「館の一族」と「王道かわいい」 2人のプランナーが描くハロウィンの世界観
――まずそれぞれがご担当したハロウィングッズ施策の全体的なテーマやコンセプトを教えていただけますか? 今回の企画を立ち上げるうえで、特にこだわった点や苦労された点があれば教えていただきたいです。
グッズプランナー S:私はビジュアルグッズを担当したのですが、まず企画書を作る段階で「ハロウィンといえば、どんなものが思い浮かぶだろう?」というところから考え始めました。私の中でハロウィンと聞いてまず一番に浮かんだのが、ティム・バートン(※1)作品のようなダークファンタジー系の世界観だったんです。そこからアニメーション作家のヤン・シュヴァンクマイエルさん(※2)や漫画家の萩尾望都さん(※3)などの作品も参考にしつつ、最終的に行き着いたのが「館に住んでいる一族」というコンセプトでした。
※1 アメリカ出身の映画監督/脚本家。代表作に「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」「シザーハンズ」「チャーリーとチョコレート工場」など。
※2 チェコ出身のアニメーション作家/映画監督。代表作に「アリス」「ファウスト」「オテサーネク 妄想の子供」など。
※3 少女漫画家。代表作に「ポーの一族」「トーマの心臓」「11人いる!」など。
「Gothic Night NIJISANJI HALLOWEEN2025」キービジュアル
――さまざまな作品を参考にして、イメージを膨らませていったんですね。そこまでたくさんの参考資料を集めるのは大変だったんじゃないですか?
グッズプランナー S:いえ! 実はこういったダークファンタジー系の分野は、私の得意領域でして。もともとこういった作品が好きだったので、資料集めにはそこまで苦戦しませんでした。頭の中のストックをもとに企画書を作ったところ、それを採用いただいたんです。
――今回の企画に適任だったんですね! Hさんはいかがでしたか?
グッズプランナー H:私が担当したのは、マスコットグッズとにじぱぺっと(にじぱぺ)やにじぬいなど既存グッズのカスタマイズグッズになるのですが、誰が手に取っても、「かわいい!」と言ってもらえるようなグッズを作るということをコンセプトに進めていきました。ハロウィンと聞いて誰もがイメージするような、王道のハロウィングッズを作りたかったんです。
「2434 HALLOWEEN BOX」キービジュアル
「迷いがあるものは結果につながらない」プランナーが語る、企画を通すまで
――どちらも素敵なグッズに仕上がっていますよね。おふたりが作成した企画は、社内でも好評だったのではないですか?
グッズプランナー S:今回の施策は社内でも好評をいただいたんですが、普段は企画書が通らず苦戦することもあります。
グッズプランナー H:一度出した企画内容にフィードバックをもらって、2〜3回リテイクすることも多いですね。
グッズプランナー S:多いときは4〜5回ほどトライアンドエラーすることもあります。
――企画を通すのは、そんなに大変なんですね。
グッズプランナー H:そうですね。グッズプランナーだけではなく、販売チームやプロモーションチームも含めた部署全体で企画書を確認するので、さまざまな観点から企画として問題ないかをチェックしていただくんです。そこでいただいたフィードバックをまとめて企画書を完成させるまでに、トライアンドエラーを複数回繰り返す、という感じですね。
グッズプランナー S:1つのグッズ施策で、コンセプト案を3〜4つ出すようなこともありますよね!
――これまで発売されてきたグッズは、そういった厳しいチェックを乗り越えたものなんですね。さらに今回のハロウィンような季節系のグッズ施策となると、回数を重ねるにつれて、過去の施策との差別化が難しくなってくるのではないかと想像します。季節系のグッズをご担当することになった際に、特に意識していることや気を付けていることはありますか?
グッズプランナー S:まず過去の施策を確認して、グッズのラインナップやコンセプトが被らないようにするというのは大前提としてやっています。今回のビジュアルグッズの場合は、事前に世界観やコンセプトをがっちりと固めて企画書を作ることができたので、やりたいことが決まっていた分、企画も通りやすかったのかなと思っています。
「Gothic Night NIJISANJI HALLOWEEN2025」商品一覧
グッズプランナー H:私も過去の施策を確認して、去年はライバーさんのおとものマスコットをモチーフにしたグッズが多かったので、今回は魔女やスケルトンといった王道のハロウィンをモチーフにする、など差別化を意識しました。あとはSさんの企画書も見させていただいて、同じようなコンセプトにならないようにもしましたね!
