各分野のプロが担う専門的な役割
――本日はライバーアートチーム、2D進行チーム、Live2Dチームの皆さんに集まっていただきました。それぞれの仕事内容と、皆さんが普段担当されている業務について簡単に教えてください。
イラストレーター OMI(以下、イラストレーター O):ライバーアートチームの普段の業務としては、新人ライバーさんのお仕立てや、すべてのライバーさんを対象とした新衣装にまつわるアート周りの監修と制作を行っています。ほかにもイベントのキービジュアルの監修や社外の作家さんに納品いただいた素材の調整業務も担当しています。私個人としてもそういった作業を一通りやりつつ、ライバーアートチームのサブリーダーも務めているので、メンバーのサポートなどもしていますね。
――いつもデザイン部に依頼しているANYCOLOR MAGAZINE(以下、エニマガ)のカバーアートを監修いただいているのも、ライバーアートチームになるのでしょうか?
イラストレーター O:はい、エニマガのカバーアートのチェックもさせていただいています。
2D進行管理 U:Oさんがお仕立てしたライバーさんで言うと、クララ(クララ チャームウッド)さんですよね?
イラストレーター O:そうなんです。クララさんのお仕立てを担当させていただきました!
――そうなんですね! お仕立てのお話なども後ほど詳しくお伺いできればと思います。では続いて、2D進行チームとLive2Dチームのお仕事内容についてお話しいただけますでしょうか?
2D進行マネージャー S:2D進行チームは、主に自社のLive2D制作に関する進行管理を担当しています。新人ライバーさんのお仕立てや新衣装に関する業務がメインになりますね。あとは新人ライバーさんのデビューの際に制作するキービジュアルや宣材写真、グッズ等に使用されるキービジュアルの進行管理等も担当しています。
個人としての業務については、私はここにいる皆さんよりも入社歴が浅いのですが、チームマネージャーをさせていただいております。今回、2D進行チームだけ、私とUさんの2人でこの座談会に参加しているのは、私が主に新人デビューライバーさん周りのお仕事を担当しているためですね。新人ライバーさんのお仕立てについての監修会を取り仕切りつつ、デビューに向けた進行管理をさせていただいています。
2D進行管理 U:Sさんは全体を取り仕切るポジションですが、私は実務担当です!「新しいライバーさんのデビューが決まったよ!」「新しい衣装を作るよ!」となったら、担当していただく作家さんの選定やご依頼を進めながら、現場で進行を回していく役割ですね。その流れで、上がってきたビジュアルをOさんのチームへ監修に出したり、IさんのチームへLive2Dの制作についてのご連絡をしたりと、本当に“ザ・進行管理”という動きをしています。
Live2Dアートディレクター I:Live2Dチームは簡単に言うと、ライバーアートチームさんが整えてくださったビジュアルをもとに、2Dの姿で活動していただくためのサポート作業をしています。新人ライバーさんや新衣装、より豊かな表情をお届けする「3.0 Brushup!!」の対応が主な業務です。そのほか、時々ある案件として、グッズや広告用のアニメーション制作なども担当しています! 個人の業務としては、自分でLive2Dのお仕立てをすることもありますが、主軸となるのは監修周りの対応になりますね。
円滑な制作を支えるチームワークの仕組み
――ライバーさんのデビューに向けたお仕立ては、どのような流れで進んでいくのでしょうか? 各チームはどのように連携されているのか、教えていただきたいです。
2D進行管理 U:まず、ライバーさんの持つ個性やプロデュースチームが描くビジョンをもとに、2D進行チームが作家さんにビジュアル化をご相談します。その後、2D進行チームが作家さんに発注し、仕上げていただいたビジュアルをライバーアートチームが監修して、OKが出たらLive2Dの実装に進む、という流れですね!
