「打ち合わせに来た人と違うな」入社3カ月目のディレクターが番組の舵取り役に
――「にじさんじのB級バラエティ(仮)」(以下、にじバラ)はどのような理由で誕生した番組なんでしょうか? 企画立ち上げのきっかけについて、この機会に改めてUさんからお聞かせください。ちなみに読者の方に向けてご説明すると、Uさんは番組内で時折「ディレクター」と呼ばれていますが、今はディレクター業もしつつプロデューサーとして番組に携わっています。
プロデューサー U:この話題については以前、「にじさんじアーカイブス 2021-2022」でもお話したことがあるんですが、僕が一から立ち上げた番組というわけではなく、前任のプロデューサーから引き継いでいるんですよ。「平成の深夜番組のような番組をにじさんじでも作りたい」という番組の方向性と、早瀬さんとイブラヒムさんのキャスティングはすでに決まっていました。で「あとはお願いします」という状態で、入社3カ月目の僕がバトンを受け取ったという形です。
「にじさんじのB級バラエティ(仮)」キービジュアル
早瀬走(以下、早瀬):あのとき、入社3カ月目やったん?
イブラヒム:へえ~。
プロデューサー U:そうです。0を1にするのは前任のプロデューサーの仕事だったんですが、そこから先は全部僕だったので、「丸投げをされた」というのが正しいです(笑)。
イブラヒム:確かに「最初に打ち合わせに来た人と違うな」と思ったもん。
早瀬:最初の打ち合わせって、2020年の9月頃やんな? 「早瀬さんにお話がありまして、ちょっと来ていただきたいんですけど……」って、なんか仰々しく言われたよな。
イブラヒム:うん。仰々しく言われたけど、俺は平気で遅刻していった。
早瀬:そう。イブラヒムは平気で2時間ぐらい遅刻してきたんですけど、そのときに前任のプロデューサーがかなり熱く語ってたよね。
イブラヒム:熱く語ってたね。
早瀬:けどその人が、別の番組を担当することになって「にじバラ」を離れてしまったんですよ。
イブラヒム:“A級番組”のほうに行ったよね。
プロデューサー U:ですから、こっちは僕が任されたということです。入社してようやくいろんな仕事を覚えてきたタイミングでしたね。番組の方向性とМC以外は決まってなかったことも多く、各地に取材に行ってもらうでびでび・でびるさんや当時ナレーションを担当してくれていた“謎のお姉さん”(※1)のキャスティングは僕が担当しました。
※1→竜胆尊の知人であり、「にじさんじのB級バラエティ(仮)」の初代ナレーター。第18話で実家の刀鍛冶を継ぐため卒業するが、時折ピンチヒッターとして登場する。
――前任のプロデューサーの熱い思いから「にじバラ」が立ち上がったわけですが、そもそもそのプロデューサーが「にじバラ」を作りたいと思った理由についてはUさんはご存じだったんですか?
プロデューサー U:番組が始まった頃は社名がANYCOLORではなく、いちから株式会社だったのですが、当時はなんと言うか「やりたいから、やろう!」というパッションで番組を作ったり企画を通したりして、「面白いものを作って、みんなで盛り上がろう」という風潮だったんですよね。いわゆるベンチャー気質と言いますか、その頃にできた土壌は今でもあるのですが。にじさんじの公式の番組がまだ少なく、「面白いことをやってにじさんじを盛り上げていこう」という試みのうちの1つに、この番組があったんだと思われます。
にじさんじ公式サイトに掲載された、「にじさんじのB級バラエティ(仮)」開始の告知文。
早瀬:ほんまにやりたかったんやろな。
プロデューサー U:で、その前任プロデューサーの熱量がアッツアツの状態で企画が僕の手元に渡ってきて「熱い熱い熱い!」となりながら、試行錯誤して作り始めた、という経緯です。
――なるほど。でもそこから5年が経ち、にじさんじの中でも長寿番組になりましたから。
早瀬:正直、4回ぐらいでこの番組は終わると思ったよな?
イブラヒム:最初は「半年ぐらいできたらいいね」ぐらいじゃなかった?
プロデューサー U:そもそもディレクターがしばらくの間僕だけで、体力的にも限界だったので、1年ぐらい続いたら倒れちゃうと思っていました。
МC2人の関係は信頼し合う「ビジパ」、5年間で生じた役割の変化
――失礼ながら、早瀬さんとイブラヒムさんは「にじバラ」開始当初は配信上でも交流がそこまでなかった印象だったのですが、МCとしてコンビを組むことになったときどのようなお気持ちでしたか?
