※この記事には、3Dお披露目配信にまつわる技術的な話題が含まれます。
3Dお披露目配信を支える3つの柱
――まず最初に3Dお披露目配信の制作において、皆さんがご担当されている業務の内容について教えてください。
お披露目配信プロデューサー・ディレクター K(以下、お披露目プロデューサー K):プロデューサーとして3Dお披露目配信(以下、お披露目配信)全体のスケジュール管理やクオリティチェックなどを担当しています。もともとはお披露目配信のディレクターを務めていたのですが、それと並行してプロデューサーも兼任することになり、今はディレクター陣を取りまとめながら、全体の進行管理をしています。
3Dスタジオテクニカルディレクター M(3Dスタジオディレクター M):僕はテクニカルディレクターとして、お披露目配信を行うための技術周りの取りまとめをしています。お披露目配信でライバーさんがやりたいと思ったことを実現するために、「本番ではこういうふうにやっていきましょうか!」と具体的な手法を提案させていただき、そのために必要な各セクションとの窓口となって準備をお願いしたりしていますね。具体的な連携先としては、主にモーションキャプチャー、音声、フロア、スイッチャー、手持ちカメラ、配信管理、テロップ出し、VJ(※1)、照明などスタジオチームの方々になります。
※1→Video Jockey(ビデオジョッキー)の略。スクリーンやモニターに映像を流し、視覚的な演出を行う担当者のこと。
3D進行管理 S:私は3Dモデル制作チーム(以下、3D制作チーム)に所属していて、小物や背景、エフェクトなど3Dアセット(※2)全般の制作スケジュールに関する進行管理を担当しています。
※2→背景や小道具など、3Dシーンを構成する素材データの総称。
――3D制作チームに制作依頼がある際はKさん側から依頼が来るのか、Mさん側から来るのか、どちらなのでしょうか?
3D進行管理 S:実はどちらからも発注をいただくことがあるのですが、双方からいただいた発注に対して、具体的なデザインやギミックなどの詳細をヒアリングさせていただき、それをもとにモデラーさんとやり取りしながら形にしています。あとはモデラーさんから各所への連絡事項がある場合に、それをライバーさんサイドやお披露目ディレクターさん、スタジオディレクターさんへわかりやすく伝える役割も担っていますね!
1秒の差にこだわる丁寧な映像制作
――お披露目配信がファンの方々に届くまでの流れを簡単に教えていただけますか? また、その中で皆さんはどのように関わり合っているのでしょうか? こちらは代表してKさんにお伺いできればと思います。
お披露目プロデューサー K:まず、お披露目配信当日までのスケジュールを組みます。その後、ライバーさんにヒアリングを行い、「お披露目配信でどんなことをしたいか?」を一緒に組み立てていくんです。その内容が固まり次第、ライバーさんが3Dの世界で活動するための姿や小物や背景などの準備を進めていって、本番を迎えるというのが大まかな流れになりますね。
その中で全体のスケジュール決めや、3Dモデルの準備をするうえではSさんが所属されている3D制作チームと連携し、ライバーさんからヒアリングをして具体的にやりたいことが固まった段階からはMさんが所属されているスタジオチームとも連携して進めていっています。
――お披露目配信における舵取りはお披露目ディレクターさんが担当されているわけですね。それではお披露目配信の制作に携わるうえで、皆さんが特にこだわっていることはありますか?
お披露目プロデューサー K:当日のパフォーマンス自体はやはりライバーさんにお任せするしかないのですが、私たちの方では細かい部分で配信の完成度を底上げできるようにこだわっていますね。BGMやSEのタイミング、テロップの出し方など、配信のクオリティを上げるために1秒単位で調整をしています。
あとは暗転の長さにも特にこだわっている部分ですね。映画などでもそうですが、暗転は観ている方が感情を整理したり、気持ちを切り替えたりするための大切な時間なんです。次の展開を畳みかけていくのか、一旦落ち着かせたいのか、ご覧いただく方々の感情の動きを考えながら調整しています。
3Dスタジオディレクター M:現場でも「今の暗転、もう2秒早くしましょう!」「この暗転は、あと1秒遅らせましょう」といった話をよくされていますもんね。
お披露目プロデューサー K:めちゃくちゃ言っちゃってますね(笑)。現場のスタッフさんは「この1秒で何が変わるんだろう?」と思われるかもしれませんが、実はそういった考えにもとづいて判断しているんですよ。
――1秒単位で計算しながら、緻密にお披露目配信を作られているんですね。それではMさんのこだわっている点はいかがでしょうか?
