ライバーたちがクラスTシャツからジャージに衣替え、その理由は?
――Aさんは「にじさんじフェス2026(以下、『にじフェス2026』)」において、チーフディレクターを務めていらっしゃいます。フェス運営に関する主な役割をお聞かせいただけますか?
にじさんじフェス2026チーフディレクター A(以下、チーフディレクターA):「にじフェス2026」主管部署の決裁者の1人として、イベント全体の統括を担当しています。主に全体の予算管理や企画の選定などを行っていますね。
――具体的にどんな業務が発生しているんでしょうか。
チーフディレクターA:より具体的にご説明すると、「にじフェス」の中で実施する施策にはそれぞれ担当のプランナー・ディレクターがいるのですが、企画を進めていくうえで彼らやライバーさんから大小問わず要望が出てきます。さまざまな要因を検討しつつ、それらが「できるのか・できないのか」のジャッジをするのが、自分の大きな業務かなと思っています。
――では、現場運営回りの責任者、という認識でお間違いないでしょうか?
チーフディレクターA:そういう意味では自分の上にさらに責任者がいるのですが、演出の内容だったり、「ここにこれぐらいお金かけても大丈夫ですか?」という予算に関する相談だったりという、現場での最終決裁はほとんど自分が担当しています。
――なるほど、では「にじフェス」期間に実施される施策のすべてを認識されていると思いますので、これから今年の見どころなどをたくさんお聞きしたいと思います。「にじフェス」は例年「にじさんじの学園祭」というテーマで、ビジュアルや展示物が作られてきましたよね。これまでの文化祭風のイメージから一転して、今回は体育祭がテーマのように見受けられますが、この変更の理由はなんだったんでしょうか?
チーフディレクターA:「にじフェス」は2021年にスタートして、今年で5回目の開催になるんですが、おなじみになっている文化祭というテーマは「にじさんじフェス2022」で初めて披露されたんです。そこからメインビジュアルの変更などはフェスごとに行っていますが、基本的にはクラスTシャツを着たライバーさんたちをモチーフに、文化祭要素を強調して「にじさんじの学園祭」を表現してきました。クラスTを用いた文化祭というテーマが馴染んだこと自体はとてもいいと思いつつファンの方々や社内から「目新しさがなくなってきた」という声をちらほらと聞くようになったんです。
ただ、「にじさんじの学園祭」という根本のコンセプトを変えるのは違う、という思いがスタッフ間であったので、そこを守りながら新しい見せ方を模索することにしたんです。社内のデザインチームを始めとしたいろんな部署と話し合い、「150名以上いらっしゃるライバーさんの誰もが着られるもの」で、「学園で着ていても違和感がないもの」を考えて、体操服、特にジャージに落ち着きました。そこで、ジャージスタイルのビジュアルを作るのであれば、文化祭ではなく、学校行事の中でも体育祭にフォーカスしようということに決まった、という経緯です。
――「学園祭」と言うと「文化祭」を想起することもあると思いますが、文字通り「学園」で行う「祭り」ということで、学校行事の1つである体育祭に着目したということですね。そして、テーマを決めてそこに沿うようにビジュアルを作り上げたということではなく、逆だったと。
チーフディレクターA:そうなんです。ジャージのビジュアルがあって体育祭の要素が強くなったからこそ、ビジュアルイメージを下敷きにいろんな施策に体育の要素を加えながら考え始めた、ということです。
――なるほど。それにしても、ジャージのデザインが本当に素敵です!
チーフディレクターA:そうですよね。これはデザイナーさんの天才的な仕事によるものです。
――デザインの案は、何パターンぐらい候補に挙がっていたんですか?
チーフディレクターA:ベースとなるデザインは、今皆さんがご覧いただいているものでほぼ固まっていたんです。そこからデザインの中の色分け箇所や、ラインを引く部分などの細かい違いで数パターンあり、検討の末に今の形になって。上着はどのライバーさんも同じものですが、下に履くものはロングパンツ・ハーフパンツ・ショートパンツの3パターンを用意したので、ライバーさんにお好みで選んでいただきました。色分けはクラスTシャツと同じバリエーションです。
――上着もライバーさんによってはファスナーを開けていたり、Tシャツの裾を結んでいたりと個性が出るなと思います。この着こなしについてもご本人たちの発案ですか?