早瀬:「え、イブラヒム? しゃべったこともないけど……」みたいな。たぶん、この番組がなかったらマジで交わらない2人やったと思いますよ。
イブラヒム:まあね、普段やってることが別々過ぎるもん。俺としてはデビューした年に「にじバラ」に出ることが決まったから、デビューしてすぐに公式番組のレギュラーを任されることが単純にうれしかったですね。だから、らんねーちゃん(早瀬)が相手だからどう、ということまで考えられてなかったです。
――あまり交流のなかったコンビで新番組、という点に不安などはありませんでしたか?
早瀬:不安しかなかったですよ(笑)。特に第1回を撮ったときのあの感じ! どういうテンションでいけばいいのかもわからへんから「本当に面白くなるのか?」とか、「こういうものを配信して、怒られへんのかな」とか考えてました。
イブラヒム:確かに不安しかなかったね。収録自体20、30分で終わってそのまま使う……みたいなスタイルだから「面白いわけなくない?」って思った(笑)。
早瀬:第1回の出演者全員「大丈夫か?」って言いながら帰りました。
イブラヒム:本当に言ってた。
早瀬:あたしらは「これ、ほんまに大丈夫か? 大丈夫なんか?」ってめっちゃ不安やったのに、ディレクター(プロデューサー U)はニッコニコで「オッケーでーす!」って。
プロデューサー U:(爆笑)
早瀬:この人はどんなものができあがるのか、たぶんわかってたよな。
プロデューサー U:出演者の方々は不安だったんでしょうけれども、初回の収録が終わったとき「面白いな、これはいける!」と思っていました。ライバーさんたちが困りながらも物事が進んでいって、「これ、大丈夫?」と不安そうにおっしゃっているところまで含めて、番組の方向性に合っていると思ったんです。だから正直に言うと僕はその時点で、「ああ、いいものが撮れたなあ」と感じていました。
【新番組】にじさんじのB級バラエティ(仮)#1【はじまるよ】
早瀬:周知の事実なんですけど、この人は性格が悪いんです。本当に。
イブラヒム:本当にね。なんでこんなこと思いつくんだろうなってぐらい嫌なことをしてくるもんね。
プロデューサー U:(爆笑)。5年が経ったわけですけども、おふたりの関係性はどうなりましたか?
早瀬:なんだかんだ、にじさんじライバーの中で一番会ってるよな?
イブラヒム:そうだねー。「にじバラ」の収録があるから一番会ってるだろうし、一番話す相手だよね。
早瀬:でも全然連絡取らないし、コラボ配信もしないんですよ。だってこの間の「R.E.P.O.」配信が初めてやったもんな。前に「イブラヒムさんとの関係ってなんなんですか?」って聞かれたときには、「ビジパ(ビジネスパートナー)」って答えた。
イブラヒム:(笑)。ビジネスだろうね! プライベートでの関わりは一切ないからさ。
早瀬:ビジパです。けど、イブラヒムのことは信頼してますよ。ライバーの中で一番話しやすいかもしれない。
イブラヒム:まあそうだよね、今となっては全然話しやすいし、俺も「らんねーちゃんがいれば、なんとかなるだろうな」と思うときがある。
――番組のスタートから早瀬さんとイブラヒムさんとご一緒されてきたUさんから見て、「2人の関係性が変わってきたな」と感じることはありますか?
プロデューサー U:この話、今回のインタビューで一番言いたかったことなんですよ。5年前に番組が始まった当初と比較すると、おふたりの立ち位置が変わったと思ってるんです。どういうことか説明しますと、番組当初は世間知らずな元石油王・イブラヒムさんを、早瀬さんが関西弁で「なんでやねん!」とつっこんでいくスタンスだったんですよ。でもこの5年間で、イブラヒムさんがどんどんしっかりしてきまして。
イブラヒム:そう、俺が常識人になってきたんだよ。
早瀬:さすがに5年も経ったらな。イブラヒムっていくつになったんやっけ?
イブラヒム:27ですよ。
早瀬:うわっもう、ほら! 22歳のガキやったのに! 昔「クソガキやな~」って思ったもん。
プロデューサー U:イブラヒムさんがつっこむことが多くなり、当初思い描いていた役割から逆になっているんですけど、これはこれで面白いなと思っています。本人たちはあまり実感ないですか?
