TVアニメ化の打診に「ほんまか……?」
――ここからはTVアニメ版のトピックを中心にお話を伺っていきます。最初の質問ですが、アニメ化のお話が来たとき来栖さんはどんなお気持ちでしたか?
来栖夏芽(以下、来栖):「ほんまか……?」って思いました。最初は「えーっすごーい!」と思ったんですが、その10秒後ぐらいに「え……ほんまか?」って疑っちゃいました(笑)。話の規模が大きすぎて、一旦喜んだけどついていけない自分がいました。「こんなこと、本当にあるのかな?」と思ってしまって。
書籍化したときも読んでくださった方々から感想をいただくまで刊行の実感がなかったのと同じように、アニメ化についても当時は全然実感が湧かなかったですね。そうは言っても、今もある意味では実感がないのかもしれないです。いろいろ作業も進みましたし、アニメ化のために動いてくださっている方々の存在も知っているのに、なぜかまだ「ほんまか?」という気持ちがあるんです。私の頭が現実について行けていないんだと思います。
TVアニメ「人外教室の人間嫌い教師」メインビジュアル ©来栖夏芽/KADOKAWA/不知火高校製作委員会
――では例えば、いよいよアニメの放送開始を控えた来栖さんのお気持ちをグラフで表現するとしたら、「ほんまか?」という気持ちは何%ぐらいありますか?
来栖:「ほんまか?」が、まだ60%ぐらいあります(笑)。どんな感じで皆さんのもとに届くんだろう、どういう感想が生まれるんだろうと気になっているから、そういう気持ちになっているのかもしれません。
――なるほど。書籍化のときと同じように、まだ感想が来栖さんのもとに届いていないから、どう受け止められたのかわからないという気持ちからなんですね。
来栖:たぶんそれもあると思います。前にも(インタビュー前編)お話ししましたが「コミュニケーションは受け手がすべて」だと思っているので。コミュニケーションって、一方的に言葉を投げかけたり行動を起こしたりすることじゃなくて、相手から返事が返ってきて初めて成り立つものだと思うんですよ。それと同じで、今はこちらが投げかける準備をしている段階だから、作品を通じたコミュニケーションとしてはまだ成立していないという気分です。その結果、どう受け止めていただけるのか分からないので実感がない、ということかなって。
収録現場の様子を振り返り、思わず発した一言にスタッフがザワザワ……
――アニメの制作作業の中では、原作者も参加する作業がかなり発生しますから、来栖さんの「本当にアニメ化するんだ」という実感はその中で徐々に育まれていったのではないかと思います。アニメ化するにあたって、脚本監修などは原作者が行うイメージがありますが、主にどんなことを担当されましたか?
来栖:今挙げていただいた、脚本の確認が作業の割合として一番大きかったのかなと思います。シリーズ構成の高山カツヒコさんが原作のストーリーをアニメ用に再構築してくださったり、アレンジを加えてくださったりしているんですが、その内容が原作と離れすぎないようにするため、私が確認させていただきました。でも、アニメにはアニメの作り方があると思うので、そこまで大きな変更は出さず、基本的には制作側の意向に沿う形で進行していったと思います。
あとは原作の中でもあいまいになってしまっている設定のまとめ直しもしましたね。時系列の確認が主だったと思うんですけど。例えば原作で書いているよりも過去の話で「この年にはこういうことがあった」ということを改めてまとめて、わかりやすく整理したんです。ほかにも私自身が物語の中ではっきりさせていなかったことがあったので、それらをきっちり決めていくことで「これは原作にも活かせるな」と思える要素が見つかることもありました。
――アニメの作業が原作にとってもプラスに働いたんですね。作中世界の時系列や細かな設定はやはり著者の頭の中にしかないことですから、来栖さんの存在は必須だったと思います。ほかにはどんなことを担当されましたか?
