付き合いは浅くとも信頼は深い、Voxがマネージャーに感謝している点
――まずは、おふたりへの質問から始めましょう。お互いの第一印象を教えてください。ライバーとマネージャーとしてタッグを組むことになった当時の思い出を振り返りつつ、今はお互いをどういう性格だと思っていますか?
Vox Akuma(以下、Vox):そうですね。今のマネージャーさん(以下、マネさん)とはまだそこまで長くないので、少し答えに悩む質問ではあります。ともあれ、マネさんと仕事をしていて一番刺激を受けるところといえば、さまざまな方法で私の課題に手を差し伸べてくれるところですね。私はライバー活動に対してひたむきに努力をしていますが、どうも私には些細なことで簡単に打ちのめされてしまうきらいがあるので、マネジメントには苦労するタイプだと思います。ですがマネさんは、私が正しい方向へ進めるよう、私の悩みに粘り強く付き合ってくださるんです。デビューして約4年が経ってなお、自分の責任の重さには押し潰されそうになることがあります。そんなときにいいマネージャーがいるかどうかで、本当に違いが出るんですよ。
Voxマネージャー:そう言ってもらえてうれしいです! Voxさんの印象は、担当になったときから今までほとんど変わっていません。非常に話しやすくて、フィードバックをいただきたいときにはいつも詳しくかつ有意義な回答をくださるので、ほかのスタッフにも伝えやすいんです。難点を挙げるとすれば、そのフィードバックや返信をなかなかもらえないことがある、といったところでしょうか。
Vox:でしょうね。
Voxマネージャー:前任マネージャーから、考えをまとめるのがちょっと苦手っぽいと聞いていまして(笑)。
Vox:「ちょっと」はかなりお世辞だろうな。まあいいですが(笑)。
Voxマネージャー:ですから、最初と印象が変わったところといえばその苦手度合いかな 、ということです。始めに想像していたよりもずっと……苦手でいらっしゃったので(笑)。いろんなことにトライされていてお忙しいため連絡が滞るタイミングがあり、その進捗整理に苦労されているのでしょう。でもいいんです! そのためにマネージャーがいるんですから。おかげで私の仕事はやりがいがあって楽しいです。だからまったく気にしてませんよ。
Vox:分かっていますよ。それから、マネさんの率直な姿勢は実に清々しくていつも感心させられるんです。私には人に苦労をかけてしまう面があり、どうがんばってもうまくいかないときがあります。改善するにはどうすればいいか、率直なフィードバックをもらえるのはありがたいことです。会社にとってはタレントの世話を焼いて満足させておけば利益になる、という考え方もありますから、適当なところでご機嫌取りをして満足させて、当の本人たちはそんな扱いをされているとも気付かないような状態になってしまってはいないか、と不安がよぎるときもあります。ですが、マネさんといてそういった問題を感じたことは一度もありません。私を真に信頼していながらも、率直なフィードバックを素早くくれる。「頼りになるな」といつも思います。
Voxマネージャー:頼っていただけるように心がけていますからね。
――では、その関係性についてもう少し掘り下げてみましょう。おふたりとも、一緒に仕事をするようになってそれほど長くないとおっしゃっていましたが、Voxさんは新しいマネージャーを迎えるときについて、マネさんは新しいライバーへ担当が変わるときについて、どのような気持ちになるかをお聞かせください。環境の変化に、おふたりはどのように適応されているのでしょうか?
