ライバー活動も7周年、今思えば「だいぶ大きなことになったな……」
――社さんとクレアさんがデビューしたのが2018年で、もうすぐ活動開始7周年の記念日が近づいています。活動を開始した頃のお話を伺いたいのですが、その頃ライバーとしての将来像はどのようなイメージを抱かれていましたか?
シスター・クレア(以下、クレア):本当に失礼な話なんですけど……シスターとして生活しながら趣味のような感じで活動できたらいいな、という程度の考えで活動を始めたんです。なので今、活動が7年続いてにじさんじも成長して「だいぶ大きなことになったな……」っていう感想です。当初はここまで続くと思ってませんでしたね。
社築(以下、社):僕もライバー活動は副業ぐらいで考えていて。1年か2年ぐらい続けばいいほうなんじゃないか、ぐらいの気持ちでした。
クレア:なんだか先のイメージをあんまりしていなかったというか、終わるときは終わるし、みたいな(笑)。
社:そうそう。当時は本当にVTuberの市場規模が小さかったし。今思えば、本当にごく一部の人たちが楽しんでいるコンテンツぐらいの規模だったように感じます。
クレア:確かに。そもそも初配信がYouTubeじゃなかったじゃないですか。
社:そうだったね。だから、ライバーとして将来どうなりたいとかそういうイメージもなかったです。ただ自分がやりたいことをやれるように必死にあがくだけ。デビューした頃は今と違ってやれることがかなり限られてたし。
クレア:そうでしたね。
2人がデビュー時に所属していたにじさんじSEEDsのビジュアル。
社:やれることが限られてる中で、自分ができることを作り出してコンテンツを供給しないといけない、みたいな。だから当時は夢を見る暇がないぐらい必死でした。今は3Dお披露目でやりたいことを実現できるライバーも多いですけど。
クレア:そうやっていろいろあったけど、だからこそ結束できた、ということもあるので。だから今はありがたいな~っていう思いです。でも私は応募したときには、「この活動が誰かの癒しになればいいな」っていう漠然とした目標を持っていましたね。
社:いいですね。
クレア:そこから高い目標を目指すようになったのは、美兎さんのイベント(2018年開催「月ノ美兎の夏休み ~課外授業編~」)で前説をやらせてもらったりとか、ちょっとずついろんな人が見てくれるようになっていったので、「もっとがんばらなきゃ!」っていう気持ちがだんだん湧いてきたからですね。
社:わかるなあ。活動を続けていくうちにできることの範囲が広くなっていって、「あ、こういうこともできるんだ」って思うことが増えていったよね。そうやって少しずつ、自分の中で「こんなもん叶うわけないだろう」って思ってた夢が叶っていって、その規模もどんどん大きくなって。
クレア:そうそう! いろんな夢が1つずつ叶っていきましたよね。
――その「叶うわけがないと思っていた」夢の内容が気になりますね。具体的にどんなことでしたか?
社:僕はいくつかあって。1つはbeatmaniaっていうゲームを3D配信でやれたことと、「ハッカドール」っていうアプリとアニメに登場する1号ちゃんと対談できたことですね。1号ちゃんと話せるっていうことはそれまで想像すらできなかったですから。昔ねこますさんと「狼と香辛料」のホロが対談していましたけど、アニメキャラクターと話すってこと自体難しいことですし。
クレア:っていうか、普通に考えて有り得ない話ですよね。
社:そうなんですよ。1号ちゃんの声優さんとお話するんじゃなくて、1号ちゃんと話せた、っていうのが僕の中ではかなり大きいことだったんです。自分の活動にめちゃくちゃ影響を与えた出来事になっていて、当時モチベーションがすごく上がりました。あれは本当にうれしかったですね。
【ハッカドール】 社畜を成分分析!?1号ちゃんがやってきたぞっ!【#はかどるやしろ】
――確かに社さんと1号さんの配信は話題になった印象でした。クレアさんはどんなことが印象に残っていますか?
