しい取り組みができるんじゃないかと、社内でも期待されていました。
UN-DIMENSIONロゴ
大切にしたのは、ファンにとっては普段使いができる喜び、ライバーにとっては想いをカタチできる場
──「UN-DIMENSION」のコンセプトやブランド名、またそのラインナップなど、具体的なコラボ内容はどのように決めていったのでしょうか?
丸田:ありがたいことににじさんじのライバーたちには本当にたくさんのファンの方々がいらっしゃって、皆さんに支えられて日々の活動をさせていただいています。そのファンの方々の応援の手段として、「購入したグッズをファンの皆さん同士で集まって見せ合ったり、SNSで発信したりする」というものがあります。
例えば缶バッジをたくさん使って飾る鞄を作ったり、お出かけをされた際にアクリルグッズやパペットと一緒に写真を撮ったり、そういったことをして楽しみながら応援してくださる方が多くて大変光栄に思っているのですが、そういう既存のグッズは日常生活で使うのはなかなか難しいだろうという感覚があったんです。
やはり普段から応援をしたいと思ってくださっても、なかなかキャラ物やイラストのある小物を持って、学校や仕事に行くのはハードルが高いと感じられる方もいると思うんですよ。だからそういうシーンでは、さりげなくアピールができる程度で日常に溶け込みながら使用できるグッズというのは、需要があるんじゃないかと考えたんです。そういうコンセプト、方針をウエニ貿易さんにご相談しまして、「それなら今の小物や雑貨の流行を取り入れつつ、せっかくだからコラボするライバーの意見をふんだんに盛り込んで、日常的に使える物を作っていきましょう」と共感いただけて、内容を詰めていきました。
「UN-DIMENSION」第1弾のメインビジュアル。
児玉:商品の開発背景については今ANYCOLORさんにお話しいただいた通りです。そこから普段使いできるというところに加え、百貨店さんの1階にあるハイブランドが並んでいるようなスペースに並んでも見劣りしない物を作りたいという思いが我々にあったので、そういった路線でデザインを提案させていただきました。
「UN-DIMENSION」という名前は弊社が主導で検討し、ご提案させていただいたものになります。ファンの皆さんにリアル店舗で商品を触るということに対して今まで感じたことのない満足感や価値を感じてほしいという思いを込め、「次元=DIMENSIONがない」という意味で付けました。
リアル店舗でのポップアップショップを開催する際は、実際の商品を通じて体験価値を感じていただきたかったので、その名前の表す通り、次元の壁をなくしてお客様と繋がるというコンセプトを踏まえた空間作りにもこだわりました。次元の壁をなくしてお客様と繋がるというコンセプトを踏まえた空間作りにもこだわりました。
──「普段使いできる」「日常でさりげなくアピールできる程度」といった商品設計のコンセプトについて、ライバーの個性や魅力を盛り込みつつも百貨店に並ぶブランド雑貨と遜色ないような形に整えるために、意識されたことはありますか?
児玉:ANYCOLORさんとデザインコンセプトをすり合せさせていただいた際、方針の一つとして「見えない」というものがありました。
例えばライバーさんのイメージを入れたいとなった場合も、イメージカラーであればその色を内側に入れたり、マークであれば色を付けずにあえて素押しのようにして柄が目立ちすぎないようさりげなく付けたり、「表に見えない」「一見そうは見えない」けど、いわゆる「らしさ」みたいなものの主張はしっかり具現化する……このあたりのバランスを、ちゃんとライバーさんの意見を吸い上げながら、弊社のアレンジを加えるところに一番注力をさせていただいています。
これはブランドあるあるだったりするんですが、目指すところは自分の好きなブランドのバッグを持っている人を街中で見かけるとちょっとうれしい……程度の視認性をイメージしました。
「UN-DIMENSION」第3弾のイメージイラストと商品画像。
「UN-DIMENSION」第3弾のイメージイラストと商品画像。
ANYCOLOR営業 酒井(以下、酒井):基本の商品コンセプトとしてはライバーの意匠を極力メインで見えない形にして、ライバーらしさは「目に見えるところだと色」くらいに留めているんです。しかもその色も、小物以外は「裏地を見るとライバーをイメージできるカラーになっています」というような入れ方が多いです。
言ってしまえば、「UN-DIMENSION」のラインナップに取り入れている「ライバーらしさ」のほとんどは、色なんです。そうすると今度は、見た目的に「にじさんじの必要って何もないじゃないか」「ライバーっぽさなんてないじゃないか」ってなってもおかしくないんですよね。
ではどうやってにじさんじを出していくかというと、「ライバーが商品仕様を考えました」「ライバーがプロデュースしました」という部分で、ライバーの思想や感覚、センス、好みといったものを具現化する……ここににじさんじらしさ、ライバーらしさが出てくるんです。その部分でライバーの個性や魅力が出ることこそ大事で、そこが一番「UN-DIMENSION」としてにじさんじがコラボしている意味であり、魅力だと考えているので、何よりもライバーの意見を大事にしています。
ライバーが「アイコンやロゴを大きく見せたいんです」と言うなら、大きく見せる前提で普段使いできるデザイン、ハイブランドに並んでも違和感のないデザインを追及することはあります。ただこれまでのラインナップとしては、ライバーが考えたということを重視した結果、アイコンやロゴは小さくなっていますね。
「UN-DIMENSION」第4弾のイメージイラスト。
みんなが幸せになったプロジェクト
──このコラボ企画による反響や効果はどのようなものがありましたか?