チーフディレクターA:ベースとなる着こなしのルールは定めつつも「どんなふうに着たいですか?」とヒアリングをさせていただきました。そのご要望をもとにして、ライバーさんごとに上着や中に着るものの着こなし方、ズボンの形状などを決めています。ジャージ姿のライバーさんは今メインビジュアルやグッズなどで目にすることができますが、もしかしたらフェス期間中に別の展開があるかもしれません。そこは見てのお楽しみということで!
一番の目標は「来場者の満足度向上」、どこで何を見ていても楽しめるフェス作り
――お次はアトラクションや展示など、フェス期間中に楽しめるコンテンツについてお話を伺っていきます。例年のフェスの内容を踏まえてパワーアップさせたことや、今回のフェスで始めた新たな試みなどはありますか?
チーフディレクターA:まず「ご来場いただくお客様の満足度を上げること」を目標に、いろいろとパワーアップさせようと考えています。「にじフェス」はスペシャルステージを含めると、数万人というお客様がいらっしゃる大きなイベントですよね。そうなると、会場のコンテンツを皆さんにすべて体験いただくことは、現実的に難しくなってしまうんです……。せっかく現地に来てくださったのに、「列に並んでいるだけの思い出しかなかった」というような状況にならないようにしたいなと考えています。
ですから、「ウォークスルーアトラクションにじ昔話」や「にじDANCE☆踊ってみてブース」、「にじさんじ学院 昼休みのひと時 体験エリア」など体験型のアトラクションブースは特に力を入れています。お客様が見て触れて、にじさんじの世界に入り込んで楽しめるようなアトラクションというのは、新しい試みの1つだと思いますね。
また、視聴覚室やラジオブース、オープンステージなど「にじフェス」恒例の企画も、おなじみになっているからこそ愛されている要素は残しつつも、造作に凝って見た目でも楽しんでいただけるように工夫しています。例えばラジオブースであれば、本当にラジオ放送をしているスタジオのような外観にする、など。ブースごとの世界観に入り込みつつ楽しんでいただける空間設計を目指して、今準備を進めているところです。いつどこにいても、何をしていても「楽しい!」と感じていただけるような設計にしているのでぜひ楽しみにしていてください!
――アトラクションの内容や会場設営の方針も、重要な要素としては「お客様の満足度向上」という目標がある、と。
チーフディレクターA:やはりお客様には「入館から退館までずっと楽しかった」と感じていただきたいですから。どうしても待ち時間は発生してしまうと思いますが、それが単に暇な時間にならないようにしたいんです。展示ホール側では定期的にグリーティングイベントが発生しますし、待ち時間に謎解きを楽しんでいただけるような施策も用意しています。会場にいたら何かしら見るものやできることがあるので、心からお楽しみいただけることを目指して企画を考え、さまざまなスケジュールを組んでいる最中です。
――先ほど「にじフェス」のテーマについてファンの方からもご意見をいただいたとのことでしたが、運営回りの課題についてのご意見は何かありましたか? その声を受けて改善したこともあればお聞きしたいです。
チーフディレクターA:これもやはり満足感に関係するのですが、アトラクションの数に対して体験できる人数が少ない、というご意見はいただいていました。1つのアトラクションを遊んでいただく時間が長くなると、来場者数に対して体験いただけるお客様の数が限られてくるので。もちろん、先ほどお話した通り、ご来場いただいた方全員にすべての施策を体験いただくのは現実的に難しいものの、何かしらの楽しい経験と会場内で出会えるようにするべく、現地運営回りも体制を整えています。そこは明確に、お客様からいただいたご意見に沿いながら見直している部分です。
より細かい部分ですと、列形成などを始めとする現地運営回りに対するご意見をいただくこともありました。これは会場に数万人規模のお客様がいらっしゃって、数百人・数千人が並ぶからこそ出てくる課題だと思っていて、その点は当日に現地運営に協力いただく関係会社の方々とも意見を交わしながら体制を構築しているところです。来ていただいたお客様に、1つでも多く楽しい思い出を作っていただけるように、現地運営の改善に努めています。
――遠方からもいらっしゃるお客様も多いですから、フェスの期間中は楽しい思い出をたくさん持って帰っていただきたいですね。
チーフディレクターA:いやもう、本当にその通りですよね。せっかくのお休みを使って来てくださる方もいれば、本来土日もお仕事なのに休暇を取って来場してくださる方、遠方からいらっしゃる方……など、来場者が数万人であれば数万通りの理由を持って、そして数万通りの努力をしてきてくださるんですよ。だからこそ、お客様にはフェスを楽しんで、「やっぱりにじさんじっていいよね」「『にじフェス』って面白い!」と思っていただきたい、という気持ちがベースにあります。
ライバー・スタッフ一丸で作り上げる「にじフェス」の魅力
――冒頭で話題に上がった通り、「にじフェス」は今回で5回目となります。ファンの皆さんやライバーさんたちにとって大切なお祭りですし、それはもちろん我々スタッフにとっても同じですよね。Aさんにとって、「にじフェス」の魅力はどんな部分だと思われますか?