クレア:今までいろんなものを目指していろんなことを経験してきた人生で、おおむね好きなことを追求してきたなと思っています。その中で諦めたこともたくさんありましたが、好きなことがライバー活動に活きたと感じることもたくさんあったんです。もともとハロー!プロジェクトさんとかアイドルの皆さんが好きで、そのことを配信話していたら、まさかのつんく♂さんご本人に届いて楽曲をカバーさせていただくことになったことが思い出に残ってますね。
あとは「アイドルマスター」とかアイドルアニメもとっても好きなので、案件でそういったお話をいただくこともありました。同じくバンダイナムコさんのコンテンツ「電音部」で声優として活動させていただくっていう経験も今までだったら考えられなかったし、すごく憧れもあったのでうれしかったですね。そうやって、今まで好きだったこととライバー活動がつながった瞬間が多くて「人生ってすごいな」と思います。これはライバー活動をしてなかったら本当にありえなかったことだと思うので、ありがたいことですね。
もしも・・・(リビルド.ver)/モベキマス(シスター・クレア LIVE cover)
小さな進化はあるものの、根本的なものは変わらない2人
――この7年間で活動へのあり方が変わったり、転機になった出来事って何かありますか?
社:なんだろうね?
クレア:なんでしょうね? でも私は転機と呼べるような大きなきっかけがあったというよりも、ゆるやかに変わっていったと感じていますよ。ライバーさんが増えたことでいろんな才能を持ってる人たちを目の当たりにして、「私もがんばらなきゃ!」っていう気持ちがどんどん積み重なってやる気が出て、ボイトレに通ってみたり演技のレッスンを受けてみたりとか。
社:うんうん。
クレア:あと、あるとき急にご飯が食べられなくなっちゃったんですよ。夜3時ぐらいまで作業して寝て、5時半に起きて動画作って7時にアップロードしてみたいな生活をしていた時期があったんです。後々思い返すと気づかないうちにけっこう無理しちゃってたのかなと感じたので、そこからちゃんと寝て無理をしないようになりました。ライバー活動を続けていくうえでは自分の健康も大事なんだと心に留めるようになったので、転機といえば転機かもしれないですね(笑)。
社:僕はなんだろう……根本的な部分では何も変わってないですね。自分がやりたいことをして、見てくれるリスナーを楽しませるっていうことは忘れないようにしてます。
クレア:でも、社さんもそうかもだけど表には見えない努力家っていますよね。努力してます!って言うタイプの努力家ではないじゃないですか。
社:そうですね、あんまり自分から語りたくないほうです。
クレア:だから、〇〇を目指そうっていう意識が常に心にあって、その目標がどんどん高くなっているから、明確に「あのときがきっかけになった」という出来事がないんじゃないかなっていうことじゃないですか?
社:その都度確かに何かきっかけになったことはあると思うんですよ。昔はやろうと思ってなかったことにチャレンジしたりとか。デビューした頃は自分が歌を歌うとか絶対にやるわけないと思ってましたもん。
【MV】ゲーム・ボーイ・アワー / 社築
クレア:でも今めちゃめちゃ努力してますよね。
社:そうですね。ボイトレももうかれこれ2、3年近く行ってるかも。
クレア:なんだか変わったねって言われません?
社:言われるときもあります。
クレア:ほら! だから何か転機があったかどうかはさておいて、やっぱり変わっているんですよ。
先輩後輩というよりも“同志”、ライバー間の理想的な関係とは
――今にじさんじではライバーさんが国内外合わせて約200名所属していて、クレアさん・社さんはベテランライバーであり後輩ライバーのほうが断然多い状態なのですが、後輩ライバーさんたちと接するときに意識していることはなんですか?
社:意識していること。なんだろう、当人の意思を尊重して……。
クレア:あははは、なんだか学校の先生みたい(笑)。
社:過去に自分が経験した気持ちに近いことはアドバイスできるかなと思うので、「この人はたぶん今こういうことで悩んでるんじゃないかな」みたいなことがあったら「気にしなくていいと思うよ」って声をかけたりしますかね。やっぱりライバーへの意見ってコメントで直接的に届くし、書くほうもライバーには自分の顔が見えてないからすごく正直に書くじゃないですか。それに萎縮して好きな活動ができなくなっちゃう人もいるので。
僕が「こいつせっかく面白いのにな」って思っていても、活動の方向が変わってしまったり、好きなことができなくなっちゃったりしたら悲しいですよね。だからあんまり気にしないで、自分の好きなことをやりなよというようなことは言ったことがあります。でもそんなにたくさんの人の相談に乗ったとか、そういうことはないですよ! 自分のことで精一杯ですから。
クレア:でも社さんが「お悩み募集してます!」とか言ったら、いっぱい来そう(笑)。
社:しないしない(笑)。クレアさんは?