イブラヒム:いや、本当は俺も自由にしゃべりたいから、らんねーちゃんに常識人でいてほしいというか。
早瀬:……いや、私けっこう常識人ですけどね?
プロデューサー U:早瀬さん、たまに台本と関係ないところに歩いていっちゃうじゃないですか。
МCやスタッフよりもモチベーションが高い“謎の”人物
――「にじバラ」は先ほどもお話に出た通り今年開始5周年を迎えます。このことについてのご感想をお1人ずつ伺えますでしょうか。まず、イブラヒムさんからお願いします。
イブラヒム:いや~……正直、気が付いたら5年経ってましたという感じです。いろんな意味で「にじバラ」が日常になじんでないんですよね。収録日が決まったらスタジオに行って収録して……を繰り返していたら、5年が経っていたみたいで、「あ、そうなんすね」という(笑)。でもこれぐらい気負っていないからこそ続いてるのかもな、とも思います。
早瀬:でもイブラヒムはデビューした年に「にじバラ」が始まってるでしょ? なじんでないっていうか、逆になじみすぎてわからなくなってるんちゃうん?
イブラヒム:なじんじゃったのかな。だって、小学校とか中学校とか通ってたときって、何も意識しないでしょ。小3になったときに「うわ、小学校に入って3周年だ!」って思わないじゃん。そんな感じ。らんねーちゃんは?
早瀬:私は「『にじバラ』っていつ終わんの?」みたいなことをよくこの人(プロデューサー U)に聞くんですよ。でも半年ぐらい前に「にじバラ」が終わる夢を見て! そのとき「あ、そうなん!? これでやっと収録のたびに東京行かんで済む!」っていう思いと同じぐらい「うわ、寂しい!」っていう感覚があったな。
プロデューサー U:(笑)
早瀬:だからやっぱり、続いてほしいとは思ってます。食べ物回の収録はおいしいものも食べられるんでね。
イブラヒム:収録自体は楽だからね。
早瀬:本当にそう。けどね、ナレーションしてくれる“謎のお姉ちゃん”(※2)と、取材に行ってくれるでびるは大変やろうなと思ってるよ。
※2→周央サンゴの知人で「にじさんじのB級バラエティ(仮)」二代目ナレーター。
イブラヒム:じゃあ奴らが「やめたい」って言ったら、やめよう。
早瀬:そうしよう。お姉ちゃんとでびるが「もう無理です! 私たちを解放してください」って泣きだしたらやめよう。
プロデューサー U:お姉ちゃんは「ずっと『にじバラ』やる」って言ってますよ。
早瀬:(笑)。お姉ちゃんって、「にじバラ」で起きたこと全部覚えてるよな?
イブラヒム:本当に大好きだよな(笑)。俺より覚えてると思う。
プロデューサー U:「にじさんじが終わっても『にじバラ』はやりましょうね」とかいう意味不明なことを言ってくれます。
早瀬:怖え……怖えよ(笑)。なんだかんだ、「にじバラ」のおかげで毎年にじフェスにも出させてもらってるし、ありがたいことです。ただ、1時間の収録のために3時間半かけてバーチャル大阪から東京に来て、また3時間半かけて帰るのはムカつきますね! だから「にじバラ」でハワイに行くまではやめられへんかな!
イブラヒム:ハワイで収録ね。もしかしたら最後の最後に行けるかもよ? でも俺たちって、この番組がANYCOLORの社内でどんなポジションにいるのか別に知らないからさ。
早瀬:でもスタッフも増えたし! ディレクターも3人いるし。
――「にじバラ」初期の頃はディレクターがUさんだけだった、ということは時折話題に上がりますね。スタッフの構成はそれからどう変わっていったんでしょうか?
