視聴者の想像を映像化、イラストで高めるエピソードの解像度
――今回はにじさんじ公式切り抜きチャンネル内の動画シリーズ「ぷちさんじ」を担当するANYCOLORのスタッフとクリエイターのうちささんにお集まりいただきました。最初に「ぷちさんじ」制作における皆さんの役割を教えてください。
コンテンツ運用プランナー N:私は「ぷちさんじ」のプロジェクトマネージャーとして制作進行管理を担当しています。クリエイターの皆さんとのやり取りから、制作のスケジュール管理、投稿までを一貫して対応しています。
コンテンツ運用プランナー S:Nさんの前任が私です。入社してから約1年半ほど、「ぷちさんじ」のプロジェクトマネージャーとしてNさんがお話しした業務をしながら、同シリーズの運用体制の見直しと整備も行いました。現在は別の業務がメインですが、「ぷちさんじ」の運用にも携わっています。
うちさ:僕は「ぷちさんじ」の動画を作っているクリエイターで、「ぷちさんじ」の初期から携わらせていただいています。
――なるほど。続いて「ぷちさんじ」の企画から制作、投稿までの流れを教えてください。
コンテンツ運用プランナー N:まずは動画にするエピソードを決めるところから始まります。その際、社内で決めてクリエイターさんに依頼するパターンと、クリエイターの皆さんからご提案いただくパターンがあり、どちらかと言うと後者が多いです。題材が決まったら、クリエイターさんに動画を制作いただき、納品されたものを社内でチェックした後、事前に決めたスケジュールに合わせて公開する、という流れになります。
――エピソードの提案をクリエイターさん側からいただくとは意外でした。
うちさ:もともと「ぷちさんじ」は、僕が個人的にYouTubeへ投稿していたマンガ動画を田角社長が観て、「うちの会社でやっていただけませんか?」とお声がけくださったことがきっかけで始まりました。新しいプロジェクトだったので、ANYCOLORのスタッフさんと進め方を相談したのですが、まずは僕が取り上げたいエピソードやアイデアを提案して動画を作る形をとったんです。その後、クリエイターが提案しやすいフローをスタッフさんが整えてくださり、そのやり方が現在まで続いています。
――そのような背景があったんですね。Sさんは「ぷちさんじ」制作の運用体制を整備されたとおっしゃっていましたが、当時のどのような課題があり、それをどう解決したのか教えてください。
コンテンツ運用プランナー S:私が担当していた当時は、さまざまなマンガ動画がYouTubeなどに投稿され、マンガ動画を投稿するチャンネルも増えてきたタイミングでした。「ぷちさんじ」の動画もたくさんの方が観てくださっていたので、マンガ動画は多くの人に求められているコンテンツなんだと感じ、このシリーズをさらに成長させる取り組みが必要だと思ったんです。
そこで、まずは動画の公開タイミングを見直しました。どんな題材の動画を、どの時期に公開すればより多くの方に観ていただけるか考えて、1つずつスケジュールを組み立てていったんです。ただ、その運用を継続させるためには、あらかじめ動画をたくさん用意しておく必要があったので、動画制作を担っていただけるクリエイターさんを増員しました。
制作体制を整え、計画的に投稿内容と公開タイミングの足並みが揃えられるようになったのが、2022年4月30日に配信された長尾景さんの3Dお披露目でした。それまでも3Dお披露目の日に「ぷちさんじ」を投稿したことはあったものの、なかなかすべてのお披露目の日に合わせるのが難しくて。でも長尾さんの動画を公開した際に、視聴者の方から「3Dお披露目の日に合わせて『ぷちさんじ』の動画が出た!」とコメントをいただき、我々の意図がファンの皆さんにしっかりと伝わっていると実感できたんです。そこから3Dお披露目に合わせて動画を公開するという方針が生まれ、今でも続いています。
――公開のタイミングを工夫することでより多くの方に観ていただけますし、ファンの皆さんにも喜んでいただけるんですね。クリエイターさんを増員されたとのことですが、その際にどんなことを意識されましたか?
コンテンツ運用プランナー S:何より重視したのは、クリエイターの皆さんが制作に集中でき、モチベーションを高く保っていただける環境作りです。その一環として、クリエイターの皆さんが取り上げたいエピソードをお互いに共有し、情報交換ができる場を設けました。また、動画を観てくださったファンの方から寄せられたご感想やリアクションをクリエイターさんへお伝えする体制を作り、定期的にコミュニケーションを取らせていただいています。
うちさ:クリエイター同士の情報共有ができるようになったおかげで制作しやすくなりましたし、何よりファンの皆様からのフィードバックがとてもうれしく、励みになっています。本当にありがとうございます!
