事前の想定通りにはいかなかったけど、公演を重ねるごとにブラッシュアップされていたライブツアー
「Nornis LIVE TOUR 2024 -Tensegrity-」キービジュアル
──9月のツアーを振り返ってみて、いかがでしたか? 印象的だったエピソードや裏話などもあればお聞かせください。
戌亥:どの会場でも、皆さんが楽曲に合わせて合いの手を入れてくれたり、アンコール曲では一緒に歌ってくれたり……どれも我々のところまでしっかり届いてきてびっくりしました。
前の方の人だけでなく、ちゃんと後ろの方の声も届いていたので、いっぱい歌を練習してきてよかったと思えました。「たくさん練習したんだから上手く歌わなきゃ!」みたいな必死な気持ちよりも「一緒にライブを楽しもう!」って気持ちで歌えたので、すごくうれしかったですね。
これは土地柄かもしれませんが、大阪会場ではMCの際、お客さんからの反応が全体的に大きかった印象があります(笑)。
あと、いろんな方から現場に差し入れをいただいて食べきれなかった(笑)。食べ物が楽屋前の廊下に常に増えていく現象が起きてて、その場では食べきれないからお持ち帰りもさせていただきました!
ちょっとした裏話としては、2人で同じホテルに宿泊していて、1人ひと部屋ずつ用意してもらってはいたものの、結局寝るときとお部屋を出る準備するとき以外はずっとどちらかの部屋にいたという(笑)。ツアー中は、昼も夜も常に一緒にいました。
──ちなみにホテルのお部屋では、ライブに備えた話し合いとかそういったことをされていたのでしょうか? 緊張しちゃって……とか?
戌亥:いえ、正直に申し上げますと……ジグソーパズルを……。
町田:やってましたー(笑)。
戌亥:2人で顔を突き合わせて、真剣にジグソーパズルを(笑)。
町田:2人して机に向かって、本当に3~4時間くらいかけて、300ピースのパズルをパチパチやってました。
──翌日の本番に向けて、集中力を高めるためとかそういうことでしょうか?
戌亥:あ、そうです! 集中したくてやってました! 精神を統一しようと思ってやってただけで、決して遊んでたわけではないです。
町田:そうそう(笑)。
戌亥:1つのことに長時間集中するためです! でもでも、一応リハーサルで録画した映像を見返しながら、「明日もっとこうしたいね」「本番はもっとこうしようね」って反省会したりもしました! だから真面目な時間もありますよ!(笑)
【生配信】ツアーの合間のまったりトーク回【Nornis界隈のハナシ #14】 #ノルハナ界隈
──なるほど(笑)。思わずほっこりしてしまうエピソードをありがとうございます! ちなみにツアーに向けて準備や練習などをしている事前段階では、何か印象に残っているものはありますか?
戌亥:わたし自身ツアーが本当に初めてというのもあって、なかなか想定通りに進まなくて苦戦した部分が大きいかもしれません。今回実現できなかった演出もあったりしたので、またどこか別の場所で実現できればいいなと思っています。
あとツアー中はスケジュールが本当に大変なことになる(笑)。これからにじさんじでツアーを行う予定のある皆さんは、前々からスケジュール調整をしておくことをオススメします!
──やはり複数の会場を回るわけですし、事前の準備からいろいろ大変ですよね……。町田さんは振り返ってみていかがですか?
町田:大阪で、去年はできなかった「温かいたこ焼きを食べる」という実績を解除できたのがうれしかったです!
戌亥:去年は冷たいたこ焼きでした(笑)。
町田:そうなんですよ。今年はスタッフさんがものすごく汗をかきながら、ゼーハー言って買ってきてくれました(笑)。本当にありがとうございました。あと廊下に「551」の豚まんもあって。そのときに「肉まん」って言ったら、関西の方が苦い顔をされて……。
戌亥:すぐに訂正が入るっていうね、「肉まん」じゃなくて「豚まん」。
町田:それで初めて知って(笑)。「なるほどな。難しい世の中だな〜」と思いました。あとはとこちゃ(戌亥とこ)が唇のパックをプレゼントしてくれたんです。ホテル滞在中はそれをずっと使ってたので、町田の唇はとてもプルプルでした。ありがと、とこちゃ。
戌亥:大事だからねー。乾燥すると歌いづらいから。
町田:本番とても歌いやすかったからありがたかった。
戌亥:本番中とか記憶に残ってることある?
