月ノ美兎2ndワンマン『Paper Rabbit』レポート
オープニング映像のBGMは、2月19日に発売された月ノの1st Mini Album「310PHz」収録曲「アルクユニバース」をライブ用にアレンジした「アルクペーパーバース」。電車に乗って八王子駅に降り立った月ノがライブ会場に向かい、ステージに立つまでの様子が捉えられた。映像が投影されていたステージ上の布が落ちると、アーティスト衣装をまとった月ノが現れる。3年半ぶりとなるワンマンの幕開けに選ばれたのは「アンチグラビティ・ガール」。イントロのエモーショナルなシャウトで早くも客席の熱は最高潮に達する。
本日最初のМCで月ノは「起立、気を付け、こんにちは! 月ノ美兎です!」とおなじみの口上で挨拶。「アンチグラビティ・ガール」は前回のライブ「月ノ美兎は箱の中」で最後の1曲だったため、そこからつなげるように今回最初の1曲に選んだことを明かす。ステージを端から端まで歩いてファンに挨拶しながら、ファンの歓声を生で感じられることを喜んでいた。
1曲目の熱気を引き継ぐように、アップテンポなエレクトロポップ「みとらじギャラクティカ」へと移る。月ノの「みとらじ!」という発声に観客が「ギャラクティカ!」と応じるコール&レスポンスも息ぴったり。曲中には、月ノが“ギャラクティック洗濯機”の爆発に巻き込まれてしまい、爆風によって髪型がカールしたツインテールに変わるというアクシデントに見舞われるも、「結果的にめっちゃかわいくなったから、とりあえずしばらくこのままでいきましょう!」とライブを続行する。続けて披露されたのは、月ノのラジオ企画「みとらじ」に寄せられたエピソードをもとに制作された「恋星ペリコ」。キュートかつ切ない世界観のこの楽曲をしっとりと歌い上げ、月ノはエキサイトする客席を優しくなだめていった。
ここでステージ袖から大きな頭が愛らしい“みとちゃん”が登場し、客席に挨拶。「1人じゃ寂しいから、お友達を呼びたくなってきちゃったなあ」と語るみとちゃんは、観客とともに「出ておいで~」とまだ見ぬ“お友達”に呼びかける。すると、本ライブ最初のゲストとして、甲賀流忍者ぽんぽことピーナッツくんが大歓声に包まれながら登場し、月ノとともに「こころのアビッシー」を披露。ファンシーな映像を背負って、3名が底抜けに明るく和気あいあいと歌い踊る様子に、会場はさながら幼児向けの教育番組のような雰囲気に包まれていく。しかしそんな幸福感に満ちたステージに、怪しげな気配が徐々に忍び寄る。
喉の不調を訴えステージ袖に下がったピーナッツくんの絶叫が聞こえると、ステージは突如として煙に包まれてしまう。煙が消え去ると、ステージには腹部を激しく負傷し倒れているピーナッツくん、その傍らには謎ノ美兎が2人。ピーナッツくんの傷口から3人目の謎ノが這い出して来ると、会場は悲鳴に包まれる。先ほどまで一緒に歌っていたピーナッツくんは謎ノに乗っ取られていたことが判明し、月ノは「グロい!」と叫びながらも、謎ノを倒すために武器を探しに行く。月ノたちを動揺させることに成功し、ステージ中央で高々と拳を掲げる謎ノ。その後、月ノと謎ノの戦いを表現した壮大な1曲「ルナティックウォーズ」に乗せ、月ノが最終的に4人にまで増えた謎ノとそれぞれ斧を手に激しくぶつかり合う。一時ピンチに陥るもファンの熱い声援を一身に受けて謎ノたちを討ち果たした月ノは、無事回復した模様のピーナッツくんと「Birthday Party」をデュエットを披露。ハイテンポかつ重いビートとサイケな照明によって、会場はクラブさながらのドープな雰囲気に包まれる。
続いて現れたゲストは笹木咲、椎名唯華の通称“さくゆい”コンビ。先ほど月ノたちが歌った「Birthday Party」という曲名から、本日が月ノの誕生日だと勘違いした笹木と椎名は2020年9月実施の凸待ち企画で披露した「委員長おめでとうの歌」で月ノを祝福する。その後3人は、2024年9月ににじさんじファンの話題をさらったオリジナルのレゲエナンバー「てんやわんや、夏。」を披露。作曲を担当した弦月藤士郎も加わり、彼のパートも追加した“スペシャルバージョン”を歌い上げる。先述の凸待ち企画をきっかけに生まれた、にじさんじ要素満載のエモーショナルなこの1曲で、会場はすっかりチルなムードに包まれる。曲の途中には、“レゲエのすがた”の月ノ、笹木、椎名も現れ、客席を沸かせた。
ゲストの面々がステージから去り、再び月ノのソロへ。「310PHz」のリードトラック「人ってただの筒じゃないですか」では、月ノが爽やかなロックナンバーに乗せ、この日初公開となったМVとシンクロするように軽やかなダンスを披露した。その後ステージには月ノと静凛、樋口楓によるJK組が集結し、2024年3月に発表されたハイテンションナンバー「NEVER GLOW UP」へとなだれ込む。3人は情報量の多い歌詞を歌いこなすテクニックと、華麗なダンスパフォーマンスで客席を魅了。にじさんじ1期生として長年の付き合いで培われたコンビネーションを存分に見せつけた。