プロデューサー U:最初期の頃はディレクターである僕と、音響効果の人間が1人、という形でした。でも今ではスタッフが増えまして、ディレクターは3人体制でやっています。一応最初から「にじバラ」に携わっているのは僕なんですが、あとから入ってきてくれたディレクターには「僕の作ってたVTRみたいにやってほしい」とか「ああしろ、こうしろ」ということは特に言ってないです。
もしかしたら今はまだ、「にじバラ」がこれまで作ってきた“型”の模倣になっている部分があるかもしれませんが、スタッフの自主性というか、「自分たちの作りたいものを作ってほしい」と言っていますから、今後はもっとブッ飛んだ映像や自由な作風が生まれるんじゃないかと思って楽しみにしています。
――なるほど。
プロデューサー U:肩書がプロデューサーにはなりましたが、僕がカメラを1台だけ持って、でびるさんとあちこちロケに行く、というのは今でも変わらない部分です。
早瀬:スタッフが増えたときのこと、覚えてるわ。収録で「この番組にADが来ました」って言ったもん。
【私という】にじさんじのB級バラエティ(仮)#11【戦うボディ】より。24:44から早瀬が番組スタッフの増員を明かしている。
――スタッフも増員して、今後さらにパワーアップしていきそうですね。ちなみにUさんは番組開始から5年が経った今、どんなお気持ちですか?
プロデューサー U:いやー、ずっと楽しいですね! 最初の頃はそれこそ右も左もわからないまま、これまでお付き合いのなかった全国各地の会社に取材を申し込んでいくのに苦労していましたが、その1つひとつがどれも楽しい回でした。
「にじバラ」はもう100回以上放送していますが、取材先で見聞きしたこと、勉強になったことがどれもすごく面白いんです。だから番組を作っている僕らが楽しくて、ライバーさんたちがVTRを観て笑ってくれて、さらに視聴者の方々も笑ってくれる、というサイクルを作れることがすごくうれしいんですよ。この5年間ずっと、「楽しいなー」と思いながらこの番組を作っています。
早瀬:プロデューサーはマジで一番楽しんでます。
プロデューサー U:(笑)。でも番組が5年続いてきて、責任を持たないといけない場面も増えてきたので、そういうことにもきちんと向き合いながら、楽しい番組作りを続けていきたいですね。
100本以上のアーカイブからМCとプロデューサーが思い出すあの回、この回
――Uさんも先ほどおっしゃっていた通り、「にじバラ」の配信アーカイブは先日100回を超えました。いろんなテーマに触れてきましたが、皆さんが思い出に残っている配信エピソードが気になります。
プロデューサー U:直近ですと、第101話「棍棒」が個人的に最高でした。
早瀬:あれほんまにおもろかった!
イブラヒム:困惑したなー、あれは。
プロデューサー U:最近の「にじバラ」は本当にありがたいことに、大きな企業に取材をさせていただくことが多かったんです。そんな中で「ちょっと変わってるけど真面目に面白いことをやっている団体」という、まさに「知らないこと」を教えてくれる団体の方とお話しできたことが非常によかったですし、「こういうのがやりたかったんだよな」という番組の初期の気持ちを思い出せるような回でした。
「そっくり食品」の回も印象に残っています。取材をさせていただいた企業の方々が非常に協力的で「(VTRを)面白くしたいですね!」と言ってくださったんですよ。その結果、いろんなパロディをちりばめたVTRを作りました。スタジオゲストとしてアニメにお詳しい社築さんをお呼びしていて、「社さんならきっとパロディネタを拾ってくださるだろう」と思っていたんですが、収録中にちゃんと反応してくださったのもうれしかったですね。
【実証】にじさんじのB級バラエティ(仮)# 101【パワフル】
早瀬:そうやったね。私は「あんこう」回で「にじバラ」すごいな!って思ったよ。
イブラヒム:あれね! 時代が変わった回だよ。
早瀬:あの辺からたぶん、ANYCOLORの営業部とかが「にじバラ」に目を付け始めたと思います。そもそも第1話が配信されたときにも、「にじバラ」は話題になったんですよね。SNSでトレンド入りして、「すごいことになってるな」と思いつつあんまり実感がなくて。「トレンド入っても私らは別に変わらんし」と思ってたんですよ。
でも「あんこう」回で登場したあんこうの冷凍食品が、一瞬で売り切れたって聞いて! その後も全然買えなくなってたらしくて、そこで「『にじバラ』ってこんなにたくさんの人が見てくれてたんや、だからみんな買ってくれてるんや」と思いましたね。
【華臍魚】にじさんじのB級バラエティ(仮)#13【鮟鱇】
イブラヒム:影響力を感じたよね。
早瀬:そうなんよ。この記事を読んでいる企業の方ー! あなたに向けて言ってます。いつでもANYCOLORにご連絡をくださーい!
イブラヒム:そうやってまだまだ取ろうとしてんだ(笑)。
――(笑)。イブラヒムさんはどの回が思い出深いですか?