町田:本番中はただただ楽しくて、歌い終わった後にみんなが「大好きー!」とか「ありがとー!」とか言ってくれて……。みんなの声が町田のところまで届いたのがうれしくて、泣きはしなかったけど、心にすごく温かいものがじわじわきました。
戌亥:ちまさんはそれこそ共通衣装のお披露目もあったじゃない。
町田:そうそう! 共通衣装で「つぎはぎどうし」を歌った際の話なんですけど、曲の最後が「ありがとう」という歌詞で終わるんです。町田の「ありがとう」に対してみんなが「ありがとー!」って叫んで返してくれたのが、本当に本当にうれしかったです。
つぎはぎどうし
戌亥:感動的やったね。いいシーンだった。泣いてないけどグッてきたよ。
町田:あるよね。あと、練習のときはたくさんスタッフさんが、できるだけ歌いやすいようにひたすらイヤモニの音量調節とかいろいろ試行錯誤しながら動いてくれました。当日もすごく歌いやすい環境にしてくださって、本当にありがたかったです。
戌亥:かなり細やかにチェックしてたからね。配信に乗る音量バランスとかもスタッフさんがすごくこまめにチェックしてくださって。実は公演を重ねるごとに、ちょっとずつブラッシュアップされていってるんだよね(笑)。本番を終えた後に、実際やってみて「もうちょっとここをこうしたいな」ってオーダーして、反映してもらってるから。
町田:すばやく対応していただいて、ありがとうございました!
戌亥:あと思い出したんだけど、バンドメンバーすごくない? 直前まで一緒にステージで演奏してたのに、わたしたちが本番終わって楽屋に帰ろうってしたときには、もうみんなそこの廊下にいるのよ。バンドメンバーが花道みたいに並んでくれてて、「お疲れ様でしたー!」って毎回お出迎えしてくれた。
町田:バンドメンバーの皆さんね、すごくすごく優しい。
戌亥:大阪公演からは、1人ひとりとグータッチで労うという流れが追加されてた(笑)。
町田:グータッチね(笑)。
「Nornis LIVE TOUR 2024 -Tensegrity-」の様子
ありのままのあなたに寄り添って、そっと背中を押してあげるユニットに
──これからの活動に対して、Nornisらしさを出していくうえで大事にしていきたい想いやこだわりをお聞かせください。
戌亥:おそらく今もこの先も変わらないと思うのは、「わたしたち2人がいるから成立する歌」を歌っていきたい、っていうことです。皆さんからいただく感想の中でよく見るのが「この曲はこういう時に聴いてる」「生きててつらいときはこれを聴いてる」「がんばりたいときはこれを聴いてる」という声なんです。
やっぱりそういった聴きたいシーンというものはみんなそれぞれにあって、日常・非日常だったり、ちょっと現実逃避したいときだったり、そういったいろんなシーンに合う曲を歌っていけたらと思います。
そのうえでわたし個人としては、町田ちまの隣で歌えるっていうのが本当に幸せだと思うので、これからもこの2人で歌えるのであれば、どんなステージでも幸せだなって(笑)。Nornisをこの先もっとたくさんの人に知っていただいて、好きになってもらって、今立っている場所よりステップアップした大きなステージに立てるようになったらうれしいです。
それは会場の広さとかだけじゃなくて、行ったことない場所もたくさんありますから、いろんなところに出向いて我々の歌を届けに行きたいって思います。
Nornis(戌亥とこ&町田ちま) - Try add [Music Video]
──素敵なお話ありがとうございます。ちなみにそういったところを踏まえて、戌亥さんの考えるNornisはファンの皆さんにとってどういったものでありたいですか?
戌亥:なんなんでしょうね? 我々って。
町田:あはは(笑)。
戌亥:わたしが常々言っているのは、我々は本当に情緒不安定なので、急に落ち着いたり急にはしゃいだりとかするんです。それが楽曲にもうっすらと乗って響いているんじゃないかなって(笑)。だからこそ、本当にみんなの日常シーンの1つひとつに合うんだと思っています。
気分を上げたい、落ち着きたい、まったりしたい、リラックスしたい……いろんな気分・場面に応じて合う楽曲があるような、日常に寄り添うユニットになってるんじゃないかしらって思っています。……けど実際どうなの?(笑)
町田:なってる。
戌亥:なってる?
町田:と信じたい(笑)。
戌亥:日常に寄り添うユニットということで(笑)。「ずっとがんばろうよ、大丈夫。幸せになろう」みたいな感じよりは、「楽しいときは楽しい」「うれしいときはうれしい」「つらいときはつらい」「めんどくさいときはめんどくさい」みたいな。いいものはいいし、嫌なものは嫌っていう、そういったみんなのいろんな気持ちを否定したくはないっていう思いを持っていたいです。全肯定ユニット!(笑)
──皆さんの“ハレとケ”のすべてを受け入れたいという想いが、戌亥さんにとってのNornisの在り方なわけですね。町田さんはいかがでしょうか?