Vox:「不思議な感覚だな」と常々思うのですが、ライバーとマネージャーの関係は、非常にプロフェッショナルであると同時に親密なものでもあるんですよね。マネさんは主にチャットツールで連絡をくれて、タスク管理をしてくれる。私はプロとしてそれに応える。一方で、本当に悩んでいることを打ち明けなければならないときには、友人に話すかのように心を開ける気がするのです。
これまでのマネージャーの中にも、同じことが当てはまる人たちがいました。だからこそ、マネージャーが変わるタイミングというのは不安になります。よい関係を築き、互いに理解し合い、仕事が円滑に進んで「このマネージャーとやっていく感覚が掴めてきたな」と思っていた矢先に、その人がいろんな事情から担当を離れねばならないといった知らせを受けるのです。そんなとき、これからどうなるのかは想像もつきません。次のマネージャーとも同じ関係を築けるだろうか? 受け入れることができるだろうか? マネージャーとの関係を最大限に高めようと思ったら、弱さを見せることも避けられません。分かち合う必要があるのです。だから私は、マネージャーのことを「信頼できる相手」だと捉えるようにしています。そうしなければならないというわけではないにせよ、それが最善のように思えるのです。ただ、新しく迎える相手に対して簡単にできることではありません。
ところがマネさんは、いとも容易く私の信頼を勝ち取ってみせました。(にじさんじ 7th Anniversary LIVE)「OVERTURE」にともに取り組んだおかげでしょう。不安を打ち明けていいんだと手放しで思えるようになりましたし、マネさんもすべてうまく取り計らってくれたと思います。感謝しています。
Voxマネージャー:ありがとうございます。正直、マネージャー側にも多少のプレッシャーはあるんですよ。Voxさんもおっしゃっていた通り、ライバーと前任マネージャーが築いてきた関係を思わずにはいられませんから。マネージャーが変われば、どうしても前任と比較されることになります。「前のマネージャーのほうがよかったかな」とか「今、自分はちゃんと仕事をこなせているかな」とか、そういったことは考えても仕方がありません。
結局、我々でコントロールできることではないんです。だから自分はいつも、そういうことは考えずに、自分なりに全力で仕事に取り組むようにしています。「どうにかライバーとうまくやっていけますように」って。自分のやり方がVoxさんに合ったのなら、本当によかったです。ほかの担当ライバーにも合っていたらいいなと思います。
でも確かにプレッシャーはありますが、新しいライバーと組むことになって「これからどうなっていくだろう?」と思い描くのは、楽しみでもあるんです。常にポジティブに捉えて、これからライバーと取り組んでいく仕事やプロジェクトにワクワクできる自分でいたいと思います。
――よい関係を築けているようで何よりです。ぜひこれからも、力を合わせてがんばってください。次の質問なのですが、おふたりが普段どのようなやり取りをされているのか、お話しいただける範囲で教えていただけますでしょうか。一緒にお仕事をしてきた中で印象的だったエピソードや記憶に残っている思い出もお聞かせください。
Vox:なんとなく、私たちは笑いのツボが同じような気がするのです。面白いと思うことから、仕様もないと感じることまでね。今でも笑えるのは、マネさんと組んですぐの頃ですが、スタジオで収録した日の出来事です。
私が自ら決めたコンセプトだったとはいえ、それはかなりふざけた内容でした。そんなアイデアを、一緒に仕事をするようになって日が浅いマネージャーに説明して実演するはめになったんですよ。なのになんだか、ずっと真剣に向き合ってくれている安心感もあって。
おかげで収録は明るく楽しい空気で進み、予定より早く終わらせることができました。私のような、人の気持ちに敏感で気にしがちなタイプにとって、肩の力を抜いて笑っていられるような雰囲気は大きな助けになるものですから。
Voxマネージャー:そのエピソードを話そうと思っていたので、面白いなと思って聞いていました。
少し補足させていただくと、ENライバーがスタジオで収録をするとき、特に日本語があまり流暢でないライバーの場合は伝言ゲームのようになるんです。ライバーがこちらに質問をして、自分が翻訳してスタジオのスタッフに伝える。スタッフはさらにまた別のスタッフに伝える、という感じで。あの日は、Voxさんのアイデアが本当に面白くて、確かにふざけているとも言えるものでした。スタジオをひたすらうろうろ歩き回りながら説明してくださったんです。「私が向こうまで歩いていってああしてこうするからカメラはそこで、その後私が折り返してああしてこうして、そういうわけでカメラはそっちに移してもらって、そうしたら私は床に倒れる」というように。
歩き回るVoxさんを目で追っていたスタッフたちが、頭の上に「?」を浮かべてこちらのほうを振り向きました。ただ困ったことに、自分の頭にも「?」が浮かんでいたんです(笑)。そこでVoxさんに再度確認をさせていただいて、説明を噛み砕いて、なんとか分かってもらえるように翻訳しました。幸い、スタッフは皆さん優秀で、Voxさんの行動と自分のまずまずの翻訳を結びつけて理解してくれたので、収録を無事に終えることができたというわけです。最高に楽しい経験でした。
Voxの内面に棲む“2匹の狼”、求められる姿と創作意欲の間で感じること
――次はVoxさんご自身にスポットを当てましょう。VoxさんはNIJISANJI ENの中でも随一と言えるほど独特な世界観の持ち主で、配信のバリエーションにも富んでいる方という印象なのですが、そんなVoxさんのインスピレーションの源はなんですか? ライバー活動に活きている趣味や習慣などあればお聞きしたいです。
