叶 2nd LIVE 孤独 -solitude-レポート
期待感に満ちた会場にいよいよ開演の時間が訪れると、「藍」のオープニングトラック「アイ」のイントロが流れ出し、青いペンライトの波が大きく揺れ動く。うねるようなベースサウンドに導かれるように、ゆっくりとステージ中央に歩み出た叶。その手に握られた黒いステッキを、マイクに見立てたり銃のように構えて客席を撃ち抜いたりと、叶は自由自在なパフォーマンスで会場のテンションをぐっと引き上げた。
続けて、疾走感の溢れるギターロックに合わせてどこかニヒルな世界観を描き出す「命ばっかり」を歌唱。初のМCで「本日はお越しくださりありがとうございます!」と晴れやかな笑みを見せた叶は「約3年ぶりのソロライブなんですが、前回のライブと、そして普段の配信とは違う僕をお見せすることができたらなと思っています」と意気込みを述べた。
この日最初のゲストとして登場したのは、叶とはレーベルメイトであり、七次元生徒会!で会長・副会長の間柄でもある樋口楓。2名は「Make Me Wonder」を歌い、叶のおだやかな中音と樋口のハリのある高音が豊かなハーモニーを生みだした。МCにて、アーティストとして躍進する樋口の姿に憧れを抱いていると語る叶。そんな彼に対して樋口は「ライブごとに成長がすごくて! ずっと成長し続ける人やなと思う」と努力を惜しまない姿勢を称賛していた。
樋口を見送り、ステージに残った叶は「ラブレス」を歌い始める。ミステリアスな雰囲気を醸す照明を浴び、アンニュイな表情を浮かべる叶。思考がぐるぐると巡り続ける恋愛のもどかしさを落とし込んだ歌詞に寄り添うように、叶は時折思い悩むように頭を振りながらステージ上をさまよう。曲がクライマックスに差し掛かり、「ここにいて」と声を上げた叶は、ポニーテールの結び目に手を這わせ、一気に髪の毛をほどく。悲鳴のような歓声で満ちる会場。曲が終わると、ステージ左右のスクリーンには、観客に向けられた叶の流し目が大きく映し出されていた。
突如新たな髪型をお披露目するというサプライズ演出に会場の興奮がざわめきが収まらないまま、叶はオリジナル曲「コモンピーポー」を披露。耳の奥底まで打ち付けるハードロックのリズムに乗りながら、不穏な気配を内包する歌声を拡声器で届ける。時折拡声器を客席に向けて「我らは同志」と先導すると、「ハイ!ハイ!」というファンの声が響きわたり、会場の熱量は加速度的に高まっていく。
ハンドマイクで「才悩人応援歌」を歌い上げ、一息ついた叶の側に小柳ロウが現れる。2名がデュエット曲にチョイスしたのは「銃の部品」。この曲では、叶が分厚いがなりを聴かせたかと思えば、小柳が繊細な裏声を響かせるなど、2名とも持ち前の歌声のイメージを変えるようなパフォーマンスを見せた。楽曲の世界観をシリアスに表現した2名だったが、小柳はМCに入るなり「叶さん(ソロライブ開催)おめでとうございます! マジカッコいいっす!」と笑顔で祝福。叶はそんな彼との交流が深まった経緯を振り返り、「かわいい後輩なんだよな」と目を細めた。
その後、星川サラが元気いっぱいに登場し、コラボネーム「かなえぼし」として知られる2人が「ばかまじめ」を歌い上げる。リズムに合わせて大きく腕を動かす振り付けも、軽快なステップも息ぴったりで、ポップでキュートな世界観に、会場は明るい空気で満ちていく。叶と星川は、そんな多幸感に満ちたステージングで観客を魅了した。このライブで登場するゲストは客席とコール&レスポンスをすることになっており、叶が緊張していることを指摘した星川は、観客に向け「叶先輩のことが好きな人ー? 大好きな人ー?」と問いかける。客席からの愛溢れる「はーい!」という声と、星川の気遣いを受け取った叶はうれしそうにほほえんでいた。