チーフディレクターA:シンプルに「お祭りって楽しいよね」と感じられる点と、会社一丸となって作り上げるイベントであることですね。「にじフェス」の準備期間はだいたい1年半から、長ければ2年というスパンで準備を進めるんですが、ライバーさんはもちろんのこと、社内外のいろんなスタッフが参加します。我々イベントを企画する部署をはじめとして、ANYCOLORのほぼ全ての部署、さらには協力会社の方々、当日現地で参加していただくアルバイトの方を含めると数千にものぼる人々が携わっているんです。
そんなに大勢の人々がにじさんじというコンテンツのために年単位で用意してきたものを、4日間のお祭りに向かって全力投球するんですよ。「普通に考えてみるとすごくない?」と思ってしまいます。でも、来ていただいた方にめいっぱい楽しんでいただこうと、いろんなスタッフが心血を注いで頭を捻り倒して、4日間のために長い時間をかけて準備する様子は、本当に尊くてがんばる意義があるものだと思っていますね。
――そもそも会場の規模感が大きいですが、関わる人たちの努力、そして準備期間の長さを踏まえると、本当に壮大なイベントだと改めて実感させられます。
チーフディレクターA:そうですね。そして、会場ではファンの皆さん同士の交流も生まれますよね。だから「にじフェス」って、ライバーさんとファンの皆さん、そしてスタッフを含めみんなが8年間作りあげてきた“にじさんじ”というコンテンツの世界を、大きな会場で直接楽しめる素敵なものだと感じています。
これまで「ご来場いただくお客様の楽しみのため」と繰り返してきましたが、作っている我々もやっぱり楽しいんですよね。「どうやったら喜んでいただけるかな」と考えるのって、とても楽しいことなんです。イベントを企画する部署に所属しているので、「にじフェス」に限らずさまざまなイベントの現場でお客様の熱量やうれしそうな様子を目にしているのですが、そのたびに「やってよかったな」と思います。「にじさんじのことをこんなに好きでいてくださるんだ」と思うだけで、「次もがんばろう!」という気持ちになりますね。自分でもこう感じるので、各イベントのプランナーやディレクターはより強く感じているんじゃないでしょうか。
――ちなみにAさんは、以前はイベントチームではない部署にいらっしゃったこともあるそうですが、ポジションが変わったことでフェスへの向き合い方に変化はありましたか?
チーフディレクターA:フェス自体に対して感じる思いは、正直にお話しするとあまり変わっていないですね。以前の部署にいたときもそうですが、やはりフェスに参加して一番感動することって、ライバーさんとお客様の絆と熱量なんですよ。異動する前はライバーさんのサポートを担当しており、にじさんじには数百万人のファンがいることはもちろん理解していました。加えて、この仕事の尊さは十分に感じていましたが、ファンの方々と直接お会いする機会は、これまで決して多くはなかったんですよね。
――なかなかありませんよね。
チーフディレクターA:そんな中で「にじフェス」の会場に行くと、ファンの方々が一生懸命ペンライトを振りながら大声でライバーさんを応援していたり、会場のさまざまなコンテンツを楽しんでくださったりしている姿が見られるんですよ。その光景を目にして、自分はこの仕事の尊さを改めて実感したのでその気持ちは変わっていないですね。
――確かに、ファンの皆さんの楽しそうな姿や喜びのコメントを目にすると、我々のモチベーションも大きく上がるなと思います。次の「にじフェス」までの期間や日々の仕事を支える気力がたっぷりと充電されるよう、と言いますか。
チーフディレクターA:本当にそうですね。これだけ多くの人が喜んでくださるんだから、我々も本気で挑む価値があるんだと思えます。それに、ライバーさんにも喜んでいただける、というのもがんばれる理由の1つですね。ファンの方やライバーさんに喜んでいただけることが何よりの励みになるんです。スタッフとして反省すべき点は必ずあると思いますが、最後にはみんなで「やってよかった」と分かち合える瞬間に、この仕事の一番のやりがいを感じます。
「にじさんじを愛してくださる、すべての方のためにがんばらせていただきます」
――先ほど「ライバーさんにも喜んでいただける」というお話がありましたが、ライバーさんたちも毎回「にじフェス」をとても楽しみにされている印象です。Aさんの視点で、ライバーさんにとって「にじフェス」はどんな立ち位置のイベントになっていると思われますか?