あと、これは季節系のグッズに限った話ではないですが、「にじさんじで出す意味」を持たせるというのもチームで大事にしている部分になります。公式グッズとして出すことの意味や必要性を意識しつつ、ライバーさんの良さを引き出せるようなテーマを考えないといけないので、気を回さないといけないことは多いかもしれません。
企画の段階からそういったテーマ作りがしっかりできていないと、途中で最初にイメージしていたものからどんどん離れていってしまうんです。「これだ!」っていう自信を持って進めていく施策のほうがお客様に喜んでいただけることが多いんですよね。
「2434 HALLOWEEN BOX」商品一覧
“肖像画”を追求したタペストリー&ぬいポーチへのこだわり
――それぞれ制作するグッズの種類はどのように選ばれていったのでしょうか? 今回挑戦した新しい試みなどがありましたら、教えていただきたいです。
グッズプランナー S:今年のビジュアルグッズは「館に住んでいる一族」がテーマだったので、タペストリーを作りたかったんです。館には肖像画が飾ってあるイメージがあったので、肖像画に見立てたタペストリーを作りたいなと!
タペストリー自体は普段からグッズとして作っているのですが、今回は飾りの布や装飾を増やしてより豪華な仕上がりを目指しました。お部屋に飾っていただければ1枚でもかなり様になりますし、全種類並べるとかなり迫力があるので、今回制作したグッズの中でも特に気に入っているアイテムですね。
「Gothic Night NIJISANJI HALLOWEEN2025」アンティーク風タペストリー
グッズプランナー H:普段は上についてるヒラヒラの布がないので、今回のタペストリーはすごく豪華ですよね!
グッズプランナー S:ありがとうございます! このタペストリーは今まで作ったことのない仕様だったので、メーカーさんやデザイナーさんともいろいろと相談しつつ、試行錯誤を繰り返しながら制作しました。
また、こちらのポーチもカメオや肖像画をイメージしていて、ぬいぐるみを入れたときにお顔がみっちりと前面に押し出されるように作っているんです。バッグに付けていただいてもすごくかわいいですし、ビューティーグッズを入れるようなメイクポーチとして使っていただいてもかわいいかもしれません。
最初はこのカメオ風ポーチの持ち手部分をサテン生地で作っていたんです。でもベロア生地にしたほうがより高級感が出て、全体の統一感も出せるんじゃないかということで、メーカーさんやデザイナーさんと連携しながら制作を進めましたね。
「Gothic Night NIJISANJI HALLOWEEN2025」カメオ風ポーチ
グッズプランナー H:確かに高級感がありますよね。あと、今までのポーチはリボンも付いていなかったですよね?
グッズプランナー S:そうなんです! この2点は“肖像画”というコンセプトがしっかりあったからこそ、作ることができたグッズかなと思っています。
あとはロゼットもさまざまな装飾を付けた豪華仕様になっているので、新しい試みになりますね。バッグや洋服に付けていただければ、自分のお好きなライバーさんをしっかりとアピールできると思います。レースもいろんな種類の素材を使用していますし、ベロア生地も使っているので施策全体の統一感も出せるようにしていますね。
ロゼットの装飾としてライバーさんのオリジナルのモチーフを取り入れたり、高級感のあるお名前の印刷を入れたりすることによって、「にじさんじで出す意味」もカバーできるようにしています。このアイデアは社内のデザイナーさんが提案してくださった部分ですね!
「Gothic Night NIJISANJI HALLOWEEN2025」缶バッジ付きロゼット
全ファンに向けたラインナップ展開
――Hさんはご担当されたグッズについて、どういった点を意識して制作されましたか?
グッズプランナー H:今回はハロウィンの仮装をしていないマスコットたちと、カスタマイズ用のハロウィングッズを展開する、という企画だったので、マスコットのぬいぐるみを作りつつ、そのマスコットにも使えるカスタマイズグッズを作りました。
先にSさんの企画書を拝見していたので、私の担当分はファンシーっぽいイメージで作ろうかなと思いまして、素材をビジュアルグッズで使用しているものと変えてみました。例えば、にじぱぺ用ボックスではフェルト生地を作っているので、同じハロウィン施策でもだいぶトーンが違います。
グッズプランナー S:棺がモチーフのボックスですか? めちゃくちゃかわいいです!