イブラヒム:俺って、ゲストで来てくれたライバーが収録のときにどうしゃべるのか見るのが好きなんですよ。それでいうと、レオス(・ヴィンセント)が来てくれたときとか。
早瀬:レオスな(笑)。
プロデューサー U:第18話「ストレス」に出てくださったんですけど、当時レオスさんはデビューしたばかりということもあって、ガチガチに緊張されていましたね。
【命を燃やせ】にじさんじのB級バラエティ(仮)#18【怒りを燃やせ】
イブラヒム:そう。しかもそれをそのまま(映像に)使われていて。本人はたぶんめっちゃ最悪な気分だったんだろうけどさ。
プロデューサー U:あの状態が面白すぎたんですよ。
早瀬:面白すぎたもん。でもレオスは、その晩枕を濡らしたと思います。
プロデューサー U:そのとき2本撮りで、確かに緊張されている姿が面白くはあったんですけど、1本目の撮影のあと打ち合わせを挟みましたね。そこでレオスさんも緊張がほぐれて、2本目にはいつものレオスさんになりました。
――そうだったんですね。当時のレオスさんもそうですけど、「にじバラ」ってデビュー間もない新人ライバーさんもよく出演されますから、МCのおふたりも交流の幅が広がりそうです。
早瀬:それはめちゃくちゃありがたいですね。新人さんとお話する機会もあんまりないので。あ、これは「面白かった」という話とはちがうんですけど、一橋綾人のチャーシューがうますぎた! びっくりした。おいしすぎてちょっと引いたもんな
イブラヒム:あのチャーシュー、本当に最高だった! ビビるよ。
早瀬:(同席しているスタッフに向かって)食べたことないでしょ? ほんまうまいから!
「にじバラ」は“自称・学習バラエティ”、取材先選びの決め手は「お勉強要素」
――あるときは地方の食品工場を取材したり、またあるときは大手家電量販店に最新家電について話を聞いたりと、「にじバラ」の取材先は本当に幅広いですよね。取材対象を決めるうえで、Uさんが大切にしている方針は何かあるんでしょうか。
プロデューサー U:基準のようなものはまったくないですね。担当ディレクターがそのとき気になるもの・興味のあることをきっかけに取材先を決めているので。すごく正直にお話すると「これってどうなっているんだろう?」と日常で感じた物事を調べてみて、面白そうだったらお話を聞かせてもらえそうな取材先を探す、というプロセスなんです。だからもし方針があるとしたら、日常生活でアンテナを張っていて気になったものや、勉強したいものを選ぶ、ということですね。
ただ、そもそも「にじバラ」は“自称・学習バラエティ”ですから、「勉強をしたい」という思いが根底にあるんです。学習要素があって、見ていて「へえ!」と思っていただけるポイントがあるかどうかは、取材先選びやVTR作成の際に気にしているところですね。ですから例えば鉛筆やポテトチップスなど日常的なものであっても、製造の現場には勉強になる要素が必ずあるんです。そういったものを発見しながら取材をさせていただいています。
――なるほど。生活の中になじんだアイテムでも、「これってそもそもどうやってできているんだ?」と見直してみることで新しい発見が生まれますね。
プロデューサー U:そうです。あと、番組を5年間続けてきたおかげでいろんな方々とつながりができたので、過去にお邪魔した企業の担当者さんに別の取材先をご紹介いただけるケースも増えてきました。例えば「あるテーマを取材したい」と考えたときに、過去にご協力いただいた企業がそのテーマに近いので連絡してみたら、取材できる方につないでいただける……というように。
イブラヒム:コネクションがね、できたと。
プロデューサー U:そうなんですよ。取材交渉がだいぶ楽になりましたね。番組初期の頃はまだにじさんじや、そもそもVTuberの認知度が今よりかなり低かったので取材交渉の際に苦労していました。「VTuberのにじさんじというグループの番組なんですが」とご説明しても、「なんですか、それ」と言われることが多かったので。最近はにじさんじのことを知ってくださっている方が多いので取材先選びの際に助かっています(笑)。
――過去にも取材先のご担当者さんや、関係者のお子さんがにじさんじライバーのファンというケースがありましたからね。
プロデューサー U:最近はもうとんでもなく多いです。ですので、ライバーの皆さんが羽ばたいていくおかげで、番組の取材許可が取りやすくなっています。
早瀬:素晴らしいね。
イブラヒム:ね。
――ちなみに、先ほどは取材テーマ選びについてお伺いしましたが、番組作りで変わってきたことはありますか?