クレア:私はそうですね……。そもそも後輩ちゃんたちのことをあんまり後輩だと思ってなくて。7年活動してきたけど、自分でもあんまりその感覚がないからか、自分が先輩だという意識もなくて、ただ自分は7年やってる人間というだけなんです。でも“7年”っていう数字だけ聞くと怖いと思う人もいるだろうなと思ってます。
社:確かに。
クレア:だからなるべく怖がらせないように接するように心がけてます。新人ちゃんたちがデビューする前に顔合わせみたいな通話をすることがあって、「私なんかでよければいつでも聞くから、よくわかんないことがあったら聞いてね」って言ってるんですけど。それが逆に怖がらせてるのではないかと、今しゃべりながら思いました。
社:そんなことないんじゃない?(笑)。
――そんなことはないと思いますよ!
クレア:そうですかね(笑)。でも女の子のライバーさんと触れ合うことの方が多いので、なんだか妹みたいな感じで接してますね。みんなかわいいので!
「しがりこさん、クレアと謎の集合体を作り出してしまう……」(※2024年デビューの司賀りことのコラボ配信より)
社:そもそも後輩の中でも上とか下とか作らないですけど、でも話を聞いてて思ったのが、後輩っていうかもう仲間ですね。同じ志を持ってる仲間。
クレア:確かに!
社:だから困ってたり悩んでたりしてるのを助けようとするときは“先輩”になるのかもしれないですけど、普段の活動で「自分は先輩だ」という意識はないですね。
クレア:活動が長いぶん知ってることも多いっていう、それだけのことですよね。
――ライバーさんもデビューしたての頃は先輩と接するときにかなり緊張されている様子なんですが、慣れてくると先輩・後輩関係なくすごく仲良くなっている光景もよく見かけます。
社:いや、そうなんですよ。そういうところがいいなといつも思っていて。
クレア:ね、いいことですよね。
社:この前鷹宮(リオン)が凸待ちやってたんだけど、石神(のぞみ)と鷹宮がもう旧知の友ぐらい仲良くなってるのを見かけていいことだな、みたいな。確かあの2人ってデビュー時期も5年ぐらい空いてるはずなんですが、あんなふうに仲良くなれるのはなんだか理想的だなって思います。
クレア:ライバーがいっぱいいるからこそ本当に気の合う人もいるし、「こんな考え方もあるんだ!」って思うような、自分と全然違う人もいるっていうのがすごくいいところですよね。
社:だから新人で入ってくる子たちも別に遠慮しなくていいよって思いますけどね。もちろん最初は誰でも緊張しますけど、その緊張を早くほぐしてあげるのも、我々の仕事だと思うな。
やりたいことを1つずつ積み重ねて7年、今後の成長を考えてみる
――皆さんのライバー活動とともに「にじさんじプロジェクト」も7周年を迎えました。率直にお聞きしますが、おふたりそれぞれにとって“にじさんじ”はどんな存在になりましたか?