――Sさんが先ほど「マンガ動画が多くの人に求められるコンテンツであると実感した」とおっしゃっていましたが、皆さんが考えるマンガ動画や「ぷちさんじ」の強みはどんなところでしょうか?
コンテンツ運用プランナー S:やっぱり「手描き」という点が一番の強みだと思います。イラストだからこそできる表現の幅の広さこそが、「ぷちさんじ」やマンガ動画の醍醐味なのではないか、と。
コンテンツ運用プランナー N:そうですね。配信や切り抜き動画を観るとき、視聴者の方はライバーさんが話している内容を想像しながら観ていると思いますが、マンガ動画はその想像をイラストで視覚化し、より面白くお届けできる。それが「ぷちさんじ」の強みであり、通常の切り抜き動画にはない魅力だと思います。
うちさ:イラストにすることでエピソードの解像度がぐっと上がるんですよね。個人的にVTuberの配信はラジオに近いと感じていて。今はたくさんの方が楽しんでいますが、「ぷちさんじ」が始まった頃はどう楽しめばいいのかわからない方も多く、少し難易度が高いコンテンツだったのではないかと思います。でも、マンガ動画にすることで配信の内容が理解しやすくなりますし、実際に「こんなふうに映像を想像して楽しめばいいんだ」という感想もいただき、「『ぷちさんじ』が配信の楽しみ方を知るきっかけになれているんだな」と感じました。
短い時間の中でライバーの多面的な魅力を描く
――「ぷちさんじ」の制作の裏側についてお話を伺います。まずはNさんとSさんから、動画にするエピソード選定でのこだわりを教えてください。
コンテンツ運用プランナー N:「ぷちさんじ」はもともと横型でしたが、現在は縦型のショート動画で制作しています。ショートは尺が短いので、ストーリーがしっかり伝わるよう起承転結のわかりやすさを重視しつつ、最初から最後まで楽しんでいただくために、冒頭やラストをインパクトのある描写にするよう意識していますね。また、視聴者の方に共感していただけるかどうかも大切にしていて、皆さんに「わかる!」と思わず頷いていただけるようなエピソードを選ぶようにしています。
コンテンツ運用プランナー S:先ほどおふたりがお話しされていた通り、「ぷちさんじ」の魅力は視聴者さんの想像をイラストで補完できることだと思うので、エピソードを選ぶ際も「イラストにすることでその場面の面白さが引き立つかどうか」を意識していました。
また、手描きのマンガ動画は間口が広いコンテンツでもあるんです。実際に「ぷちさんじ」はファンの方だけでなく、にじさんじを知らない方にもたくさん観ていただいていますし、「ぷちさんじ」がきっかけで、にじさんじに興味を持ってくださる方も多くいらっしゃいます。この特徴を踏まえて、ライバーさんにまつわる知識がなくても楽しんでいただける面白い場面を選ぶことも大切にしていました。
――誰もが楽しめるようエピソードを吟味されているからこそ、にじさんじの動画シリーズという枠を超え、1つのコンテンツとして多くの方に支持されているんだなと思いました。続いて、うちささんにイラストや動画制作をするうえでのこだわりをお聞きしたいです。
うちさ:今Sさんがおっしゃった、「にじさんじを知らない方にも楽しんでいただける動画にする」という点は初期の頃から大切にしています。ただ、これには難しさもあって、にじさんじのライバーさんを知らない方が「ぷちさんじ」の動画を観たときに、表現の仕方によっては「この方はこういう性格なんだ」と特定の印象だけが強く残ってしまう場合もあるんです。だから短い時間の中でもライバーさんの多面的な魅力を描くように心がけ、そのうえで誰が観てもわかりやすく面白い動画を目指しています。
――イラストによって状況を補完できるからこその懸念もあったんですね。ちなみに、「ぷちさんじ」のクリエイターさんは動画の音入れなどもされているんですか?
うちさ:はい。でも、実は効果音付けに苦手意識があるので、ほかのクリエイターさんの動画を参考にさせていただいたり、いろんなマンガ動画を観て知識を深めたりしています。「ぷちさんじ」の動画制作に携わっているクリエイターさんは、イラストはもちろん効果音の付け方もすごく上手なので、「皆さん本当にすごいな」と思いつつ、「僕も負けないようにがんばろう!」と気を引き締めて日々の制作に臨んでいますね。
――現在たくさんのクリエイターさんとともに制作している「ぷちさんじ」ですが、うちささんは2019年11月に投稿された第1作の動画を手がけられ、長らくシリーズを支えてくださっています。そんなうちささんから見て、「ぷちさんじ」のコンテンツとしての広がりをどう感じていますか?
