ワンチームで挑んだ「にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!」
――始めに、皆さんの普段の業務内容と「にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!」(以下、7周年ツアー)での役割を教えてください。
イベントディレクター N:主な業務内容はイベントの進行管理です。イベントプランナーが考えた企画や、開催までの準備・進行を確認しながら、円滑に進むように調整しています。7周年ツアーでは、ツアー全体と各公演のディレクション業務に加え、東京公演のイベントプランナーも担当しました。
テクニカルアドバイザー K:僕は3D演出周りのディレクションを担当しています。具体的には、3Dのリアルイベントをする際にイベントプランナーやライバーさんなどから演出の要望を聞き、実現する方法を検討したり、スタジオスタッフに説明するためにわかりやすく整理したりする作業で、今回のツアーでも役割は同じですね。
3Dスタジオディレクター M:普段は3Dスタジオで行われる番組収録や配信などの進行管理と、技術面での演出などがメインです。また、Kさん同様3Dでやりたい演出をどう実現するか考えて整理する作業も業務の1つですね。
7周年ツアーでは、演出を実現するうえでの具体的な動きをライバーさん側へ説明したり、現地でイベントの進行をしたりといった業務を担当しました。また、ツアー以前のイベントでは、イベントプランナーやライバーさんが考えた演出をいかに実現させるかがスタジオ部の役割でしたが、今回のツアーではこれまでよりも一歩踏み込んで、いただいた要望に対してのアイデアを出させていただいたんです。
イベントディレクター N:我々の役割を簡単にまとめると、私が7周年ツアー全体の担当者、Mさんが技術者として3Dのイベントを実現する方、そしてKさんが私たちの間に入って“通訳”をしてくれる方というイメージです。
――わかりやすく説明してくださってありがとうございます。それぞれの業務についてお聞きしたところで、Nさん、Kさんが所属されているイベント部、Mさんが所属されているスタジオ部が今回ツアーでどのような役割を担っていたのかもご説明いただけますか?
イベントディレクター N:ツアーの企画を立ててスケジュールを考え、イベント実施に向けてさまざまな調整をするのがイベント部の役割です。3Dとして再現する技術的な部分はスタジオ部が、それ以外はほぼイベント部が担当しています。
3Dスタジオディレクター M:確かに技術的な部分はスタジオ部の担当なんですが、イベント部と連携をとって一緒に考えることがほとんどなんですよね。だから役割が分かれているようで、実際には共同作業だったと思います。
テクニカルアドバイザー K:例えるなら、7周年ツアーという船に全員で乗って、イベント部が行きたい方向を示し、スタジオ部とともに船を漕ぐ。そんなイメージですね。
7周年の節目に、にじさんじの歴史を振り返る
――7周年ツアーはにじさんじ史上最大規模のツアーで、日本だけでなく海外での公演も行われました。全9公演、約9カ月間にわたるツアーを終えられた今の率直なお気持ちをお聞かせください。
3Dスタジオディレクター M:僕がこれまで携わったことのあるツアーは一番多くて3公演までだったので、初めて7周年ツアーの話を聞いたときは、「9公演もやりきれるかな……」と少し不安があったんです。でも最後までしっかり走りきれましたし、終わった後はめちゃくちゃ達成感がありました。長いようであっという間の9カ月間でしたね。
テクニカルアドバイザー K:僕もMさんと同じように、最初に話を聞いたときは「本当にやれるかな」という不安があったので、最後の東京公演が無事に終わったときは感慨深かったですね。そして被っていた帽子をとってステージに頭を下げたんです。「お疲れ様でした!」って(笑)。
全員:(笑)
テクニカルアドバイザー K:また、各公演を新鮮な気持ちで楽しんでいただけるように、いろいろ演出に挑戦したので、技術面でも得られるものがあったなと思っています。
――なるほど。Nさんはいかがでしょうか?
イベントディレクター N:一般的なツアーは同じメンバー、同じ内容で全国を回るのが基本なんですが、にじさんじのツアーは公演ごとにどちらも変わることが多いので、ツアーが終わったというよりも9本のライブが終わったという気持ちでしたね。「『Virtual to LIVE』と『Arc goes oN』をセットリストに入れる」という共通事項は設けていましたが、公演ごとにライバーさんや楽曲、テイストが変わるからこそ個性があったし、全公演を観たいと思ってくださった方、そして実際に観てくださった方もいると思います。
また、実は7周年ツアーには「7周年のタイミングでこれまでを振り返る」というテーマもあったんです。これまで、イベントを開催するときには新しいものや進化を追い求めてきたんですが、今回は唯一過去を振り返ったライブでした。
そのテーマが根幹にあったので、過去ににじさんじが行ったライブを彷彿とさせるような要素を随所に取り入れています。例えば、ツアータイトルとハッシュタグは「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!」をベースにしていますし、「にじさんじ WORLD TOUR 2025 Singin’ in the Rainbow!Encore」のキービジュアルも「Shout in the Rainbow!」のキービジュアルをオマージュしているんです。
たくさんの思いで紡がれた「Virtual to LIVE」
――7周年ツアーの中で皆さんが印象に残っているパフォーマンスや景色はありますか?