「2434 HALLOWEEN BOX」ぬいぐるみマスコット
――2つのハロウィン施策の中でも差別化を考えられていたんですね。Hさんの特に思い入れのあるグッズはありますか?
グッズプランナー H:もちろん全部おすすめなんですが、アクリルジオラマは特におすすめのアイテムです。お客様によってグッズの楽しみ方も違いますので、持ち歩くことのできるぬいぐるみや家に飾ることのできるアクリルジオラマなど、幅広いグッズ展開を意識していたんです。使用しているイラストは社内のイラストチームに相談して、いろんなシチュエーションでも飾りやすいジオラマ用の背景を描き下ろしてもらいました。
グッズプランナー S:にじぱぺもアクスタも置けるのは、うれしいですよね。
「2434 HALLOWEEN BOX」【にじばペっとカスタマイズシリーズ】 アクリルジオラマ
グッズプランナー H:実はこういった背景だけのアクリルジオラマを単体で発売するのは、今回が初めてなんです。台座のパーツは自由に取り外しができるので、自分の好きなライバーさんのアクスタを飾ってもらったり、パペットと一緒に並べて飾れたりできるようにしています。よく見るとイラストの中ににじさんじの要素が入っているので、ユーザーさんに見つけていただきたいですね!
グッズの完成度を高めたチームの力
――今回登場するライバーさんを起用した理由はなんだったのでしょうか?
グッズプランナー S:過去にハロウィングッズにアサインされていないライバーさんからお声がけさせていただいたんですけど、今回はレースやリボン、チュールといった素材を取り入れつつ、高貴な衣装に統一しようと思っていました。ですので、そういった衣装が似合いそうな方を中心に起用させていただきましたね。
――皆さん、衣装がとても素敵ですよね。グッズを作成する中で、ライバーさんや社内からのフィードバックはどんなものがありましたか? 特に印象的なものがあれば教えてください。
グッズプランナー S:珠乃井さんに今回の衣装やグッズデザインを大変喜んでいただいたのは、印象に残っていますね。また、七瀬さんに真面目なイメージを持たれている方も多いかと思うのですが、今回はあえて攻めた衣装を提案させていただいたんです。短めのハーフパンツと透け感のあるチュールのスカートを着用していただいているのですが、この衣装をすごく気に入っていただけたのがうれしかったですね。
今回の企画では単純なコスプレ衣装にしたくないと思っていたので、衣装にはすごくこだわっていたんです。ほかの皆さんにもかなり特徴的な衣装を提案させていただいたんですが、NGが出ることなく寛容に受け止めていただけたのでうれしかったです。社内でも衣装を「かわいい」と褒めていただけることが多く、すごくありがたかったですね。
「Gothic Night NIJISANJI HALLOWEEN2025」アクリルスタンド
――Hさんは、今回こちらの方々のマスコットを起用した理由はなんだったのでしょうか?
グッズプランナー H:以前、ANYCOLOR MAGAZINEでにじぱぺの記事が出た際に、「これからはマスコット系のグッズに力を入れていく」と部長陣が言っていたと思うのですが、その一環で高さ10cmくらいのサイズのマスコットグッズのリリースを増やしているんです。ですので、このハロウィンのタイミングに合わせて、まだ発売されていないマスコットたちを中心に選ばせていただきました。すでに発売されていたマスコットでも、サイズ違いや完売になっていたものを再販するという形で、起用させていただいています。

「小さき命はいいぞ!」にじぱぺ&ぬいストア担当者対談 “虚無顔”へのこだわりと常設店オープンへの道
――制作を進めるにあたって、ライバーさんから何かフィードバックはありましたか?
グッズプランナー H:戌亥さんからバンケンの胴体のフォルムについて、フィードバックをいただきましたね。サンプルでお見せしたものの胴部分が少しだけずんぐりむっくりとしてしまっていたのですが、ご本人からフィードバックいただけたおかげで、よりかわいく仕上げることができました。
「2434 HALLOWEEN BOX」ぬいぐるみマスコット バンケン
――ライバーさんに確認いただくことで、より完成度が上がったんですね。社内からはどういった反応がありましたか?