2D進行マネージャー S:作家さんに提出いただいたビジュアルは、そのたびにライバーアートチームでチェックしていただきつつ、プロデュースチーム、テクニカルクリエイティブチーム、デザイン部の3部門でも監修を行っています。現在はトータルで20人近いメンバーで監修を進める形ですね。
――それぞれ監修する視点が異なると、それだけの人数が必要になるのですね。
2D進行マネージャー S:そうですね。ライバーさん本人の個性や魅力が最大限に引き出せているかという視点ではプロデューサー陣、Live2Dなどに関する技術面はテクニカルクリエイティブチームやLive2Dアートディレクター、そしてライバーさんのビジュアルに関するクオリティ面はデザイン部の領域になります。それぞれの意見をすり合わせながら、慎重にお仕立ては進んでいきます。
ここにいるチーム間の連携で言うと、2D進行チームが間に入り、作家さん、ライバーさん、ライバーアートチーム、Live2Dチームをつなぎながら全体を回しています。また、ライバーアートチームとLive2Dチーム間でも、配信上でライバーさんがより自然に、自分らしく動けるようなLive2D表現のサポートを行っています。
2D進行管理 U:でも、もともとはモデラーさんが進行も兼任していたんですよね。私が入社する前は、モデラーさんが作家さんに打診して、ビジュアルを受け取ってそのままLive2Dをお仕立てさせていただく……という進行管理兼モデラーのような感じでした。
Live2Dアートディレクター I:懐かしい時代ですね(笑)。
2D進行管理 U:求められるクオリティや納期管理の観点などから業務の細分化が進み、それぞれに専門の担当を立てていく体制になりましたよね。
――今の体制が、皆さんにとってもベストな連携方法になっているのでしょうか?
一同:(うなずく)
2D進行マネージャー S:各分野のプロフェッショナルが分業できる今の状態は、いろんなスタッフにとってやりやすいと思います。
2D進行管理 U:ストレスなく作業できてやりやすいです!
ライバーの思いを形にするための、妥協なきクオリティ追求
――ライバーさんのお仕立てや新衣装の制作にあたり、特に大切にしている要素や時間をかけて検討している部分はどこですか?
2D進行管理 U:私が新人デビューで特に重視しているのは、作家さんとの密なすり合わせですね。衣装の制作などに比べてもプロジェクトが長期にわたりますし、大きなプレッシャーを感じられる作家さんもいらっしゃいます。初めてご一緒する方はもちろん、継続的にお付き合いのある方であっても、お互いのイメージを丁寧にすり合わせながら、安心して制作に集中していただける環境づくりを心がけています。
2D進行マネージャー S:弊社は多くのライバーさんに所属していただいているので、皆さんそれぞれの個性をデザイン面でも表現していく、というところはこだわっています。先ほどお話した監修会では、本当に多角的な観点で議論して、あらゆる方法でライバーさんの魅力を伝えるための話し合いをしています。例えば、最近では社会情勢にアンテナを張って判断する難しさもありますね。
2D進行管理 U:新衣装に関しては「ライバーさんが作りたいもの」という側面が強いため、ライバーさんのご希望をしっかりと理解することにめちゃくちゃ時間をかけています。
2D進行マネージャー S:新衣装制作はライバーさんとのコミュニケーションも重視している部分ですよね。
2D進行管理 U:そうですね! ライバーさんに「どんなデザインの衣装を着たいか」だけでなく、「その衣装を通して、ファンの方々にどんな新しい自分を見せたいか」という思いまで深くお伺いするようにしているんです。衣装のお渡しをゴールにせず、お披露目配信やその先まで見据えて、ライバーさんからのご希望をしっかりと把握しようとしているので、いつも時間がかかってしまって(笑)。
2D進行マネージャー S:大丈夫ですよ! それでもUさんは担当している案件数に対して、対応がめちゃくちゃ早いですから!