3Dスタジオディレクター M:名古屋公演で長尾景さんがカバーした「懺悔参り」ですね。あの曲では、長尾さんが持っている剣から炎が出る演出があったんですけど、あれは2024年に開催したVΔLZのライブツアー「VΔLZ LIVE TOUR 2024『三華の樂』」で作ったものなんです。それを踏まえて、長尾さんが「あの炎を出すのはどうですか?」と提案してくださり、取り入れることになりました。この炎の演出は「懺悔参り」だけでなく、(長尾、小清水透によるカバー曲)「ロウワー」でも使っています。
全公演を通して、ライバーの皆さんが素晴らしいパフォーマンスを披露してくださいましたし、演出も含めて心に残るシーンばかりでした。イベントプランナーさんやライバーさんのアイデアも光っていたな、と思いますね。
テクニカルアドバイザー K:僕も全公演の1曲1曲に思い入れがあるんですが、強いて挙げるなら福岡公演の(夢追翔、不破湊、オリバー・エバンス、倉持めるとによるカバー曲)「ファイアダンス」ですね。
イベントディレクター N:この曲は名古屋公演でも披露されていますが、福岡公演では炎がステージに広がる演出があったんです。それを制作したのがKさんなんですよ。
テクニカルアドバイザー K:そうなんです。この炎の演出はAR(※)を使って表現しており、神戸公演の(レヴィ・エリファによるカバー曲)「Tot Musica」でレヴィさんが黒い球体に覆われる場面や、東京公演の(家長むぎ、夕陽リリによるカバー曲)「ロウワー」で花畑が広がる場面にもARを取り入れています。「少しずつ演出を客席に近づけたい」という考えから生まれたもので、実際にお客さん側からどう見えるのかを考えつつ、技術面の専門チームなどに相談して実現する方法を模索しました。
※→Augmented Reality(オーグメンテッド リアリティ)の略。現実世界に3Dモデルや画像、文字などを重ねて表示する技術。
福岡公演の「ファイアダンス」はこのツアーにおけるAR演出の中間地点でしたし、同じ曲でも公演ごとに異なる見せ方をしたいという個人的な思いも実現できたので、特に印象に残っています。
テクニカルアドバイザー K:また、僕は海外でのライブに参加するのが初めてだったので、現地で感じたファンの方の熱量も印象的でした。海外公演でもお客さんがペンライトを持参して、ライバーさんのカラーや照明の色に合わせて光らせてくれたんです。海外公演は特にファンの方と一緒にライブを盛り上げている感覚が強かったですし、その熱気を肌で感じられたことがうれしかったですね。
イベントディレクター N:私は地方公演でお客さんの熱量を感じられたのがうれしかったです。地方の会場だとステージ上のライバーさんはもちろん、スタッフとお客さんの距離も近いケースが多かったので、皆さんが楽しんでいる様子を間近で見ることができました。ライブ前に街でにじぱぺっとを持っている方を見かけて「これからにじさんじのライブに行くのかな」と思ったり、帰りの新幹線でライブに参加してくださったお客さんを目にしたりなど、“地域レベルのにじフェス”のような雰囲気を感じたんですよね。その光景やお客さんとの近さは今回のツアーならではだったと思います。
――会場によって見られる景色や空気感が違うんですね。ほかにも印象に残っている楽曲などがあればお聞きしたいです。
3Dスタジオディレクター M:Nさんがプランナーを担当した東京公演はエモいパフォーマンスが多くてよかったです!