チーフディレクターA:「にじフェス」にはライバーさんに出演していただく施策が数多くありますが、ものによって捉え方は違うんじゃないかと思います。例えばスペシャルステージですと、会場や配信で応援してくださる数万人ものファンの方に向けてパフォーマンスすることになるので、活動の中でも大きなイベントとして捉えている方が多いです。それだけ多くの方の前でパフォーマンスをするのは、どれだけライブに慣れていてもやっぱり並大抵のことではないと思います。だから本番に向けて歌やダンスの練習はもちろん、内容構成・演出の相談なども1年ぐらいかけて一緒に準備をしているんです。
そしてオープンステージなどのバラエティ系の企画は、ファンの方々とのいつもより濃い交流ができる点がライバーさんにも喜ばれている印象です。もちろん普段から配信のコメントでやり取りされている方もいらっしゃると思いますが、ライブイベントでもない限り、ライバーさんをいつもより近い距離で感じつつコール&レスポンスなどを楽しめる機会はそんなに多くないと感じていて。それこそ視聴覚室はファンの方とライバーさんが1対1でコミュニケーションを取れる場ですし。だから、普段から応援してくださっている方に「ありがとう」を直接言える機会が作れることを、ライバーさんは非常にうれしく思っているとお聞きしています。
――フェスが終わったあとには振り返り配信をするライバーさんも多いですが、とても楽しそうにいろんな思い出話をされていますよね。
チーフディレクターA:お客様に楽しいと感じていただけるのはライバーさんのご協力があってこそなんです。フェスのたびに準備から本番にかけていろいろとお力をお借りする場面が多いのですが、ライバーさんも「楽しかった!」と言っていただけるのは運営している側としては非常にありがたいことですね。
――ライバーさんも「にじフェス」を通じて思い出を作っていらっしゃるのかな、と思いました。それに、例えば「美術室」企画などではライバーさん主催の展示企画もありますよね? ライバーさん発案の企画はどのように実施が決まるのでしょうか。
チーフディレクターA:まずフェスの開催が決まり、運営の方針もある程度定まった段階で、ライバーさんたちに企画の募集をするんです。皆さん積極的に企画出しをしてくださるので、いただいたご意見の中からけっこうな数を採用させていただいています。樋口さん発案の私物展示は恒例となっていますし、今回ならではの企画だと「える&轟京子 presents にじフェスジャージアレンジ+マネキンメイク展示」などですね。内容が似ている案を出していただいたライバーさんには、それぞれの企画を合わせて共同で主催をしていただくケースもあります。美術室関連の企画以外にも、本当にたくさんの案をいただくんですよ。
――冒頭で、さまざまなスタッフが一丸となって作るイベントだとおっしゃっていましたが、ライバーさんも熱量高く参加してくださるからこそ、ファンの方々に響くお祭りになるんですね。
チーフディレクターA:本当にそう思います。スタッフだけ、ライバーさんだけ、ということではなく双方が協力し合いながら、1つの大きな会場の中でコンテンツを作っている、という形ですね。
――いろいろとお話を伺って、今回のフェスもすごく楽しみになってきました! これから本番が迫るにつれてどんどんお忙しくなるかと思われますが、最後に「にじさんじフェス2026」に向けて意気込みのコメントをいただけますでしょうか。
チーフディレクターA:いよいよ準備も大詰めの時期になってきました。現地にいらっしゃる方や配信でご覧いただく方など、「にじフェス」を楽しみにしていただいている皆さんにいい思い出を作っていただけるように、ライバーさん・社員一同、全力で取り組んでいきますので楽しみにしていただけましたら! にじさんじを愛してくださる、すべての方のためにがんばらせていただきます。