プロデューサー U:なんだろう……。会社も大きくなってきたので、先ほど言った「責任を持たないといけない場面」に昔よりも向き合う必要が出てきたということはあるのですが。おふたりから見て5年前と比べて変わったところは何かありますか?
イブラヒム:イジりは減ったかな? VTRでイジられることが最近はあんまりないなと思う。
早瀬:確かにそうか。
プロデューサー U:そうですね。番組の初期の頃はいかにライバーを困らせるかというところに要点を置いた作り方をしていたので、VTR中で意地悪をいっぱい言ったり、いじりを入れたりしていたんですけれども、確かに最近はやってないですね。うーん……“マイブーム”って訳でもないんですが、5年間の間にどういった演出がウケるか、なども変わってきましたから。「今どういった面白さが流行っているか」みたいなことも考えて、少しずつ変えていますね。
早瀬走の“暴走”にイブラヒムとプロデューサーが啞然、6年目の目標は?
――「にじバラ」では、番組冒頭に「この番組は、家の中で配信ばかりしているにじさんじライバーと一緒に世の中の不思議や知らないことをわかりやすく勉強する、超次元情報バラエティ番組です」というおなじみのナレーションがあります。この機会にお伺いしたいのですが、МCのおふたりが番組での5年間を通じて一番学びになったことはなんでしょうか?
早瀬:よくぞ聞いてくれました!
イブラヒム:おお、あるの? 勉強になったこと。
早瀬:「攪拌」(かくはん)!
イブラヒム:工場見学でよく出てくる単語ね。
早瀬:そう! やから、攪拌はもう覚えた。あとなんやっけ? ……充填(じゅうてん)! それぐらいか?
プロデューサー U:おーーーーーーい!(泣)
早瀬・イブラヒム:(爆笑)
プロデューサー U:こうなんですよ。早瀬さんもイブラヒムさんもVTRで学んだことを全然覚えてくださらなくって……。5年もやってると過去に取り上げたことがある分野に近いテーマや、作り方が似ているものが度々VTRに登場するんですが、いつも本当に初見みたいなリアクションですよね。「これってこうやって作ってるんだー!」と新鮮な反応をくださるので、やりやすいと言えばやりやすい部分もありますが。
――(笑)。イブラヒムさんはいかがですか?
早瀬:あんたも一緒やろ、覚えてないやろ。
イブラヒム:毎回、その場では「うわ、勉強になる~」と思うんですけどね。
プロデューサー U:「にじバラ」で得た豆知識を誰かに話すことってないですか?
早瀬:ない。
イブラヒム:全然ない。
プロデューサー U:ないかぁ~……。
早瀬:(笑)。けど私ってけっこうチョロいので、「にじバラ」でリカちゃんを取り上げたときはリカちゃんを集めるのにガチでハマりました。だから、番組をきっかけに興味を持ったもの、買ったものは多いですよ! 収録で食べておいしかったものは今でもつい買っちゃうし。イブラヒムも「鰹節」回でもらった鰹節、ずっと食べてたよな?
イブラヒム:マジで好きになったもん、あれ。
プロデューサー U:まぁ……知識としては残っていないけど、生活には根付いたということで。
イブラヒム:根付きましたね。
――収録を通じて自分たちが肌で感じた魅力なので、視聴者の方々よりも好きになっていくんでしょうね。ちなみに、MCスキルについてこの5年間で学んだことはありましたか。
早瀬:いやこれがね、「学んで進化した」どころか退化してしまって。
イブラヒム・プロデューサー U:(爆笑)
早瀬:この番組を5年続けることで、公式番組へのハードルがガーンと下がってしまって。スタジオに来ると気が緩むのでほかの公式番組に呼んでいただいたときに粗相をしてしまうんですよね。
イブラヒム:わかるな~。
早瀬:こないだのロクフリ(LOCK ON FLEEK)だって、マジで申し訳なかった。3Dで公式番組をがんばってる人たちの中に、2Dで細々やってるうちらがお邪魔してちょっとお茶を濁して……。
早瀬走vsイブラヒムの屁理屈合戦!?にじバラMC参戦でディベートバトル【ペチャリブレ】#ロクフリにじさんじ
イブラヒム:あれは俺たちヒドかったよね。3Dでやってる公式番組の現場に俺らが行くとね、「うわ、3Dすごいっすね~」って言っちゃうもん。
早瀬:(笑)。3D収録って待ち時間があるから、「にじクイ」でも「ずっと待ってて、3Dってめっちゃしんどいやん」って言ったら、力ちゃん(ジョー・力一)に言われたもん。「まーたお母さん(早瀬)は文句ばっかり言って!」って怒られた(笑)。
――(笑)。でも、МCのおふたりが肩肘張らずにリラックスして収録されているのを視聴者の方々も感じてくださっているから、マイペースに5年間も続けてこられたのかもしれませんよ。
早瀬:そうなんですかね。
イブラヒム:ポジティブに表現したら、確かにそうかもしれないですけど。
プロデューサー U:「やるぞー!」って思っているのは、僕らスタッフと謎のお姉ちゃんぐらいだと思うので(笑)。
――この「にじバラ」のテンションが好き、というファンもたくさんいらっしゃると思いますよ。では最後の質問です。番組も6年目に突入しますが、皆さんがこれから番組でやりたいことは何かありますか?