イベントディレクター N:ちなみに、「『Virtual to LIVE』は2Dの姿からスタートしたらどうか」と提案したのはMさんなんですよ。
3Dスタジオディレクター M:実はそうなんです(笑)。「Virtual to LIVE」がリリースされた頃は、にじさんじに3Dモデルが導入され始めた時期だったので、MVはまだ2Dで制作されているんですよね。東京公演はこのツアーのラストですし、リリース時の歌唱メンバーもいるので、昔からにじさんじを応援してくれている方たちに喜んでいただけるかもとひらめき、「これまでの歴史をたどるような演出や3Dお披露目のような見せ方はどうですか?」と提案したんです。
イベントディレクター N:その後、別のスタッフが「スマホの中からライバーさんが飛び出してくるのはどうか」と提案してくれて、それを3Dチームのモデラーさんが形にしてくれました。そんなふうにいろんな人の思いが紡がれた結果、あの演出が実現したんです。「これが『Virtual to LIVE』の集大成」と言えるくらいのパフォーマンスを作り上げられたと思っていますし、そのために自分ができる最大限の力を尽くしたと思っています。
テクニカルアドバイザー K:全公演、全楽曲にたくさんの方の思いが詰まっているんですけど、東京公演の「Virtual to LIVE」はツアーの最後を飾る曲なので、皆さんの思い入れも一際強いのではないかと思います。
――7周年ツアーの締めに相応しい、感動的なパフォーマンスでした。ライブ本番以外で印象的だったこともお聞きしたいです。
3Dスタジオディレクター M:仙台公演に出演された山神カルタさんが、本番前に感極まって涙を流されていたのが印象に残っています。今回のツアーで初めてにじさんじ全体のライブに出演するライバーさんの中には、大きな舞台に立つことを夢見て活動してきた方もいらっしゃったと思うんです。山神さんもにじさんじ全体のライブへの出演を目標にされていたので、涙を流している姿を見たときに、「本当によかった」と僕もうれしくなりました。

「にじさんじ WORLD TOUR」直前インタビュー 山神カルタが念願の大舞台へと羽ばたく
――練習から本番までの姿を近くで見てきたからこその喜びですよね。
3Dスタジオディレクター M:そうですね。練習のとき、ダンスや歌が思うようにできず悩んでいるライバーさんもいましたが、諦めずに練習を重ね、本番で素晴らしいパフォーマンスを披露する姿に感動しました。
圧巻の歌唱、見どころ満載の集合パフォーマンス……スタッフが語る注目ポイント
――続いて、これからEncore公演やBlu-rayで7周年ツアーを観てくださる方がたくさんいらっしゃいますので、「ここを見返してほしい!」という注目ポイントを教えてください。
テクニカルアドバイザー K:広島公演でセラフ・ダズルガーデンさんが披露した「BANDAGE」ですね。今回のツアーの中で、1名のライバーさんが複数人のダンサーさんとフォーメーションダンスをした曲って少ないと思うんですけど、その中でもセラフさんのパフォーマンスは印象に残っています。カメラワークで見せる表情や動きもめちゃくちゃカッコよかったので、是非見返してほしいです。
テクニカルアドバイザー K:あともう1つ、レヴィさんの「Tot Musica」にも注目していただきたいです。レヴィさんがステージを去った後、会場が一瞬静かになり、少しずつ拍手が大きくなっていく……という光景が広がって、お客さんがレヴィさんのパフォーマンスに引き込まれていたのが伝わってきました。なかなか見ることのない光景だったこともあり、すごく印象に残っていますね。
3Dスタジオディレクター M:僕は広島公演のメンバー全員で披露した「ヨナガオルケスタ」です。「ショー」をコンセプトにしたキービジュアルの通り、1曲目からお客さんをイベントの世界観に引き込んでいて素晴らしかったですし、特にジョー・力一さんが「レディース・アンド・ジェントルメン!」と挨拶をして、ライバーさんを1名ずつ紹介していくパフォーマンスがまさにショーの始まりのようで印象的でした。しかも、あのパフォーマンスはほとんどライバーさんからの提案で決まったものなので、それもすごいなと思っています。
メンバー全員で披露する曲は、現地・配信どちらでご覧になってもライバーさん全員の表情や動きを見ることは難しいと思うんです。だからもう一度見返してみると、「このライバーさん、このときこんなふうに動いていたんだ」という気付きがあると思います。実はステージの小物などにもこだわっているので、是非いろんなところに目を向けていただけたらうれしいですね。
イベントディレクター N:東京公演のイベントプランナーとしては、メドレーの「にじさんじ組曲」に注目してほしいです。準備から本番のステージまで、ライバーさんもスタッフも本当にがんばったなと思っています。それと同時に「とんでもないものが生まれてしまった」とも思っているのですが(笑)。ライバーさんの歌唱やダンス、スクリーンの映像など見どころが多い曲なので、是非何度でも楽しんでいただきたいです。
3Dスタジオディレクター M:「にじさんじ組曲」は映像や演出ももちろんよかったんですけど、何よりライバーさんたちがパフォーマンスで魅せたことが素晴らしかったですよね。
イベントディレクター N:ライバーさんはほぼステージに出続けていて、原曲に振り付けがある曲はすべて踊っていましたからね。ちなみに「振り付けがある曲はすべて踊る」というのはライバーさんからの提案だったんです。すごくご負担をおかけすることなので不安はありましたが、それをやりきる技量と根性がライバーさんたちにあったからこそ、あれほどの完成度になりましたし、楽しい曲になったと思います。
3Dスタジオディレクター M:元1期生・元2期生・EXゲーマーズと長く活動されているライバーさんたちが、にじさんじ初期の曲から最近の曲までを歌っていることにも胸が熱くなりますよね!