うちさ:めちゃくちゃありがたいなと思っています。というのも、僕が個人でにじさんじのマンガ動画をYouTubeに投稿していた当時、VTuberやにじさんじの認知度が高まっていたので、手描きの切り抜き動画もあるだろうと探してみたのですが、なかなか見つけられなくて……。それなら僕が作ろう、僕が作った動画を観た方が「自分も作ってみよう」と挑戦してほしい、と思って制作を始めました。そこからスタートして、今ではたくさんのクリエイターさんが「ぷちさんじ」の制作に加わり、たくさんのマンガ動画が投稿されている。それがとてもうれしいです。
――その思いが「ぷちさんじ」につながり、現在たくさんのクリエイターさんが動画を制作されている、と。素敵なお話ですね。「ぷちさんじ」がコンテンツとして広がっていくと同時に動画制作もアップデートされてきたのではないかと思います。その点はいかがでしょうか?
うちさ:アップデートの連続でしたね。横型の動画から縦型のショート動画に変わったこともそうですし、自分が想像していた以上に表現の幅が広がったなと思います。初期の頃は声優さんが出演しているラジオ番組の公式YouTubeチャンネルが投稿していた、かわいいキャラクターがトークに合わせて少し動き、面白い場面でインパクトのあるイラストが出てくる、といった動画を参考にしていました。それが今では動きの多いアニメーションのような動画を作るクリエイターさんもいて、「本当にクオリティが上がったな」と感じています。
クリエイターのにじさんじ愛に感動
――Nさん、Sさんが「ぷちさんじ」の制作に携わる中で印象に残っている出来事を教えてください。
コンテンツ運用プランナー N:私は「ぷちさんじ」のプロジェクトマネージャーになって初めて担当した動画での出来事が印象に残っています。実際にクリエイターさんが作ってくださった動画を観たときに、視聴者さんが配信を観て思い浮かべた映像を視覚化するのはもちろん、表現やテンポもよく「こんなに素敵な動画になるんだ」と感動しました。それはクリエイターの皆さんが、取り上げるエピソードの背景を汲み取り、ライバーさん同士の会話の流れや雰囲気も考えながら制作してくださるからこそだと思います。
コンテンツ運用プランナー S:私も「ぷちさんじ」を担当していたとき、クリエイターの皆さんがにじさんじへの愛を持って動画の制作に取り組んでくださっていると常々感じていました。日々のやり取りの中で「ライバーさんの魅力がより伝わるようにしたい」「ライバーさんのことを多くの方に知ってもらえるようにがんばります」と言ってくださる方ばかりで、本当にありがたい気持ちになったことを覚えています。
――クリエイターの皆さんそれぞれが情熱を持って、動画制作に取り組んでいるんですね。次に、「ぷちさんじ」の中で皆さんが特に印象に残っている動画を教えてください。
コンテンツ運用プランナー N:うちささんに制作いただいた壱百満天原サロメさんと樋口楓さんが登場する動画です。この動画は、サロメさんのチャンネル登録者数180万人記念で行われた逆凸配信に樋口楓さんが登場するシーンを題材にしているのですが、インパクトのある演出からスタートし、サロメさんと樋口さんのプロレスのような会話もしっかり表現されていて、ラストも面白い。お二方の仲のよさも伝わってくる動画で、観た瞬間に「すごくいい!」と思いました。
コンテンツ運用プランナー S:私は2本あって、1本目がうちささんに作っていただいた家長むぎさんの動画です。家長さんがお洋服を買いに行かれたときに、声を聞いた店員さんから仕事について尋ねられて困ってしまった……という内容なんですが、動画を観たときに「これってなんらかの声のお仕事をされていらっしゃる方も同じ悩みをお持ちなのでは?」と思って。それならと、あえて「声がかわいい人あるある⁉買い物での絶望体験」という視聴者層がより広がるようなタイトルにしたんです。その結果、いろんな方に観ていただけて、再生回数が100万回を超える人気の作品になりました。
また、動画の後半に店員さんから「(仕事は)カジュアルな服でも大丈夫なんですね」と言われた家長さんが、「『そりゃそうだろ。パジャマで幕張(メッセ)立ってるんだから』と思った」と話すシーンがあるんですが、うちささんがそのイメージをイラストで表現してくださって。イラストが入ったことでより面白いシーンになり、繰り返し観てくださっている方も多い人気の動画になりました。