グッズプランナー H:修正に関するフィードバックはありませんでしたが、こういったカスタマイズグッズは、かなり細かいところまで気を使って作らないといけないんです。ですので、制作の過程で周りのスタッフに見せて、いろいろと意見をいただきながら進行しましたね。
例えば、帽子の内側にゴムを仕込んでいたり、マントに紐を通せる穴を開けていたりすることで、多少揺らしても落ちないようにしているんです。こういった工夫は自分だけでは気付けない部分もあったので、いろんな人に相談していましたね。
「2434 HALLOWEEN BOX」カスタマイズシリーズ
グッズプランナー H:実は私自身があんまりぬいぐるみに詳しいわけではないので、社内のぬいぐるみ愛の強いスタッフに見てもらって、「もっとこうしてほしい!」というフィードバックをもらいました。社内にもいろんなタイプのグッズプランナーがいるんです(笑)。
グッズプランナー S:そのグッズのジャンルが得意なプランナーに見てもらうのって大事ですよね!
――社内にもいろんな得意分野を持ったプランナーさんがいらっしゃるんですね。ちなみにおふたりはどういったジャンルに傾倒されているのでしょうか?
グッズプランナー S:私は宝塚歌劇団やK-POPが好きなので、ビジュアル系のグッズをよく集めています。“お顔(グッズの見た目)が命”と言いますか。
グッズプランナー H:私は漫画ですかね。家には漫画とキャラクターフィギュアがたくさんあります。そういう意味では私も“お顔が命”なので、お顔のクオリティが高いフィギュアでないと買いません。
――そういったプライベートの趣味も仕事にもつながることがあるんでしょうか?
グッズプランナー H:ありますね! ぬいぐるみのお顔の出来は、お客様が一番に気にされる部分だと思います。横浜ビブレで展開している「にじさんじ ぬいストア」に来てくださるお客様も、ぬいぐるみを1つひとつ手に取って、お顔を見比べてからご購入される方が大半なので、やっぱりお顔は一番に注意しながらグッズ制作をしています。
グッズプランナー S:“お顔が命”です。
すべてにこだわったハロウィングッズを、季節を超えて楽しんでほしい
――グッズプランナーとして、今後チャレンジしてみたいことはありますか?
グッズプランナー S:個人的には実用的なアイテムが好きなので、デザイン性がしっかりしつつ、普段使いもできるアイテムを今後も作っていけたらなと思っています。私はSpeciale1周年グッズも担当させていただいたんですが、そのときに発売したエコバッグと保冷ランチトートがかなり好評だったんです。SNSなどでも「実用的なグッズでありがたい!」という声をいただけたので、今後もそういったグッズを作っていきたいですね。
グッズプランナー H:グッズでしか見せられないライバーさんの一面があると思うので、そういった部分を見せることができるグッズを作っていきたいですね。ライバーさんの趣味やパーソナルな部分にフィーチャーした企画をうまく立てられると、ファンの皆様にも喜んでいただけることが多いんです。
「このライバーさんのファンの方は、こういうグッズを求めているかもしれない!」というのを提案して、商品化するのはグッズプランナーの仕事だと思うので、今後もそういった企画を出していきたいです。
グッズプランナー S:普段と違う衣装や表情を見せることができるのは、グッズならではの良さですよね!
――それでは最後に今回のグッズを楽しみにされている方に向けて、担当プランナーとしてひとこといただけますか?
グッズプランナー S:コンセプトをはじめ、素材やデザイン、衣装まですべてにこだわって作りましたので、是非お手に取っていただいて、家に飾ったり外に連れて行ったりして楽しんでいただけるとうれしいです。ぜひ、ビジュアルの良さにも注目していただきたいです!
グッズプランナー H:自分も同じく、お家で飾ったり一緒にお出かけしたりしていただけたらすごくうれしいんですけど、お客様の自由な発想で楽しんいただけるとすごくうれしいです。ぜひハロウィンという季節にこだわらず、楽しんでいただけたらと思います!