――作家さんとのコミュニケーションを大切にしているとのことですが、こうしてインタビューをさせていただいていても、Uさんはとても親しみやすい印象を受けました。
2D進行管理 U:ありがとうございます(笑)。チーム内のコミュニケーションについても、文面だけのやり取りだとどうしても硬くなってしまうので、朝会や打ち合わせなどで雑談の時間を作ってコミュニケーションを円滑にする工夫もしていますよね。
2D進行マネージャー S:今日もみんなで雑談をしましたよね(笑)。
――それではライバーアートチームのこだわっていることや時間をかけて検討している部分を教えてください。
イラストレーター O:新人ライバーさんに関しては、最近はグループデビューが多いので、グループとして並んだときの統一感は意識してお仕立てしていますね。ほかにもあらゆる観点でチェックを行い、プロデューサーさんにも確認いただきながら方向性を固めます。
衣装のデザインをする際に意識しているのは「画面映え」ですね。ライバーさんが配信画面に映るのは基本的に肩から上、上半身なので、髪飾りやイヤリングといった小物にもこだわって、見ていて楽しくなるような華やかな画面を作れるように意識しています。
また、「こういう衣装にしたい!」という具体的なご要望をいただくので、それを形にしつつ、よりいいご提案をする努力もしていますね。そのためにSNSでファッションのトレンドを学んだり、美術館に行ったりしてインプットも大切にしています。
2D進行管理 U:すごい……Oさんはたくさん衣装をデザインされているイメージがあります!
2D進行マネージャー S:すごく素敵な衣装が多いですよね! 衣装に関してはライバーさんが作りたいものを形にしていますが、中にはどういった新しい衣装を着たいのか、迷われる方もいます。そういった場合はライバーアートチームからデザインを提案させていただく機会も増えてきましたよね。
――ビジュアルのデザインだけでなく、配信画面での見え方も意識して制作されているんですね。それでは続いて、Live2Dチームのこだわりについてお聞かせください。
Live2Dアートディレクター I:Live2Dで一番こだわっているのは“その人らしさ”ですね。例えば、元気でかわいい雰囲気のライバーさんなのに表情がぎこちなく見えるのは違いますし、逆にダウナーでクールなライバーさんなのに大袈裟なにんまりとした笑顔に見えるのも違いますよね。その人らしい表情のニュアンスを受け取ってもらえるように一番時間をかけています。
衣装はライバーさんのコンセプトを重視していますが、時にとんでもない構造の衣装が来ることがあります(笑)。僕が担当した中で一番ユニークだと思ったのは、周央サンゴさんが椅子に座って真横を向くお衣装ですね。
正面状態から自然に真横を向かせるのは、技術的にはかなり難しいことなんです。通常は45度くらいが限界で、完全に横を向いていただくのはどうしても難しかったんですが、なんとか解決方法を見出して周央さんにお渡しすることができました。Live2Dチームの技術力を見せる部分ではあったので、とても大変でしたが楽しく制作できましたね!
記憶に残る名作衣装をプレイバック
――これまでにご自身が携わったライバーさんの衣装やモデルの中で、特に印象に残っているものを理由とともに教えていただきたいです。
2D進行管理 U:1つ目は2020年公開の鈴木勝さんのお布団衣装です。お布団で横になっているので、普段のLive2Dと重力のかかり方が違うということを表現した特殊な作業を初めて目の当たりにしました。お披露目を観たときに「VTuberの新衣装って単に着替えるだけでなく、生活の一部を切り取るお手伝いなんだ」と悟りましたね。
2D進行管理 U:2つ目は、舞元啓介さんのクロマキー衣装です。依頼がきたときは思わず、その内容を二度見してしまいました(笑)。全身タイツまでは理解できても「クロマキーで顔面以外を透明にする」という発想が想像を超えていて、Live2Dチームに「これ本当に実装できるの?」と確認しながら進めました。お披露目でさまざまなものを乗っ取っている姿を見て、自分の想像力の小ささを思い知らされましたね(笑)。本当はもっと話したいことがあって、あと1時間ぐらいは語れるんですけど、ちょっとこの辺にしておきますね……。
2D進行マネージャー S:第2陣として佐伯イッテツさんのクロマキー衣装のオーダーが来たときは、その際の知見があったので透過できる程度の薄い影を入れて立体感を出すような工夫もしていましたよね(笑)。ライバーさんからは想像もしたことのない新しい発想を提案していただくことがあるので、驚いてばかりです。
イラストレーター O:私はまず、自分が担当した白雪巴さんの天使衣装です。ライバーさんにライブドローイングをお見せして「翼を少し小さくしたい」などの細かいオーダーを調整しながら作りました。個人的に羽を描くのが大好きなこともあって楽しかったですし、お披露目でかわいく着こなしていただけて感無量でした。
イラストレーター O:もう1つは、クララさんのハーフアニバーサリーとしてお披露目されたファンタジック衣装です。冒頭でお話した通り、お仕立てから担当させていただいていたライバーさんで、初めての新衣装ということでライバーさんからいただいた要素と、こだわりをたくさん詰め込んでみました。そうしたらすごく喜んでいただけて……。配信で衣装を紹介していただいたときに、「すごくかわいいんだよ!」と触れてくださったのが本当にうれしかったです!