町田:町田も同じように考えていて、聴き手に寄り添えるユニットでありたいというのが一番にあります。Nornisが始まってから、楽しいことも大変なこともたくさんあったんですけど、でもそういうときにとこちゃがそばにいてくれて、寄り添ってもらうことが多かったんです。
そこで助け合うことの大切さをNornis結成からの2年でより強く感じたので、聞いてくれてるみんなにもその大切さが伝わるような歌唱ができるようになりたいです。
Nornis - Deep Forest [Music Video]
──おふたりとも聴き手に寄り添いたいという想いが一番にあるのですね。今後どういったことを意識して、「寄り添うユニット」「寄り添う楽曲」を目指していきたいですか?
町田:さっきとこちゃが言ってくれたことと一緒にはなっちゃうんですけど、「どんな場面でもそばにいるからがんばろうよ、大丈夫だよ」っていう寄り添い方じゃなくて、いっそやりたくないときは別にいいんじゃない? みたいな全肯定であることかな?
戌亥:自分たちが味わった感情を届けるというよりも、聞いてくれる皆さんをはじめとした、自分たちの周りにいる人たちの感情を中心に考えたいですね。例えば皆さんがくれる感想を見ながら「聴いてくれた人たちは普段どんなことを思っているんだろう」「こういう生活している人がいて、こんな感情になってくれる人がいるんだ」とかを知っていきたいです。
それこそ映画やドラマを観たりしてもいいと思うんですけど、自分の外にある感情、自分が感じたことのない感情、そういったものを今後いろんなところからインプットしていって、人の感情を知るところからまず始まるのかなってわたしは思う(笑)。そこからかも、って。
町田:感情を知る(笑)。
戌亥:そもそも人の感情にはどのくらい種類があるのかとか、どういった状況が人生の中には存在するんだろうとか。そういったものをたくさん知っていって、理解したいですね。やっぱり理解せずに歌っても伝わらないかなと思うので、まずは我々が他人のそういったところをもっと理解する必要がある(笑)。
町田:そうだね、知っていかなきゃね(笑)。町田もそう思う。
戌亥:そうすることで、歌詞の中にある1つひとつの言葉にもっと想いを込めて歌っていけたらなと思いますね。
Nornis - Fragment - Duet ver. [Music Video]
町田:でもでも、とこちゃは少なくとも町田の感情は理解してくれてると思ってるよ?
戌亥:だって町田はわかりやすいのよ。
町田:わかりやすい?(笑)
戌亥:町田ちまという女はとても素直……。誰にでも全員に対してなのかはわからないけど、少なくともわたしに対しては。素直で直球だし、考えも感情もすぐに出してくれるからわかりやすいんです(笑)。
町田:そうなんだ(笑)。
戌亥:だからこれはわたしの汲み取る力じゃないかも。あなたのわかりやすさ(笑)。
町田:町田だったか。
──そういった他者への理解を深めつつ、その先のアウトプットの仕方として新しい挑戦やこだわりたいと考えてることはありますか?
戌亥:ちょうど最近のことなんですが、今後は楽曲の制作を始める段階からわたしたちも参加して、「こういう楽曲にしよう」「こういうテーマにしよう」と話し合っていこうというミーティングをNornisチームでしました。
町田:直近でしましたね。
戌亥:やっぱり楽曲を作り始めるときに目指すものや込める想いもあると思います。どうしても「楽曲リリースのために歌を収録しましょう」となると、シンプルに歌唱のクオリティ面を気にして歌うことが多いので、ライブのときのように感情を爆発させながら歌いたいという気持ちもあります。
楽曲制作の段階から一緒に参加すれば、レコーディングのときの感情の込め方も変わるんじゃないかな。あとはMVも今後より一層こだわっていけるといいですね!
町田:そうだね。
Nornis - Lycoris [Music Video]
戌亥:みんなの中でその楽曲が景色として残ってくれるのもうれしいからね。
町田:そうだね。耳からも目からも。聴覚・視覚どちらでも楽しんでほしい。
戌亥:嗅覚。
町田:うん、いらない。
戌亥:なんでよ! 残そうよ嗅覚! 楽曲に合わせたフレグランスとか出そうよ!