テクニカルアドバイザー K:僕は客席に近い場所にいたのでお客さんの様子が見えたんですけど、涙を流している方がたくさんいました。
3Dスタジオディレクター M:ファンの皆さんのそういう姿を見ると、「がんばってよかった」と思いますよね。
イベントディレクター N:もちろん東京公演に限らず、どの公演でも涙を流してくれている方がたくさんいましたし、ファンの皆さんがすごく盛り上がってくださってうれしかったです。
7周年ツアーは「挑戦」「成長」「個性」
――皆さんにとって7周年ツアーはどんなツアーになりましたか?
テクニカルアドバイザー K:一言で言うなら「挑戦」ですね。これまでのイベントでは、別の方が3D演出のディレクションをメインで担当していましたが、7周年ツアーでは僕がその役割を引き継いだんです。自分がメイン担当になるのは今回のツアーが初めてだったので、「にじさんじらしいライブってなんだろう」という根本的な部分を考えるきっかけになりましたし、そのこと自体が僕にとっては挑戦でした。
3Dスタジオディレクター M:僕は、技術の成長を感じたツアーになったと思っています。今回のツアーでは手動で対応していた作業を自動化でき、これまで技術的に難しかったことが可能になったんです。イベントプランナーやライバーさんの要望に応えるため、さまざまな試行錯誤をしたことで大きく成長しましたし、これまでを振り返ることもできたツアーになったと思います。
イベントディレクター N:私にとっては、ライバーさんとスタッフの個性を再認識するツアーになりました。ライバーさんがやりたいことや表現したいもの、スタッフそれぞれのライブの捉え方や見せ方が本当にさまざまで、まさに十人十色だったんです。皆さんの意見を聞くたびに「そういう考えもあったのか」「そんな方法もあるのか」と新たな発見の連続でしたね。
――ライバーさんのパフォーマンス、キービジュアルやステージ演出に至るまで、個性溢れるツアーでした。
イベントディレクター N:ツアーを通してスタッフはほぼ同じメンバーでしたが、こんなに違いが出るのかと思うくらい、それぞれの公演で個性があったと思います。それに、「同じ楽曲をセットリストに入れる」というツアーとして共通の部分があったからこそ、個性が際立つライブプロジェクトになったと感じていますね。
テクニカルアドバイザー K:公演が終わった瞬間、どの公演でも担当のイベントプランナーが号泣していましたよね。
イベントディレクター N:大号泣でした! ライバーさんだけでなくイベントプランナーも、自分のアイデアや個性を出し切ったんですよね。1人ひとりが「絶対にいいライブにしたい」という熱意を持って、切磋琢磨しながら取り組んでいました。
――スタッフの皆さんがご自分の力を最大限に発揮して、1つひとつのライブを作り上げていったんだなと感じました。それでは最後に、7周年ツアーをご覧いただいた皆様、そしてこれからEncore公演にお越しくださる皆様へメッセージをお願いします。
テクニカルアドバイザー K:7周年ツアーをご覧いただき、ありがとうございました。Encore公演はもう1つの集大成だと思っているので、ライバーさんのパフォーマンスを思う存分楽しんでいただきたいです。もし余裕があれば、演出の細かい部分やライバーさんのふとした表情などにも注目していただけると、新たな発見があるのではないかと思います。是非、各公演のいろいろな部分に注目しながらお楽しみください。
3Dスタジオディレクター M:ライバーさんと我々スタッフが考え、力を尽くして作り上げたライブを、ファンの皆さんが楽しんでくださってうれしかったですし、本当にありがたかったです! 皆さんがSNSに投稿してくださる感想も励みになっていました。ライブの臨場感を味わえるのは会場で見るからこその醍醐味なので、Encore公演も楽しんでいただければと思います。
イベントディレクター N:7周年ツアーをご観覧いただき、楽しんでいただいた皆さん、ありがとうございました。にじさんじ全体のライブかつ公演数も多かったので、普段よりも多くの方の心にお邪魔させていただき、思い出を作ることができたんじゃないかなと思っています。我々スタッフにとっても思い出深いプロジェクトになりましたし、にじさんじのライブの歴史においても大きな節目になりました。ライバーさんやスタッフがこのツアーにかけた思い、そしてファンの方々への感謝がたくさんの方に届いていたらうれしいなと思っております。
そしてEncore公演では、各公演ごとの雰囲気やいろいろなライバーさんのパフォーマンスを楽しんでいただけたらうれしいです。是非新たな魅力を見つけてみてください。