お次の「百cd融怪点」では、幽霊ダンサーたちが登場。曲が始まる直前、ダンサーたちが両手を上げると、観客もつられて一斉に手を上げてしまう場面が見られた。曲が始まると月ノは、赤い照明に照らされた障子などおどろおどろしい映像を背に、愛らしくも妖しげな色気を感じさせる歌声を響かせる。ライブ当日の4月18日0時に発表されたばかりの原口沙輔とのコラボ曲「贋ト旧称」では、体全体を震わすような重いビートと、月ノのたゆたうようなウィスパーボイスが見事に調和。そして真っ暗なステージの上であえて月ノの顔を見せず、衣装の一部を光らせることでダンスを際立たせた。
TVアニメ「バーチャルさんはみている」オープニングテーマ「あいがたりない(feat. 中田ヤスタカ)」のカバーパートでは、月ノが憧れてやまない電脳少女シロがゲスト出演。飛び跳ねるような振り付けとともにとびきりキュートな歌声でファンを楽しませる。曲が終わったあと、月ノはシロへのリスペクトたっぷりなコメントを連発し、シロが「美兎ちゃんはシロを好きになってくれたってこと?」と首をかしげると、月ノは「好きどころか、親!」と返した。
その後、シロのほか本日ゲストとして登場したぽんぽこ、ピーナッツくん、笹木、椎名、弦月、静、樋口が勢揃いし、いよわの楽曲「一千光年」をカバーする。曲中ではゲストたちの中央に立った月ノが指揮者のごとく大きくゆったりと両腕を振り、真っ白な背景映像は曲が進むにつれて次第に星空へと変わっていった。
ここで共通衣装姿になった月ノは、「この箱にしてわたくしあり!」と宣言して、にじさんじ初の全体楽曲「Virtual to LIVE」をカバー。そのままシームレスに「Moon!!」へとつないでいく。「Moon!!」はiru作詞・作曲による月ノのオリジナル楽曲。歌詞の中には長年月ノを応援しているファンならニヤリとさせられるような小ネタがちりばめられている。この曲が本編最後の1曲となり、月ノは客席に「楽しかったですか!」と語りかけ、ファンの楽し気な声を聞くと「じゃあよし!」とほほえみ、ライブを一度締めくくった。
すぐさま客席からは盛大なアンコールの声が発生。そのコールに応えるように突如「光る地図」のイントロが鳴り響き、ステージ上部のスクリーンと入れ替わる形で、イベントキービジュアルに写し出されている月ノを模した巨大なバルーンが登場する。キービジュアルでは月ノが自分のライブを表現したペーパークラフトを上から覗き込んでいる様子が表現されており、アンコールステージでその模様が再現されるという演出だ。その後月ノは、いよわ作詞作曲による「寝言は寝て言え」を披露。ふわふわと浮遊感のある曲調と裏腹に、キレのあるダンスで客席の注目を引き付けた。
その後、赤いパーカーと黒いレギンスのアクティブな衣装に着替えた月ノは、ライバー活動7周年を記念してファンが制作した「みちくさイズム」を元気いっぱいに披露。「この曲ファンからいただいたんですよ、いいでしょ!」と満面の笑みを浮かべた。「みちくさイズム」はわずか2カ月前に発表された楽曲であり、「(セットリストに)無理やりねじ込ませていただきました」と明かした。
本日のライブを振り返り、月ノは「いっぱいコールできて楽しかった! 『みとらじギャラクティカ』もライブでやる機会はあったけど、コールができなかったりしたので、『ようやく』って感じがしました! ありがとうございます!」とファンに感謝。そして「今回のライブに来られなかった人、いっぱいいるよね! また(ライブ)やっから!」と意気込み、ファンを喜ばせる。その後、「Jump!!」「コスモノート」を立て続けに披露する。ステージ上で月ノのパフォーマンスを見守るバルーンは、まるでリズムを取るようにゆっくりと揺れていた。
歌唱中に月ノは「今日があなたの人生の中でちょっとだけ忘れづらい日になったらいいと思うんですけど、いけますか!」と声を張り上げ、ファンも大歓声でそれに応える。ピンク色のテープが噴射され、とうとうライブが終着点にたどり着くと、月ノは客席に向かって「楽しかったね、楽しかったね」と語りかけ、「気を付け、着席! 以上、月ノ美兎がお送りしました。ありがとうございました!」と挨拶し、ステージを去った。
月ノ美兎 2ndワンマンライブ『Paper Rabbit』J:COMホール八王子(東京)セットリスト
1.アンチグラビティ・ガール
2.みとらじギャラクティカ
3.恋星ペリコ
4.こころのアビッシー ゲスト:ピーナッツくん、甲賀流忍者ぽんぽこ
5.ルナティックウォーズ
6.Birthday Party ゲスト:ピーナッツくん
7.委員長おめでとうの歌 ゲスト:笹木咲、椎名唯華
8.てんやわんや、夏。 ゲスト:笹木咲、椎名唯華、弦月藤士郎
9.人ってただの筒じゃないですか
10.NEVER GLOW UP ゲスト:樋口楓、静凛
11.百cd融怪点
12.贋ト旧称
13.あいがたりない(feat. 中田ヤスタカ)/バーチャルリアル(カバー)ゲスト:電脳少女シロ
14.一千光年/いよわ(カバー)ゲスト:ピーナッツくん、甲賀流忍者ぽんぽこ、笹木咲、椎名唯華、弦月藤士郎、樋口楓、静凛、電脳少女シロ
15.Virtual to LIVE
16.Moon!!
アンコール
1.光る地図
2.寝言は寝て言え
3.みちくさイズム
4.Jump!!
5.コスモノート