会場には期待感に満ちた観客が、各々ペンライトを手に集結した。イベントにおける注意事項などのアナウンスが始まり、緊張のためかセリフを噛んでしまう緑仙。ファンからの「がんばれー!」「いけるよー!」という声援を受けた緑仙は「もっと(声援を)ちょうだい……!」とねだり、ファンを和ませる。会場が暗転すると緑仙のライバーカラーに点灯したペンライトの光で、会場が満たされていく。「緑一色」ツアーのオリジナルペンライトはパンダ型となっており、開演間近のホールには光るパンダの群れがあちこちに現れた。
オープニング映像の終了とともに共通衣装の緑仙がステージに登場した。マントと胸元のライバーカラーがアクセントになっている、パンツスタイルのこの衣装。マントを揺らしながら、緑仙はダークなモノローグから始まる「藍ヨリ青ク」、音楽ユニット・cadodeとのコラボ曲「ジガトラ」のソロバージョンでツアー2日目の幕を開けた。「みんなに最高の1日をプレゼントします!」と大声で宣言する緑仙に、ファンは負けないほどの歓声で応じる。
黒を基調にした詰襟のレーベル衣装にチェンジした緑仙は、本人曰く「うまくいかない日常を歌にした」という「なんでですか?」をスタンドマイクと拡声器の“二刀流”で力強く歌い上げる。そしてハンドマイクに持ち替え、中森明菜の名曲「飾りじゃないのよ涙は」をカバー。ピンスポットライトで視線を集めながら、ほのかに妖艶な雰囲気を感じさせるステップを踏み、ファンを魅了した。
本日初のМCパートでは、緑仙は会場へ詰めかけたファンに向けて「ぎゅうぎゅう詰めなのでスタンディングに慣れてなかったり、ライブが初めての人はびっくりしてるかもしれないけど、つらくなったら休憩したりしてうまいことライブを楽しんでくれるとうれしいです!」と語りかける。観客から投げかけられる数々の「かわいい」という声には「みんなのほうがかわいいよ、キュートキュート。最高だ、みんな」と応じながら、凛とした表情で「ここからは7曲ほぼノンストップでいきます。盛り上がっていきましょう!」と盛り上げていく。
続く5曲目に緑仙が歌ったのは同期デビューのシスター・クレア、ドーラによるユニット・cresc.のオリジナル楽曲「殺屋中毒」。曲の終盤には天井から大量の紙幣が降り注ぎ、会場には歓声が響く。なおこの紙幣、肖像や印刷されている数字などに緑仙の要素が入れ込んであり、細部まで“緑一色”であるため、手に入れられた人はじっくりチェックしてみよう。
ジャジーで軽やかな「殺屋中毒」が終わると、重いビートとギターサウンドが重なる「独善食」、「Reject it now!」へとなだれ込む。「うまくいかないことばかりだけど、僕の歌を聞いて『いい日だったな』と思ってほしいです!」という緑仙の声に呼応するように、会場の熱量が次第に上がっていった。
ポルカドットスティングレイ・雫とのツインボーカルが特徴のコラボ曲「天誅」は、緑仙が艶やかな歌声を響かせるソロバージョンに。夜の街を切り取ったきらめく映像を背に、緑仙は軽快なステップを披露した。続く「タイト」は、緑仙がステージ上の椅子に腰かけハンドマイクで歌唱。初期オリジナル楽曲ながらも根強くファンに聴き継がれる楽曲であり、緑仙の歌い始めには悲鳴のような歓声が上がった。
メジャーデビューアルバム「パラグラム」に収録されたダウナーなラップナンバー「アイムリドミ」では、緑仙の歌声に呼応するかのように観客が歌う場面も。そしてHYの名バラード「366日」のカバーへ突入する。歌いこなすためには、広い音域とたっぷりとしたロングトーンといった技術の数々が求められる楽曲だが、緑仙は圧巻のテクニックと豊かな声量でファンの心をがっちりと捕らえた。
「ほぼノンストップでいきます」という宣言通り、7曲を一気に走り切った緑仙は「この7曲の間にいろんなことがあった気がする」と笑う。ここでツアーをともに走るバンドメンバーの紹介を挟むも、緑仙は「僕はお着替えをしてくるので、(その間)バンドメンバーの変顔でお楽しみください」と彼らにすべてを託して舞台袖に消えていった。するとこれまで緑仙に向けられていた「がんばれー!」という声が、一斉にバンドメンバーへと向けられる。
苦戦するバンドメンバーの様子を楽しむかのように早々にステージに現れた緑仙は「このあと、いっぱいの人間で歌う曲を1人で歌うことになっている」と次の曲目を匂わせる。「これまで仲間と一緒にステージに立つことが多かったので、楽しみややりがいを感じてはいるけど、1人だと寂しいことがあるんです。そんなときみんなのサイリウムを見ると元気がでるので、恥ずかしがらずに振ってください!」と語りかけた。