星川が去ったあとのステージには、満点の星空の下、客席に背を向けベンチに腰かける叶の姿が。そして「JANE DOE」のイントロとともに、椎名唯華が歌いながら現れる。優しく囁くような椎名の歌に合わせて、ゆったりと舞い踊る叶。2番で歌唱が叶に切り替わると、椎名はその声に聴き入るように、体を揺らしていた。この選曲は叶の希望によるものだそうで、歌割りなど悩むことはあったものの「どうしても『JANE DOE』がよかった。こんなわがままを言える機会があるんなら」と思い切って提案したという。椎名はその裏話を聞いて驚いた様子だったが、「ありがとうございます、本当に……!」と恐縮していた。
緩と急、明と暗を柔軟に切り替えながら、さまざまな趣向で観客の感情を揺さぶってきた本公演。ライブの折り返しを迎えてからは、叶のソロ歌唱パートが続く。「夜はまだまだこれからです! 僕からずっと目離すなよ!」という言葉のあとに、「レディメイド」で妖艶なダンスを披露。「人間みたいね」のイントロが始まると、ステージ上には叶に加え、デビュー当時の衣装に身を包んだ“叶”が現れる。うつろな表情の“叶”の周囲をゆっくりと歩く叶が、時に彼に寄り添い、時に何か語り掛けるようにしながら歌う姿が、ファンの視線を釘付けにした。その後「リードコントロール」「ドーナツホール」とハイテンションな曲目が続き、終幕に向けて客席の熱気をどんどん上げていくかに思われた刹那、「痛いよ」「ナイトルーティーン」といったミドルテンポの楽曲でクールダウン。「夢みたいな日々」への追想と後悔をにじませたオリジナル曲「Voyage」では、ステージには再び星がきらめいたほか、叶が夜の海辺にたたずんでいるような演出が観客の熱を優しくなだめていく。
ペンライトの光がさざなみのように揺れるなか、「ダーリン」のピアノイントロが響く。ステージ上には大小さまざまな絵画がずらりと並び、まるで美術館のような光景が広がる。叶がステージからふっと消えたかと思うと、その姿は壁にかかった1枚の中に。彼はいくつもの絵画の世界を自在に出入りしたあと、共通衣装にお色直しした姿で現れ、ファンの歓声を浴びる。サビでは「ダーリン 全部あなたにあげる」と悲痛な叫びにも似た歌声が観客を圧倒。彼を囲む絵画は1枚ずつ消えていき、最後に叶だけが取り残された。
「ダーリン」で構築されたアーティスティックな世界観を引き継ぐように始まったのは、「セレナーデ」のパフォーマンス。ここでは叶と同じく共通衣装姿の剣持刀也が登場し、付き合いの長さを感じさせる抜群のコンビネーションで、キレのあるダンスを見せる。叶は剣持について「安心しますね。僕の勝手なイメージだけどライブに出るのに慣れていない頃から一緒にやってるから」と語る。剣持はパフォーマーとしての叶を「進化してる!」と評しつつ「さっき髪も長かった。いいな! 僕も結んでおけばよかった」と悔しさをにじませた。
続いてのゲストは加賀美ハヤト。カオスな曲調とアイロニックな歌詞で会場をかき回す「未完成婚姻論」を歌いながら、叶と加賀美は手数の多いコミカルな振り付けで観客を楽しませる。この選曲の理由について叶は、「加賀美さんが自分1人じゃやらないけど、お願いしたらやってくれることを一緒にしたいと思った」と話し、〆切ギリギリになって楽曲を変えたことも明かした。加賀美は「今生は叶さんのお願いを断らないことにしている」というポリシーがあるそうだが、このチョイスには驚いたと述べる。
一度暗転し、明るくなったステージには三枝明那と、椅子に腰かけた叶が現れた。彼らが歌ったのは「magnet」。妖しくもドラマチックなこの楽曲を、感情をぶつけ合うように歌い上げる叶と三枝。三枝が叶の胸に頭を寄せたり、お互いの手を重ねようとしたりと、ハラハラするようなパフォーマンスは、2名が顔を近づけ、見つめ合うように視線を交わすところで終了。三枝はこの演出を成功させるために「いろいろと“不都合”があるからリハーサル後にコンタクトを外してきた」と告白する。叶は「(顔の位置が)リハだともっと遠かったから、ビビってるなと思ったのに!」と苦笑。そして「この距離で人と近付いたことないよ! でも明那とだからできた。びっくりしたでしょ?」と観客に語りかけた。