来栖:あとは脚本内でのキャラクターの雰囲気の確認やデザインの確認、表情差分の確認もさせていただいています! キャラクターの作画については、コミカライズで紅野あつ先生が描いてくださっている表情も参考にされていたのかなと思いました。でも若葉(葵)や(小此鬼)マキちゃんのようにコミカライズに登場していない子の描写については、スタッフさんとすり合わせをさせていただきました。ほかにどんな作業を担当させていただいたかな……。
――取材に同席していただいている担当編集の方によると、これまでに出ている工程のほかに脚本会議への参加、美術や小物の確認、絵コンテ確認などに加えて一般的なライトノベル作家さんはなかなかしないような特殊な作業として一部サブキャラクターのデザインもされたそうですね。
来栖:そうでしたね。キャラクターデザインはかなり好きな作業でした。そのキャラクターたちが動いている姿も楽しみです。……あっ! 忘れちゃいけないことがありました。アフレコの立ち会いをさせていただいたんですよー!
――そうだったんですね! 収録現場の感想もぜひお聞きしたいです。
来栖:体調不良になっちゃった日を除いて、行けるときは全部行きました! 声優の皆さんの演技を見させていただいて、「登場人物のみんなが現実世界で生きてる!」という気持ちになりました……。現場で高山さんや音響監督の八木沼(智彦)さんともお話しさせていただいたことも面白かったですね。「このセリフはもっとこんな感じがいいですか?」とか「このシーンはこういうニュアンスの方がより映えそうですね」というような会話をされていて興味深かったです。
TVアニメ「人外教室の人間嫌い教師」第1話場面カット。©来栖夏芽/KADOKAWA/不知火高校製作委員会
――なるほど。
来栖:やっぱり映像になって声優さんの演技で表現されることで、一度にお届けできる情報量がすごく増えるじゃないですか。 だから、アニメのいろんなシーンをよりよくするために、現場にいるいろんな方々がたくさん議論を重ねていらっしゃるんですよ。その様子を見させていただいてすごく勉強になりましたし、私も私で意見を求められたときには原作者として「このシーンはこういうニュアンスをイメージしていました」とお伝えできたのでよかったなって。立ち会わせていただくことで、よりよい作品になってたらいいなと思います。
――来栖さんにとっても勉強になるポイントが多々あったんですね。ちなみにキャストの方々と現場でお話しするタイミングはありましたか?
来栖:最初の方は、「あんまり出しゃばらないようにしよう……!」という思いが本当に強かったので、「私はスタッフです!」という顔をして大人しくしていたんですよ(笑)。でも本当に皆様がお優しくて……! 私が1人でいるときに鏡花ちゃん役の雨宮天さんが話しかけてくださったことがありました。好きなシーンを教えてくださったり、「演じたら鏡花ちゃんのことがもっと好きになっちゃいました」と言ってくださったりして、とてもうれしかったです! 一咲ちゃん役の大西沙織さんと右左美役の長縄まりあさんには以前原作小説のPVや特典ボイスドラマにご参加いただいていたので、アニメの現場でもまたお会いできたこともうれしかったですね。
――なんだか皆さん和気あいあいとされていて、いい空気の現場なんだなと感じました。
来栖:私もとてもいい雰囲気だと思いました! トバリちゃん役の田辺留依さんとお会いするのは今回が初めてで、最後の最後まであんまりお話しができなかったんです。というのも、私も田辺さんもお互いに距離感の探り合いをしていたみたいで(笑)。
――「話してみたいけど、声をかけて大丈夫かな……?」という感じでしょうか。
来栖:そうなんです! そのことが収録の最終日にやっと発覚したんですよ。先ほどもお話しした通り私はキャストではなく原作者という1人のスタッフなので、ずっと少し離れた所から見守っている感じで……。最終日にご挨拶も兼ねてようやくお話しすることができたんですけど、田辺さんがめちゃくちゃ面白い方でして、最後にハグをして終わりました!
――収録中には全然お話しできなかったのに、ものすごい勢いで仲良くなったんですね!
来栖:もう爆速で距離が縮まって(笑)。先日MF文庫J『秋の学園祭2025』が開催された際に「人外教室の人間嫌い教師」のステージを実施していただいたんですが、私は同時視聴配信をさせていただいたんです。 そのときも田辺さんが「夏芽先生が今、同時視聴してるらしいですよ」と言ってくださって、「ちゃんと見守っていますよ~!」と、ニコニコになっていました!