МCパートが明け、ダイナミックなピアノイントロが観客を引き付けるRain Drops「ジュブナイルダイバー」からライブ後半がスタート。青と白のライトが目まぐるしく交差する中、緑仙はRain Dropsメンバーの全パートを一手に引き受け、歌い切った。続いて投下されたのはスロウなテンポの「ヒロイン」。「ジュブナイルダイバー」でボルテージの上がった観客を優しくなだめるように、緑仙は持ち味のハスキーな歌声を響かせた。
11月13日(水)にリリースを控える3rd ミニアルバム「ゴチソウサマノススメ」からは、「猫の手を貸すよ」「終着駅から」を披露。2匹の猫と暮らす緑仙が作詞した「猫の手を貸すよ」では、ある猫の目線で、ともに生活している人間への思いがつづられている。また、「終着駅から」が始まる前には、緑仙が「今日はみんなのために歌います」と語り、時折観客に向けて「大切な貴方へ」と歌いながらまっすぐに手を伸ばす様子が見られた。
ライブも終盤に近づき、ベレー帽とアシンメトリーのパンツが特徴的な衣装にチェンジした緑仙。大人っぽさや妖しさを強調したこれまでのステージングから印象をガラッと変え、キュートな世界観の「しあわせクッキー」、“友達”へのまっすぐなメッセージを込めた爽やかなロック「友達代表宣言」を歌う。「しあわせクッキー」の途中には、大量のシャボン玉が舞い上がる中、緑仙は「踊りがいがある!」と声を弾ませた。
いったん舞台袖に引いた緑仙は、ベガルタ仙台の巨大なフラッグを持って現れる。最後の曲として選ばれたのは、緑仙がかねてより応援している宮城・仙台のサッカーチームであるベガルタ仙台とのコラボ曲「Blowin’ Wind is blowin’」。青々しい芝のグラウンド映像を背に、緑仙は“ベガルタ愛”を詰め込んだ歌を伸びやかな声でファンへと届け、ライブを一度締め括った。
その後、観客からの熱烈なアンコールに応え、ステージに戻ってきた緑仙。「僕からのメッセージです。聴いてください」とつぶやき、日頃感じるラジオへの思いを歌にした「リコネクト」でアンコールを始めた。歌い終えたあとのМCでは、ライブ本編で披露した「終着駅へ」についての思いを語り始める緑仙。「福岡公演ではおじいちゃんのために歌わせていただいたんですけど、今日はみんなのことを考えて歌いました。大きいステージとかライブがあるたびに、『ここまできたか』って終わりのようなものを感じるんです。でも終わりじゃなくて、さらにその先に行けたらいいなという気持ちを込めてこの歌詞を書いたので、みんなもそれを感じてくれたらうれしいな」と述べた。
「ライブはあとちょっとで終わってしまうので、みんな思い残すことがないように! あのときこうしておけばよかったとか、もっとサイリウム振っとけばよかったとか、寝る前に後悔しないよう、残りの曲を楽しんでください」と語る緑仙。続くアンコール2曲目の「ジョークス」では力強く拳を振り上げながら会場を煽った。
最後の曲は緑仙の初リリースされたオリジナル楽曲「イツライ」。ここで緑仙が観客の撮影を解禁すると、観客はこの日一番の歓声を上げながらスマートフォンを取り出す。緑仙は観客へ「みんなの携帯の中に僕を残して! つらいときも悲しいときも僕がお守りのような存在になりますように。祈りながら歌います!」と語りかける。真っ赤なテープが噴射され、会場の熱も最高潮を保ったまま、ツアー2日目の公演は終了した。
緑仙 2nd LIVE TOUR「緑一色」神田明神ホール(東京)セットリスト
1. 藍ヨリ青ク
2. ジガトラ
3. なんでですか?
4. 飾りじゃないのよ涙は(カバー)
5. cresc.:殺屋中毒
6. 独善食
7. Reject it now!
8. 天誅
9. タイト
10. アイムリドミ
11. 366日(カバー)
12. Rain Drops:ジュブナイルダイバー
13. ヒロイン
14. 猫の手を貸すよ
15. 終着駅から
16. しあわせクッキー
17. 友達代表宣言
18. Blowin’ Wind is blowin’
アンコール
1. リコネクト
2. ジョークス
3. イツライ
緑仙 2nd LIVE TOUR「緑一色」
にじさんじ ↗