──匂いは記憶や感情にも強く結びついていると聞いたことがあります。ライブ会場にアロマを焚いてみても面白いかもしれませんね。
町田:あ、それやりたいやりたい。
戌亥:嗅覚いいですよね! あと痛覚。
町田:うん、いらない(笑)。
──今のお話を踏まえますと、聴いてくれる人たち、観てくれる人たちには、その曲によって記憶や感情に強く訴えかけたいという想いもあるわけですね。そういったところを楽曲やMVにも込めていけるようにしよう、と。
戌亥:そうですね。そこに付け加えるなら、みんなにはもっと「自分の人生の主役は自分だ」と思い込んでほしいという想いがあります。Nornisが楽曲で寄り添うことによって「それはあなたの人生だよ、あなたが主人公なんだよ」って感じてほしいですね。
町田:そうだね。
戌亥:「これがわたしたちの歌だー!」っていうよりかはね。
町田:背中を押したいっていう気持ちですね。
戌亥:いろんな場面でね。
町田:うん。
戌亥:崖とか。
町田:うん。それはやめて?
戌亥:あはは(笑)。
Nornisも予想ができない──たくさんの音色で織り成すオーケストラライブ
──先日「Nornis Orchestra Live『Concerto di luce』」の開催が発表されましたね! オーケストラライブという初の試みに向けて、楽しみにしていること、挑戦したいことなどの意気込みをお聞かせください。
「Nornis Orchestra Live『Concerto di luce』」
戌亥:Nornisの楽曲は、「厳かで壮大な歌」っていうイメージを持たれている方も多いんじゃないかと思うんですけど、意外とバンドサウンドな楽曲も多いんですよね。だからそういった楽曲が、オーケストラの演奏でどう変化するのかっていうのは楽しみにしているところです。
今の段階(インタビュー実施時)では、まだオーケストラライブの準備が走り出してないので、我々も未知なところが多いんです。すべてが謎に包まれている状態なので、「これからどうなるんだろう?」という気持ちが大きいです。
町田:そうだよね。
戌亥:どうなるんでしょうね? あとわたしはずっと前からいろんなインタビューで「ちまさんの声は弦楽器みたい!」って言ってるから。
町田:ずっと言ってるねそれ(笑)。
戌亥:だから、「町田ちまの声は、いったいどのくらい弦楽器と馴染むのか」っていうのを知ることができるのが楽しみ(笑)。
町田:わー、溶け込みすぎて何も聴こえなくなったらどうしよう(笑)。
戌亥:やっぱり普段は、みんながペンライト持って振ってくれたり、合いの手を入れてくれたりっていうライブの楽しみ方がありますよね。でも、おそらくオーケストラライブとなると、みんな貴族のように鑑賞するのかな……(笑)。
「Nornis Orchestra Live『Concerto di luce』」解禁時の様子
町田:ドレスコードとかあったりね(笑)。
戌亥:ドレスコードかー(笑)。ツアーのときもみんな参戦服とかバッグとかいろんなところで気合いを入れて現地に足を運んでくれた人もいました。オーケストラライブだとみんなの装いがどのように変化するのかも楽しみですね。
町田:ちょっと厳かになるのかなー? 楽しみ。
──町田さんとしては何か挑戦したいことはありますか?
町田:今あったように、未知の部分が多いから全部が「どうなるんだろう?」って感じで。そもそも我々Nornisの楽曲の中でオーケストラアレンジの成立する曲がどれくらいあるのかっていうのも正直予想できていないです(笑)。
ただ、オーケストラコンサート自体は観たことがあって、演奏の音色が本当にきれいですごくすごく心に響くものがありました。我々もオーケストラの音圧に負けないような、みんなの心に届くような歌唱ができるようにがんばりたいです!
──町田さんがオーケストラライブで楽しみにしていることはなんでしょうか?
町田:オーケストラ自体がそこまで馴染みのあるジャンルではないので、今回のオーケストラライブではどういう楽器があるんだろうかとか、どういう配置なんだろうかとかは気になっていますね。そもそも我々はどこに立って歌うの?とか(笑)。今までのライブはバンドだから、多くてもギター、ベース、ドラム、キーボードとか4つくらいですけど、オーケストラってことはそれ以上にいろいろな種類の楽器があるじゃないですか。
戌亥:オーケストラだとアンプラグドの楽器になるから、そういう違いもありますよね。
町田:アンプラグド…………。
戌亥:あ、うん、アンプにつながない感じのさ(笑)。
町田:うん! わかるよ! アンプラグドね(笑)。わかったわかった(笑)。楽しみ! アンプラグド!
戌亥:覚えたんだ、今(笑)。まあそういう楽器が、最終的にどのくらいあってどういう編成になるかも今の我々はまだ知らないので。楽器の波に埋もれないようにがんばらねばって気持ちですかね!
取材・文:株式会社KADOKAWA 大竹卓 監修:ANYCOLOR MAGAZINE編集部
Nornis
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