――お話を伺っているとすごく楽しそうで、キャストの方々といい形でご縁ができたんだなと感じました。ちなみに主人公・人間零役の増田俊樹さんの収録は見学されましたか?
来栖:はい、もちろん拝見しました。増田さんは、ヒトマさんらしい真面目で優しさのある演技で、作品全体を引っ張っていってくださっていました。お話しする機会はあまりなかったのですが、増田さんはスタッフ全員に差し入れをしてくださったりしていて、周囲へのお気遣いがとても丁寧な方なんだなと……! そして見学させていただいたことで、増田さんへの尊敬が深まったことがあるのですが、増田さんはスタジオ入りが早い!もちろん、キャストの皆さんは時間に余裕を持ってスタジオ入りされていたのですが、そんな中でも増田さんは 誰よりも早くスタジオに来て、しっかりと台本を確認していらっしゃる様子を見かけていたので、本当にすごいな……と思いつつ、そんな姿がヒトマさんっぽくもあるなと感じました。
TVアニメ「人外教室の人間嫌い教師」第1話場面カット。©来栖夏芽/KADOKAWA/不知火高校製作委員会
来栖:あと現場で面白かったことなんですが、ある女性キャストさんの演技が本当に素晴らしくて、思わず「えっ……激メロ!」って言っちゃったんですよ。現場にいらっしゃったスタッフさんは年上の方が多かったので、「これが“メロい”っていうことなんだ」「本当に“メロい”って言うんだ……!」とちょっとザワザワされていて(笑)。 でも本当に激メロな演技をしてくださったキャストさんもいるので、ぜひアニメでチェックしていただきたいです。
“声の力”に感動! アニメ第1話の感想をトーク
――ではいよいよ、アニメ本編についてお話を伺っていこうと思います。来栖さんは先日アニメの第1話をご覧になったそうですが、率直なご感想をお願いします。
来栖:もう本当に、「うわー! みんながしゃべって動いてる!」とストレートに感動しました! これまでもいろんな感動ポイントがあって、書籍化にあたって泉彩先生から初めてイラストをいただいたときには「めっちゃかわいい! 登場キャラクターたちが“本物”だ!」と思いましたし、紅野あつ先生のコミカライズでは「マンガになってページの中で動いてる!」「確かにこの子って、こういうセリフを言うときはこんな表情や動作をしてくれそう!」と納得感がありました。今回アニメになったことで、キャラクターがさらに生き生きと鮮明に描かれているので、ぜひ皆さんにご覧いただきたいです。
TVアニメ「人外教室の人間嫌い教師」第1話場面カット。©来栖夏芽/KADOKAWA/不知火高校製作委員会
――先ほど泉先生に描いていただいたイラストや紅野先生のコミカライズにそれぞれ感動したとおっしゃっていましたが、アニメはさらにキャラクターがしゃべって動きますから、これまでとは違う愛着が湧いてくるのではないか?と思いました。その点はいかがでしたか?
来栖:確かに登場キャラクターたちの存在感がより大きくなるので、声の力ってすごいなと再確認しました。それに映像になることによって、伝わりやすさも段違いですよね。アニメ脚本を作っていただくときには、原作での表現を理解していただきつつ、映像になったときの伝わりやすさを重視していろんなご提案をしていただいたんです。そのため、アニメで見たときにわかりやすいよう、いくつかシーンを削って再構築することになったんですよ。実際に映像になってみるとストーリーのテンポもよく、よりわかりやすくなっているので、本当に勉強になりました。
――私も第1話を拝見しましたが、アニメオリジナルのシーンがいくつか付け加えられていましたよね。鏡花と一咲がお弁当のおかずを交換するシーンに新しいやり取りが追加されていました。
来栖:そうですそうです! その場のコミカルな空気をより盛り上げるために、高山さんが追加してくださったんですが、「そういう演出の仕方もあるんだ」と参考になりました。脚本会議で高山さんとはいろいろ話し合いをさせていただきましたね。懐かしい……。
TVアニメ「人外教室の人間嫌い教師」第1話場面カット。©来栖夏芽/KADOKAWA/不知火高校製作委員会
――スタッフさんともかなり話し合いを重ねて、丁寧に作られた脚本なんですね。ちなみに、第1話で来栖さんが印象的だったシーンはどこでしたか?