これにてゲストが全員登場し終わり、恋愛の生々しい感情を表現しながらもポップなサウンドが特徴的な「愛のけだもの」を歌い始める叶。しかし曲がサビに近付いた頃、ステージ袖から戌亥とこが現れ、歌声を重ねる。この日2度目のサプライズに観客は驚きの声を上げ、これまで幾多のステージを経験してきた2名による安定感のあるステージングを堪能した。戌亥の出演はシークレットであり、このことについて彼女は「マネージャーさんに3回確認した。本当に言わないの?って」と驚いたそう。叶は「完全に僕のわがまま。完全シークレットでゲストさんを呼ぶのをやってみたかった」と満足げに語っていた。
最後のМCで、「孤独」という単語をライブタイトルに選んだ理由について、叶は「意味としてはポジティブなニュアンス。みんなにも孤独を感じる日はあると思うんです。そういうときは落ち込んじゃうかもしれないけど、落ち込むぐらい日常が幸せでポジティブなものであるということを実感して、ライブタイトルにしました」と説明。「だから好きな方々をお呼びして大好きな皆さんとここでライブをするというのが目標でした。みんなのおかげですごく幸せに過ごせました」と改めて感謝を口にした。
「これから歌う2曲、これで本当に最後です」という叶の宣言に、会場から名残を惜しむような声が上がる。ライブを終幕に導く1曲目は、叶が2022年の誕生日に発表したオリジナル曲「花束の行方」。バンドサウンドにストリングス、ピアノなど多彩にきらめく音を集めたこの楽曲を、叶は今日一番の笑顔で歌う。途中、彼の背後にはデビューから今日までの配信のさまざまなシーンや、叶が出演してきた数々のイベントの模様を集めた映像、これまで寄せられたファンアートの数々が写し出され、叶の活動の軌跡とそれを支えてきたファンの愛情の大きさを感じられる時間となった。
ラスト1曲に選ばれたのは「ありがとう」。幾度も「ありがとう」と繰り返すこの楽曲を、叶は会場に集ったファンへの感謝を表すように気持ちを込めて歌い上げる。最後の1音を発した叶は、その姿を頭からつま先まで白い花びらに変え、儚くステージから去っていく。そしてスクリーンには「愛情も孤独も応援もさみしさも全部ひっくるめて自分だと思うのでこれからも人生を楽しみながら活動していくつもりです。これからもよろしくお願いします!」という叶からの手書きメッセージが投影され、帰路に着くファンを優しく送り出していた。
叶 2nd LIVE 孤独 -solitude- 東京国際フォーラム ホールA セットリスト
1.アイ
2.命ばっかり(カバー)
3.Make Me Wonder(カバー)/ 叶、樋口楓)
4.ラブレス(カバー)
5.コモンピーポー
6.才悩人応援歌(カバー)
7.銃の部品(カバー) / 叶、小柳ロウ
8.ばかまじめ(カバー)/ 叶、星川サラ
9.JANE DOE(カバー)/ 叶、椎名唯華
10.レディメイド(カバー)
11.人間みたいね(カバー)
12.リードコントロール(カバー)
13.ドーナツホール(カバー)
14.痛いよ(カバー)
15.ナイトルーティーン(カバー)
16.Voyage
17.ダーリン(カバー)
18.セレナーデ(カバー)/ 叶、剣持刀也
19.未完成婚姻論(カバー)/ 叶、加賀美ハヤト
20.magnet(カバー)/ 叶、三枝明那
21.愛のけだもの(カバー)/ 叶、戌亥とこ
22.花束の行方
23.ありがとう(カバー)
ライブを終えた叶からコメントが到着
――イベントが終わった今の率直な気持ちを教えてください。
叶
「本当にありがとう!」ですね。僕の伝えたいことは全部伝えられたと思います。それぐらいやりきったと思っているので、気持ちよく脱力してます……。
――イベント本番の中で、叶さんが特に印象的だった瞬間はどこでしたか?
叶
戌亥さんがステージに出てきてくれたときは、お客さんの反応を見て「夢が現実になった!」と思いました。感動しましたね。
――最後にイベントに参加・視聴いただいたファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
叶
僕の気持ちや、お見せしたいものを全部出し切ったと思っているので、それを皆さんが受け取ってくれていたらとてもうれしく思います。ありがとうございました!