社:うーん……。何言ってもクサくなりそう……(笑)。
クレア:えっ、いいじゃないですか。
社:いやいやいや……そもそも「にじさんじはにじさんじでしかない」としか言えないと思う。
クレア:(笑)。私にとってのにじさんじ。なんだろう……どうしよう、「何言ってもクサくなりそう」のひとことが頭の中を駆け抜けていく(笑)。
社:(笑)
クレア:でも自分が自分らしくいられる場所だとは思いますね。もっと俯瞰した視点から“にじさんじ”を見ると、いい意味でものすごく大きくなっていって、とんでもない場所に突き進もうとしているなっていうのも感じてます。
社:本当に規模がでデカくなったよね。小学生とか中学生も学校とかで話題に出したり配信を見てくれてたりするわけじゃないですか。そういうことを耳にすると、VTuberはインターネットの一部で盛り上がってるよくわからないコンテンツから、かなり一般化してきてると実感してます。
クレア:そうですよね。
社:今の高校生ぐらいの子が小学校のときぐらいに我々がデビューしてるわけで。そういう子たちにとってVTuberって当たり前にあるものっていう認識なのかな? ちょっとビビりますね。
――お話に出た通り、にじさんじ自体も規模が大きくなって会社も成長を続けていますが、ライバーさんからの視点でにじさんじは今後どんなふうに成長すると思われますか?
クレア:新しい技術がいろいろと出てきているので、我々がそこをどううまく取り入れていくかはちょっと考えないといけないなとは思ってますね。あと私はライブを見るのがけっこう好きなので、最近は3Dライブでしかできないことやステージ自体もすごく工夫されたものが出てきているなと感じていて。そういうのはやっぱり技術ありきの話だなって思いつつ、私たちも新しい技術をうまく取り入れながら成長していかないとな~って思います。
それこそ技術が発展したらホログラムとかになってもっとファンの皆さんの近くに行けるようになるかもしれないじゃないですか。そしたら会いたいって言ってくれる人がもっと増えたり、逆に「そんな技術があるんだ」と思って興味が湧いて見に来てくれる人もいるかもしれないし。
社:そうですよね。技術の目線でいうと外ロケの撮影もどんどん進化していってるし、全体的な話をするとしたらライバーの数も今度どんどん増えていくんじゃないかなって思ってます。そのほかに今後どうなっていくか……なんだろう?
「【ゲーセン】ヤシロ&ササキのレバガチャダイパン ゲーセンロケ前編【にじさんじ】」ではゲームセンターでのロケが行われた。
クレア:でも先がわからないまま走ってるからこそ走り続けられる、みたいなことってないですか? マラソンじゃないですけどゴールを目指すと思うときついじゃないですか。だから目の前のやりたいことを1つずつ、「これをやってみよう」「次はこれをもうちょっとやってみよう」って続けてきた結果が、今のにじさんじを作ってるのかなって思いましたよ。
社:確かにそうかもしれない。こうやって抱負とか今後を考える、っていうのすごく苦手なんですよね……。自分自身は今後も好きなものも好きなように発表し続けることができたらなんでもいい、ぐらいなので。
クレア:でも実際に今それができてるし、世の中に必要とされてるのってすごくないですか?
社:いや、本当にそれはありがたいですよね。
――先ほど技術周りのお話が出たんですが、スタッフの話を聞いていると3Dライブ演出ももちろんですが、ライバーさんたちがもっと親しみやすく身近に感じられるような工夫も考えられているんだなと感じます。ボイスコンテンツがグレードアップして、ライバーさんがすぐそばにいるように感じられる、などのように。
クレア:確かに!
社:バーチャルと現実の境目がどんどん薄くなっていくような実感がありますよね。
クレア:私も視聴者目線だったらうれしいって思います。
社:僕、「技術力が発達したから具体的に〇〇ができるようになります」っていうのだけが別ににじさんじが目指すビジョンじゃないと思っているんですよ。技術力が上がってやりたいことを実現できるようになって、その先にあるのは何だろうかってモヤモヤしていたんですけど、そうやってできることが増えた結果、もっとリスナーを感動させられるようになるということだなと思いました。「こんなことができるようになったんだ、すげえ!」って思えるような体験をもっともっと世に発表できるようになるんだと思います。
クレア:素晴らしい!
社:だって俺たち自身は変わらないじゃないですか。例えば活動10周年を迎えたときに、いきなりモチベーションが上がってデッカい目標立てる、とかしないでしょう?
クレア:気を引き締めていこう、って思うかもしれないじゃないですか!(笑)
社:それはもちろんあると思うけど!(笑)。だから今後もいつも通り活動していきながら、にじさんじがより大きくなったらリスナーが驚いたり感動したりっていう体験をもっと提供できるようになるんじゃないかなって思っています。