早瀬:旅行。やっぱりハワイロケ行きたいよな。ほかにやりたいこと……なんやろう?
――Uさんに「これを取り上げて欲しいな!」という、リクエストもあればお聞きしたいです。
イブラヒム:いや、俺はUさんへのリクエストじゃなくて、さっきも言ったけどらんねーちゃんにまともに戻ってほしいな……。
早瀬:(爆笑)。わかった、がんばるわ。何がまともじゃないのか自分でもわかってないねんけど。
イブラヒム:おかしいんだもん、最近!
早瀬:わかれへん! ほんまにわかれへんねんもん!
プロデューサー U:でも早瀬さん、今日のあれ(※3)は本当になんだったんですか……?
※3→取材当日には第105回「業務用調理器具」の収録が行われており、早瀬が「台本を無視してクイズが始まる前から早押しして正解を言う」という予定外にも程がある行動を取ったため、担当Dを不憫に思ったプロデューサー Uが仕切り直しのために収録スタジオに乱入するという珍事が起きた。
【チューボー】にじさんじのB級バラエティ(仮)# 105【ですけど?】
イブラヒム:いや、もう今日はスタートからおかしい。「収録が始まりました」、それでらんねーちゃんが「声変わりしました」みたいなことを話し始めるから、そのあとはもうらんねーちゃん1に対して俺とゲスト3、みたいな構図になるんだよ。
早瀬:あ、確かにそうか。「なんかしゃべらなあかん」みたいな気持ちになってるかも。試しに、次の収録は最初に黙ってみるか?(笑)。
イブラヒム:黙るのは違うじゃん(笑)。たまになんか、そういう舞台装置みたいになってるときがあるよ。まあでも、今日みたいな日がたまにあるから面白いなと思う。
――МCおふたりの間でも、そういうご苦労があるんですね……(笑)。Uさんは今後何かやってみたいことはありますか?
プロデューサー U:原点回帰と言いますか、初心に帰るような企画はしていきたいですね。5年経ってМCの関係性も変わってきましたし、言ってしまえばこなれたり丸くなったりしてきている時期なので、先日の棍棒のようにちょっとトガった企画をもっとやってみてもいいと思っています。
MCのおふたりについては、イブラヒムさんはもっと自由に砕けていっていただいてもかまいませんし、早瀬さんはなんというか、もうちょっと人間の形に戻ってもらって……。
早瀬:ほんまにわからへん! どこがだめなん?
イブラヒム:台本を読んでほしいんだよ(笑)。最初は俺が台本読まない側だったのよ。今はそれが逆になってるから。
早瀬:確かに台本読んでないかも。
イブラヒム:もう最近様子がおかしいもん。
早瀬:今の私、妖怪みたいやん。早く人間になりたい!
イブラヒム:マジで頼む。
プロデューサー U:「戻りたい」であれよ。
――(笑)。では、プロデューサーから締めの一言をお願いします。
プロデューサー U:今後もレギュラーの皆さん、ライバーの皆さんとともに、丸くなりすぎないよう、「平成の深夜番組」という初期の頃イメージしていた破天荒な番組を作り続けていきたいと思っています。これからも末永くよろしくお願いします。
【熱烈】にじさんじのB級バラエティ(仮)# 106【打撃食堂】