来栖:ヒトマさんが不知火高校を初めて訪れるときのバス停のシーンがすごく好きなんですよね。不思議な感じを残しつつテンポよく進んでいくので、「いよいよこれから始まるんだな」って期待感が上がっていって。桜がきれいでしたし、そもそもその周辺で桜の木だけ花が咲いてる異質な感覚も、すごくワクワクできていいなと思いました。
オーイシマサヨシの主題歌に太鼓判「作品に寄り添ってくれる楽曲」
――TVアニメには主題歌がつきものですが、「人外教室の人間嫌い教師」の主題歌としてオーイシマサヨシさん書き下ろしによる新曲「ニンゲン」が使用されています。もちろん来栖さんは放送前に楽曲を聴いていらっしゃると思いますが、いかがでしたか?
来栖:最高の楽曲を、本当にありがとうございます……!という気持ちでいっぱいです! 作品に心から寄り添ってくださっている楽曲で、オーイシさんの人間への愛情も伝わってくる素敵な楽曲だと思います。初めて聴かせていただいたときに本当に感動して、ものすごく大量の感想コメントを担当編集さんに送っちゃったんですよ。私が勝手に解釈しすぎだと思われる部分も最初の感想に入れてしまったので「もしこの感想をアニメサイドに送るのであれば、いい感じに修正してください」とお伝えしてしまいました。でもそれぐらい素晴らしい楽曲なので、これからも大切にたくさん聴きたいですし、皆様にもたくさん聴いていただきたいです!
――歌詞の中にはヒトマや生徒たちの心情を表現しているような部分がありましたね。
来栖:そうですね。ヒトマさんのセリフを引用しながらさらに掘り下げてくださっているんですが、そもそもヒトマさんの言葉ってけっこう重いときがあるんですよ。そんなところをポップな音でデコレーションしてくださって、重くなりすぎずに聴くことができるのは、やはりオーイシさんのテクニックなんだなと思います。
そういった、最高のアーティストでもあり、最高のエンターテイナーでもあるオーイシさんに「人外教室」のオープニングテーマをご担当いただけて感無量です。本当にありがとうございます。あと、実は……。私、原作を書いているときにイメージソングを考えながら作業していたんですよ。
――「このキャラクターはこの曲のイメージかな」というように、雰囲気に合う曲を選ぶ、ということでしょうか。
来栖:はい。「人外教室の人間嫌い教師」にはたくさんのキャラクターが登場するので、キャラクターや彼女たちに関係するエピソードごとに曲を選んでいたんです。それで3巻の特に盛り上がるシーンを書いているときは、オーイシさんのバンド・Sound Scheduleの「フリーハンド」という曲をイメージソングにしていたんですよ。だから、オーイシさんに主題歌を担当していただけることになって、もう本当に驚きました。
オーイシマサヨシ「ニンゲン」ジャケットビジュアル
――それはそれはびっくりされたんだろうな、とイメージが浮かびます(笑)。
来栖:勝手にイメージソングを考えていることは担当編集さんにも伝えていたので「そういうドッキリ……?」って思いました。「ニンゲン」の好きなところは本当にたくさんあるんですが、歌詞の中にある「いつだって寂しがり屋」というフレーズは4巻のテーマでもあったので、汲んでいただけてうれしかったです。あとオープニング映像では流れない2番の歌詞が特に好きなので、ぜひフルでご視聴いただけたらと思います!
――アニメ本編のご感想と併せて、皆さんからのコメントが楽しみですね!
来栖:はい! 本当に楽しみです。
――それでは最後に、これからアニメを楽しんでくださる方々に向けてメッセージをお願いいたします。
来栖:アニメ「人外教室の人間嫌い教師」、ついに始まりました! このインタビューを読んでくださっているあなたはご覧になっていただけましたか? いかがでしたでしょうか? いろんなキャラクターが登場しますので、アニメを通じてあなたの好きな登場人物を見つけてもらえたらうれしいです。これから全13話にわたってアニメ放送が続いていきますので、最後まで楽しんでください。よろしくお願いします!