3Dスタジオディレクター M:僕はとにかくライバーさんやお披露目ディレクターさんのやりたいことを、可能な限り実現することに尽きますね。もし実現するのが難しい内容だったとしても「すみません、それはできないんです……」で終わらせず、「それは難しいんですけど、こういう形ならできるかもしれません!」と提案することを大切にしています。スタジオチームでしか持っていない知見や情報もあるので、そういったものを活かしながら、できるだけ理想の形に近付けられるようにがんばっています。
――そのようにアイデアを出しながら、お披露目配信を作り上げていっているんですね! それではSさんはいかがでしょうか?
3D進行管理 S:私の仕事はモデラーさんががんばって作ってくださるものを納期通りに提出するのが使命なのですが、依頼者さんから情報をなるべくたくさん吸い上げて、モデラーさんが作業しやすいようにまとめることを意識しています。発注をいただいた段階では依頼者さんの中でも完成品のイメージがざっくりしていることがあるので、「ここはどんな色にしましょうか?」「ここにはどんなモチーフを置きたいですか?」という具合に言語化してもらって、モデラーさんが作りやすいように情報をまとめるようにしています。
お披露目プロデューサー K:すみません、いつも私の発注がざっくりで……。
3Dスタジオディレクター M:耳が痛い話です……。
3D進行管理 S:いえいえ、とんでもないです! 高度な嫌味みたいになってしまっていたらすみません(笑)。 ざっくりした相談だったとしても、頼っていただけるのはすごくうれしいんです。モデラーの皆さんも、「形にするのはこちらの役割なので、どんどん希望を出してください!」といつも言ってくれています(笑)。
部署を越えて支え合うチームの信頼関係
――皆さんはお互いのお仕事内容を見ていて、「ここがすごい!」「プロフェッショナルだな」と感じる点はありますか?
3Dスタジオディレクター M:3D制作チームの皆さんには、僕たちからの「こういうことってできないですかね?」みたいな難しい相談にもご対応いただいたり、「ここはこうしなくて大丈夫ですか?」と先回りの提案をいただいたりすることが多く、本当にいつも助けられています!
3D進行管理 S:いや〜、ありがとうございます! Мさんをはじめとするスタジオチームの皆さんがいなければせっかく作ったアセットも使っていただけないですし、ましてや配信も成立させられないと思うので、いつも本当に感謝しています。特にライバーさん側とやり取りすることが多いのがスタジオチームだと思うんですけど、現場で臨機応変に対応されている姿は、傍から見ていても本当にすごいなと感じています!
お披露目ディレクターの方々も、とにかくいろんな部署との連携をこなしながらスケジュールや構成をまとめ上げる力がすごいなと……。いろんなスキルがなければ成立させられないお仕事だと思っています!
3Dスタジオディレクター M:僕もSさんと同じことをお話ししようと思っていました。ライバーさんのやりたいことをヒアリングしてまとめていくのが、お披露目ディレクターさんの一番重要な仕事だと思うんですけど、いろんな部署と連携しつつ、時には外部のクリエイターさんやタレントさんも巻き込んで、1つの配信を作り上げているんですよね。毎回渡された企画書を見て「この段階までまとめることができるのはすごいな」と感じてしまいます(笑)。あとは3D配信に関する技術的な知識をある程度持っている方が多いので、知識量もすごいなと!
お披露目プロデューサー K:おふたりからそう言っていただけるとうれしいですね……。番組ディレクターという仕事に、「現場の中心で偉そうにしている」というイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれないんですが、実際のディレクターって機材を動かせるわけでも3Dモデルを作れるわけでもなく、皆さんのお力をお借りしながら番組や配信を作っていく仕事なんですよね。よく言えば企画の中心にいるわけですけど、悪く言えば自分では何もできない。
ですから、我々からするとスタジオチームさんが機材の操作に、3D制作チームさんが3D素材の制作に特化してくださっているからこそ、お披露目配信を作り上げることができているので、本当にいつも助けられています。あと、これは本筋から逸れますが、私はMさんのサイリウムの振り方は本当にプロフェッショナルだと思っています(笑)。
3D進行管理 S:なんですかそれ(笑)。気になります!