Live2Dアートディレクター I:にじさんじアプリの進化とともに、身体表現の幅が広がり、舌を出したり頬を膨らませたりと表情周りで大幅なアップデートが入ったタイミングだったので、2022年デビューのライバーさんには思い入れがありますね。印象に残っているものは山ほどありますが、チーム全体で持てる技術を出し切ってお仕立てした、とても思い出深い仕事です。
2D進行マネージャー S:私の場合は、新人デビューに関わることが多いのでそこで反響をいただけることが一番のやりがいです。直近だとRhyZyGyが10代の方々をはじめ、若い世代に温かく迎えていただけたのがすごくうれしかったです。それはもちろん、ご本人たちの魅力が一番大きいところだと思いますが、デザイン部の担当領域に紐づけてお話すると、演奏モデルのLive2Dを携えてデビューしたというのが新たな試みでした。その目新しさが多くの人の目に新鮮に映ったというのもあるかもしれません。
Live2Dアートディレクター I:あれ、本当にすごいですよね。同じチームの方が担当していたんですが、初めて見たときは僕もびっくりしちゃって……「すげえ!」って素直に感動しました。
ライバーの「やってみたい」を叶え、感動を届ける“橋渡し”をする
――ライバーさんの新人デビューや新衣装のお披露目を迎える中で、特にやりがいを感じる瞬間と、今後の展望について教えてください。
2D進行管理 U:毎回の出来事なんですけど、作家さんがこちらの想像を超える素晴らしいデザインをくださった瞬間は、一番テンションが上がります。例えば、叶さんのメイド衣装はオーダーをいただいた段階では、「ユニークさを重視した雰囲気なのかな」と思っていたんです。でも、いざ衣装デザインをいただくと、息を呑むほど美しいデザインに仕上げていただいて……。ファンの皆様の間でも大反響となり、最終的にフィギュア化までされたのでとてもうれしい気持ちになりました。
Live2Dアートディレクター I:Live2Dのお仕立ては僕が担当したんですが、本当に好評でお力添えできてうれしかったです。
2D進行管理 U:Iさん、その節は本当にお世話になりました。今後の挑戦としては、ライバーさんが「これやってみたい!」と思ったときに、「一旦デザイン部に無茶振りしてみよう!」と思ってもらえる空気感を作っていければと思っています。無茶振りが来るほどLive2Dチームはうれしそうに頭を抱えるので(笑)。
一同:(笑)
イラストレーター O:ライバーさんから「うれしい!」「またお願いしたい!」と言っていただけることや、「3.0 Brushup!!」の表情を配信で工夫して使ってくださる姿を見ると、作ってよかったと心から思います。あと個人的には、今後はLive2Dの可能性を広げる衣装にも挑戦したいと思っています。例えば、「ライバーさんの周囲に浮遊する水を置いて、その中で魚が泳いでいる」みたいな幻想的な表現とかにも挑戦してみたいです。
Live2Dアートディレクター I:やっぱり自分がこだわって制作したものや苦労して作り上げたLive2Dに対して、ファンの方々や社内からのいい反応をもらえると大きなモチベーションになりますよね。
Live2Dチームとしては、「Live2Dといえばにじさんじだよね!」と言っていただけるようなクオリティを目指したいです。ライバーさんの魅力を引き出しながら、ファンの方々により身近に感じていただけるように、これからもクオリティを追求していきます。
2D進行マネージャー S:これからも見てくださる方に驚いていただけるような体験を届けたいです。VTuberといえば、どうしても3Dの姿が花形というイメージがある方もいるかもしれませんが、Live2Dにも細部まで作り込まれた素晴らしい魅力があるんですよね。ファンの皆様に「Live2Dを見て感動したから、これからも応援したい!」と思っていただけるように、その魅力を届ける橋渡しをしていきたいです。