児玉:これまでに第4弾までやらせていただいておりますが、やはり第1弾の時の反響が一番印象的でしたので、そのときのお話をさせていただきます。当時2022年の10月にローンチをさせていただき、あわせてポップアップショップを大丸東京店の1階で1週間開催させていただきました。
それが弊社において装飾品、ハイブランドを除いた売上で、当時一番の年間売上を作った伝説的なデビューイベントになったんです。一番驚きとうれしさを感じたのが、我々が作ったショップの空間やバッグなどの商品に対して、ファンの皆さんが声も出ないくらい喜んでいただくところを目にしたときですね。
ちょうど我々担当メンバーも売り場に立たせていただいていたので、ファンの方々の感動を目の当たりにできたのはとても印象的でした。普段からいろんなブランドや代理店の販売をしておりますが、お客様がブランドを見て、あそこまで熱狂的に喜んでいただいたことはこれまでになかったんです。
イベントをやっても、必死に接客して売ることで精一杯というのが当たり前になっていたので、お越しくださったファンの方々の様子を見て、物作りの喜びを改めて実感できたポップアップショップでした。もちろんショップだけでなくECストアでの販売もすごく反響がありまして、短期間での販売ではいまだに過去一番の売上規模を誇っているかと思います。
東京・大丸東京店で開催された「UN-DIMENSION」第1弾ポップアップショップのイメージ。
丸田:ANYCOLORとしては、まず何よりもファンのみなさんから「こういうのが欲しかった!」というお声をいただけたのが大変うれしかったです。中でも今ウエニ貿易さんが仰ったように、ポップアップショップの空間に対する満足度が非常に高かったようで、それこそ毎日通っていただけるファンの方もいらっしゃったそうです。「UN-DIMENSION」で目指したかった、今までにない角度の価値提供をファンのみなさんにできたのかなと感じております。
また、これは内部からの反響の話にはなるのですが、プロデュースしたライバー本人たちからの満足度も非常に高かったんです。このコラボでのライバーの立ち位置は、ある種プロデューサーのような経験と言いますか。VTuber活動の中では、普段からインターネット上でファンの方々とのコミュニケーションは活発に行っているものの、実際にファンのみなさんに自分の考えたものや思いを詰め込んだものをリアルの商品として届けられる経験はなかなかありませんでした。
携わったライバーたちから「新鮮で楽しかったです!」という言葉を聞けて、にじさんじにとってもライバーたちに貴重な経験をしてもらえてプラスになったと感じました。
──どちらにとっても新しい挑戦のプロジェクトだったと思いますが、業界内や関係各所など社内外における反響はいかがでしたか?
丸田:いわゆるVTuberのグッズのイラストはハッキリと本人らしさやライバーのキャラクター性を出すことに、こだわってきたのですが、このコラボではいつもとは違ったライバーの一面として、ある種モデルの仕事のような押し出し方をしています。
「UN-DIMENSION」第2弾メインビジュアル
丸田:そういったモデルのようなタッチは、普段のグッズでほとんど見られないテイストのビジュアルなので、社内的なインパクトがありました。それこそいわゆるキャラクターグッズの王道という選択肢からは少し外したような、いつもとは違う雰囲気のものを作っていたので、そういったデザイン性やアートの方向性を示すことができたのは、社内的にも業界的にも可能性を提示できたと思います。
ウエニ貿易担当 栗山(以下、栗山):「UN-DIMENSION」では、これまでのファングッズにはない視点でファンの方々にアプローチをしたいという狙いがありますので、アート色の強いイラストレーターさんを常に起用しております。その際、ライバーさんにもご意見を頂戴できる機会がございまして、コレクションごとに「こういうファッションがいい」「こういったメイクが好み」のようなご要望を伺って、イラストレーターさんに共有してビジュアルを作成していく……という流れになっています。
イラストレーターさん側もファンの方から直接お褒めの言葉をいただく機会がそこまで多くないようでして、「UN-DIMENSION」の企画ではたくさんのファンの方々から直接感想のコメントや喜びの声をいただけるということで、イラストレーターさんとしても満足度の高い、楽しい企画だと感想をいただいています。
「UN-DIMENSION」というブランドを広げていきたい
──今後の展望がございましたら、ぜひお聞かせください。
丸田:にじさんじは所属のライバーがもうすぐ200人に届くほどの人数が在籍しているので、10月2日に発表された第5弾を入れてもまだ10人しかコラボできていないんです(笑)。
ですから営業としては、これを継続していかにいろんなライバーの表現や思想をファンの方々へ届けられるか、というところを念頭に、引き続きウエニ貿易さんと「UN-DIMENSION」の展開をがんばってまいりたいと思っています。
「UN-DIMENSION」第5弾メインビジュアル
丸田:現状ではバッグを中心とした雑貨・小物類をメインでやらせていただいているところを、もっと多岐にわたる表現方法の中でお届けできるアイテムを作っていきたいと考えています。
そしていろんなアパレル系やジュエリー系などのハイブランドがある中で「UN-DIMENSION」というブランドの存在感を示して、日頃より応援いただいているファンの方々はもちろん、ファン以外の方々からの認知を少しでも多く広げていけたらと思います。
児玉:弊社としても同じ思いがありまして、まずはこのブランドを継続して、いろんなライバーさんの魅力を発信していきたいというのが一番にあります。そしてバッグに限らず、いろんな商材にそれを広げて一緒に物作りをしていきたいと思っています。
それに加えてビジネスとして、今はイベントという形でやらせていただいているショップを常設的に行い、ファンの方と触れ合う場、商品を置いておける場を各地に展開していきたいと考えています。それが実現するときには、我々がというよりもライバーさんとそのファンの方々が喜ぶものを展開していきたいので、皆さんの考えや希望をどんどん吸い上げられる環境を作ってまいりたいです。
取材・文:株式会社KADOKAWA 大竹卓 監修:ANYCOLOR MAGAZINE編集部
UN-DIMENSION(アンディメンション)
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