3Dスタジオディレクター M:(笑)。せっかくサイリウムを振るなら血の通ったものにしたいと思っていて、最近では珠乃井ナナさんや矢車りねさんのお披露目配信などで、実際にスタッフがサイリウムを振っていたんですよ。その振り方について、僕がアドバイスをさせていただきました。
3D進行管理 S:知らなかった……。次からサイリウムにも注目してみます!
“2Dでの癖”や“Cパート”を3Dの世界でも再現
――ここからは、皆さんの業務内容をより深掘りするための質問にお答えいただこうと思います。まずはKさんにお伺いしますが、ライバーさんそれぞれが持つ個性をどのようにお披露目配信に落とし込んでいるのでしょうか?
お披露目プロデューサー K:大枠の構成はライバーさんが決めてくださるので、我々ががっつり何かを落とし込もうとしているわけではないんですよね。ただその中で、長く応援しているファンの方が気付いたらうれしくなるような要素を入れるようにライバーさんに提案させていただいています。
例えば、2D配信でユニークな動きをされている方だったら、同じことを3Dでも再現してもらったり、普段から配信の最後にCパート(※3)を入れている方であれば、お披露目配信でも同じようにCパートを作って、視聴者さんに「3Dになってもいつもの締めだ!」と感じていただけるように工夫しています。ファンの方には、「自分の応援しているライバーさんが3Dの姿になれて本当によかったな」と感じていただきたいんです。
※3→本編終了後に行われる、おまけのコーナーやアフタートークのこと。
――そういったところまで意識されて、配信作りをされているんですね。続いて、Mさんにお伺いします。事前準備や当日のオペレーションなど配信を成立させるうえで、最も意識していることや気を使っていることはどんな部分ですか?
3Dスタジオディレクター M:僕はあらゆる業務を自分ごととして捉えることを意識しています。進行上のエラーを防ぐためには、各セクションにおいて配慮すべきところや、1つひとつの作業にかかる時間を把握しておく必要があるんですよね。そのために僕はディレクターという立場ではありつつも、オペレーターであり、音声担当であり、映像担当であるという意識で挑んでいます。各セクションの皆さんがプロフェッショナルだと信頼しているからこそ、自分が実際に手を動かす必要はないとはもちろん思っているのですが、皆さんが自分の業務に集中するためにも、僕が必要な作業や時間を把握しておいて適切に連携する必要があるんです。
――配信を取りまとめる立場として、素晴らしい考え方だと思いました。続いてSさんにお伺いします。3D制作チームがお披露目配信において果たしている役割や重要性を教えていただきたいです。また、番組に携わるうえでの裏話などがあればお伺いできますか?
3D進行管理 S:インタビューの冒頭でもお伝えしましたが、3D制作チームでは、ライバーさんが3Dの世界で活動するための姿や、背景や小物の制作を担当しています。お披露目配信で使用するライバーさんの部屋や衣装、ステージなどもモデラーさんが作り込んでくださっていて、どこを映しても大丈夫なように準備してくれているんです。そのため、ライバーさんが配信中に部屋の細部の作り込みについて触れてくれると、私もすごくうれしくなるんですよね!
裏話だと、実はお披露目配信で使用されるサムネイル用の写真撮影も3D制作チームが担当しているんですよ。実際に使われるのはほんの一部だったとしても、一枚一枚心を込めて全身をしっかりときれいに撮影させていただいています!
――これまでのお披露目配信で特に印象に残っている回はありますか? また、お披露目配信に携わった際に印象的なエピソードを教えていただきたいです。
3Dスタジオディレクター M:お披露目配信に関わっている回数はKさんが一番多いのかなと思うんですけどいかがですか?