コンテンツ運用プランナー S:もう1本は、三枝明那さんとミン スゥーハさんが登場する動画です。お二方が韓国語と日本語を教え合う話なんですが、さまざまな言葉が示す物や状況を図解してくださっているからこそ言葉の意味や発音がスッと頭に入ってくるんですよね。イラストの動画は何かを勉強するときにも理解しやすく、「物事をわかりやすく解説するツールとしての使い方もあるんだ」と気付きましたし、マンガ動画への新たな可能性を感じた1本でした。
うちさ:NさんとSさん、僕が作った動画を挙げてくださってありがとうございます! 自分が作った動画で印象に残っているのは、鈴原るるさんとでびでび・でびるさんが登場する「【検証】女子大生VTuberなら目潰しされても元通りになる説」という動画です。この動画のサムネイルには当時人気だった演出が採用されていて、より多くの方に観ていただけるようにとスタッフの皆さんがいろんなことを考えてくださっているのが伝わってきました。
コンテンツ運用プランナー S:サムネイルでお二方のイラスト下にある「悪魔」「女子大生」のテキストですよね。制作当時、文字を黄色の枠で囲って目立たせるデザインがマンガ動画で流行っており、それが取り入れられているなと感じます。
うちさ:そんなふうにトレンドも取り入れてくださって、本当にありがたいなと思いました。自分が制作した動画以外だと、いぬいぬのふわさんというクリエイターさんの動画には特に刺激を受けています。この方が作る「ぷちさんじ」の動画を初めて観たとき、アニメーションの作り込みがすごくて驚きました! 例えばライバーさんの口の動き。少しだけコマ数をずらし、よりリアルに見えるような作り方をされているんです。この方の動画が投稿されると必ずチェックしますし、「僕もがんばらなきゃな」と特に気合いが入りますね。
いぬいぬのふわさんをはじめ、「ぷちさんじ」の動画制作をされているクリエイターさんは素晴らしい方ばかりで、同じコンテンツの動画を一緒に作ることができてとてもうれしいなと思っています。
まだまだ進化する「ぷちさんじ」
――皆さんが考える「ぷちさんじ」の展望や今後挑戦してみたいことを教えてください。
コンテンツ運用プランナー S:個人的には、切り抜き動画と「ぷちさんじ」が融合した動画を作ってみたいと思っています。配信の切り抜きをベースに、面白いシーンになるとイラストが入るイメージですね。イラストやマンガを使った動画にはいろいろな可能性があるので、新しい見せ方に挑戦したいです。「ぷちさんじ」を展開している「にじさんじ公式切り抜きチャンネル」では、よりオリジナリティのある切り抜き動画をたくさん出していきたいので、今後もチームメンバー、そしてクリエイターの皆さんにもご協力いただき、たくさんの方に喜んでいただける動画を制作していきます。
コンテンツ運用プランナー N:そうですね。まだ内容は言えませんが、現在「ぷちさんじ」として新たな挑戦となる企画をチームメンバーと考えているので、ぜひ楽しみにお待ちいただけるとうれしいです!
うちさ:僕の場合、「ぷちさんじ」を始めた頃に思い描いていた「手描きの切り抜き動画をたくさん観られる世界」がすでに形になったので、いい意味で展望がないんです。だからこそ、今後も「ライバーさんの魅力が伝わる動画」を常に意識して、もっといいものを作れるように、真摯に取り組んでいきたいと思います。
――最後に、「ぷちさんじ」を楽しんでくださっているファンの皆さんへメッセージをお願いいたします。
コンテンツ運用プランナー N:いつも「ぷちさんじ」をご覧いただき、ありがとうございます。スタッフ一同、皆さんに喜んでいただける動画を制作し、さまざまな企画も展開していくので、今後とも「ぷちさんじ」をよろしくお願いします!
コンテンツ運用プランナー S:我々スタッフはもちろん、クリエイターの皆さんにとっても、視聴者の方が「ぷちさんじ」を楽しんでくださっていることが何よりの励みです。いつも本当にありがとうございます。個人的には、「面白くて何回も観たくなる」という感想が特にうれしくて、ニコニコしながらコメントを拝見しています! 今後も「ぷちさんじ」で気に入った動画がありましたら、是非コメントをいただけるとうれしいです。
うちさ:取材のお話をいただいたとき、改めて「ぷちさんじ」に携わってきた月日の長さを実感しました。Sさんがおっしゃったように皆さんからのコメントが励みになっていて、特に「『ぷちさんじ』の動画からこのライバーさんのファンになりました」というコメントを見るととてもうれしくなります。初期の頃から観てくださっている方が最近の動画にコメントを残してくれることもあり、長く愛していただけて本当にありがたいなと思っています。ちなみにこれは僕の願望なんですが、皆さんにもマンガ動画を作ってみてほしいな、と。是非いろんな形で「にじさんじ」と「ぷちさんじ」を楽しんでください。