お披露目プロデューサー K:1つを選ぶのが難しいですが、直近だと梢桃音さんのお披露目配信は印象に残っていますね。最初から最後まで1人きりでやりきるという挑戦的な試みで、制作側としても緊張感があったのですが、ご本人のパフォーマンスと照明や音響が噛み合って、素晴らしい配信になったと感じています。
3D進行管理 S:梢さんのお披露目配信は本当にすごかったですね! 当日使用した舞台に関してスタジオチームさんから提案をいただいて照明を工夫していたので、実際のお披露目配信を観たときは感動しました……。
3Dスタジオディレクター M:そんな中で最初から最後まで1人きりであのパフォーマンスをやり通したのが本当にすごいですよね。僕は初めて担当させていただいた北見遊征さんのお披露目配信がめちゃくちゃ印象深いです! 北見さんから「ローションボウリングやりたいです!」とリクエストいただいて、普段のローション企画の倍以上の規模である95リットルのローションを準備したんですよ(笑)。
お披露目プロデューサー K:あれはすごかった(笑)。ローションのボトルの数がえらいことになってましたからね。
3Dスタジオディレクター M:ローションの素を水でぬるぬるに溶かす作業を配信日より前の仕込み段階からしたんですが、それでも足りなかったので当日も追加で作りました(笑)。無事に走り切ることができて本当によかったです。準備は本当に大変だったけど、今振り返ると準備段階からすごく楽しかったですね!
挑戦を続けて広がる、お披露目配信の未来
――ファンの方々にお披露目配信を観ていただく際に、スタッフ目線で「ここに注目してほしい!」と思うところはありますか?
3Dスタジオディレクター M:先ほどお話しさせていただいた人力のサイリウムにはぜひ注目してほしいですね(笑)。あとは、カメラのカット割りやライブ中のVJ、照明など、1つひとつの絵作りにスタッフのこだわりが込められているので、細かいところまで全部に注目してみてほしいなって思っちゃいます!
お披露目プロデューサー K:確かに全部って言いたくなってしまいますよね(笑)。その中でもカメラワークはライバーさんのパフォーマンスをよりドラマチックに届けるために、こだわっている部分です。コメントでも「今のカメラワークいい!」と言っていただける機会が増え、私たちも励みになっています。カメラワークって実はセンスだけではなくて、「こういう画角のあとに、この画角で撮るとこう見える」というロジックにもとづいて構成されている部分もあるんですよね。そういった進化も観ていただきたいので、ぜひ注目していただけるとうれしいです!
3D進行管理 S:小物や背景もそうなんですが、まずはやっぱりライバーさんをめっちゃ観てほしいですね! ライバーさんのかわいさやカッコよさを堪能していただいた後に、2周目や3周目でカメラワークや背景、暗転などに注目して観てもらえるとすごくうれしいなって思います。何度も観返してほしいです!
――技術的な進歩に伴い、お披露目配信でできることも広がっていくかと思います。今後お披露目配信で挑戦したいこと、やってみたいことがあれば教えてください。
お披露目プロデューサー K:お披露目配信をにじさんじを象徴する一大イベントとしてさらに盛り上げていきたいです。そのライバーさんのファンの方だけでなく、普段あまりそのライバーさんの配信を観たことがない人にも「お披露目配信だから観に行こう!」と思ってもらえるような、観応えのあるコンテンツとしての面白さを追求していけたらいいなと思っています。
3Dスタジオディレクター M:僕はライバーさんがやりたいと思ったことに対して、「それ、できますよ!」と言えるようになっていきたいなと思っています。どうしても今のところはライバーさんのやりたいことのすべてを理想通りに実現できているわけではないのですが、1つずつ技術的な壁を乗り越えていって、ライバーさんの理想とするお披露目配信を完璧に実現できるようになっていけたらいいなと思います!
3D進行管理 S:もうMさんが言いたいことを全部おっしゃってくださいました(笑)。私の部署だけじゃなくて、お披露目ディレクターさんも、3Dスタジオディレクターさんも含めて、ライバーさんのやりたいことに真剣に取り組むのがANYCOLORのスタッフですよね。私が個人的に挑戦したいことというよりも、このチームのみんなでお披露目配信の可能性をさらに広げていけるようになりたいです!