Vox:そこまで言っていただけるとは光栄です。少し恐縮してしまいますね。思えばいつも、私の中には2つの精神があるように感じるのです。二面性、はたまた2匹の「狼」とでも呼ぶべきかもしれません。
そのうち1つは、日頃の映画鑑賞を通じて物語をユニークに表現する方法を常に考え続けている私です。今、VCraft Enchanted(※)というMinecraftのロールプレイ配信をみんなでやっているんです。ちょうどさっきも配信をしていたのですが、ゲーム内のキャラクターとしてロールプレイに没頭して、これまで自分の引き出しになかった演技方法や物語の伝え方を見出すことができたんですよ。こうなるともう夢中になって、ほかのことなんて目に入らなくなってしまう。物語や映画、実験映画、テレビ番組。そういったものの本質や定義を、私は考え続けています。どんな意義を持つのか? ジャンルの枠組みの中で、ルールにとらわれずに観客の興味を惹きつける物語を紡ぐにはどうすればよいのか? 鑑賞も考察もやめられない。好きでたまらないんです。その中で、自然とさまざまなことに挑戦する機会を得られているように感じますね。
【V-CRAFT ENCHANTED DAY 1】The Wizard's Legacy Lives On【MODDED MINECRAFT RP】 「VCraft Enchanted」はNIJI ENchantedのスピンオフにあたるMinecraftサーバーで、2025年9月16日から29日まで開設された。
Vox:もう1つは、Luxiemのメンバーとしての私です。2021年から2022年、そしてその後も華々しい成功を収めることができました。成し遂げてきたことすべてに今でも満足感を覚えます。しかし、その裏で否定的な意見も多く浴び、確かな影響を受けてきたことも事実です。そこでもう一方の私は、ファンが求めるものと自分が求めるもののバランスを取ろうとしているのです。毎日、毎日、思考を巡らせます。「今日は何をしよう?」と考えてみて……私自身のためだけに時間を使いたい気分かもしれない」と感じた日は、気が済むまで自分の創造力を働かせるようにします。反対に、「すべて忘れて視聴者のニーズに合った配信をしよう」と思う日もある。肯定的な反応につながりますし、実際いい気分になれます。
自分の中で綱引きが行われているようで、ストレスを感じることもあります。それでも結局、私はファンも仕事も大好きで、経験できる1つひとつが愛おしいのです。むしろ、視聴者たちと交流したり、創作に打ち込んだりした幅広い経験があったからこそ、私はよりよいアーティストになれたのだと思います。多くを学び感じ取るきっかけになったのだ、と。
定期的に配信を見に来てくれる人たちとの繋がりは、計り知れない影響を持つものです。ライバーと視聴者との関係は、双方向にほかならない。思うようなパフォーマンスを発揮できずに落ち込む日もあります。それでも不思議なもので、いつか今のすべてを振り返るようなときが来たら、価値のないものなんて1つもなかったと思える気がするんですよね。それはきっと、ファンと過ごした時間があるからです。「この経験で私が感じたことを力に変えて、これからも人に楽しんでもらえる創作を続けていけるはずだ」と思えることでしょう。
――全員を満足させるのは難しい、ということですね。それで余計に、視聴者のニーズとご自身の希望のどちらを優先したらよいのか、日々悩まれてしまうのではないでしょうか?
Vox:その通りです。私は、人の意見を取り下げたり「ノー」と言ったりするのが本当に苦手な性格なんですよ。デビューしてすぐの頃は、VTuberという分野は分からないことだらけでした。知る由もなかったような文化や伝統に溢れていたんです。想像とあまりにかけ離れていたので、デビュー初期には自分の未熟さを痛感しましたし、吞み込まれそうにもなりました。そこで「カメレオンにならなくては」と思うようになったのです。周囲に溶け込まなくては、と。
結果として、何かできるかと言われたら「イエス」と答えざるを得ない自分になってしまった。快く頷けるときもあれば、そうでないときもありました。私はファンサービスを絶やさないライバーとして知られるようになりました。当時はそれが正しい行動だと思われていましたし、実際に効果もありましたからね。私はライバーとして成功した。それに、ファンとの関係性にも満足していました。奇妙なまでに親密な、素晴らしい関係性。本当に特別なものに思えました。そこにはさまざまな落とし穴もあったのですが、当時の私は気付かなかったのです。いや、気付いていながら見て見ぬふりをしていたのかもしれません。成功ゆえにね。
当時のようにニーズに答えていくか、私自身の創作意欲に従うか。その葛藤は今でもあります。2023年に公開したThe Demon Hungersにさえ様々な意見が見られました。内容自体にではないですよ。作品そのものは、概ね高い評価を得られたと思います。賛否が分かれたのは、後に私がその作品でやろうとしたことについてです。長く応援してくれていたファンの目には、あまりに急激で劇的な変化に映ったのでしょう。私がとても楽しみにしているものへと繋がるはずの一大プロジェクトだったのですが、予想通りに受け止めてもらうことは叶わなかった。今でも心に引っかかっています。
思うように事を運ぶのは難しいものです。ですが、今、私についてきてくれているファンは本当に素敵な方たちばかりで、いつも背中を押してくれるのです。私はただ、正しいバランスの取り方を探し続けていきたい。そしていつか、これだと言える方法を見つけ出せればいいなと思います。まあ、例えある分野のトップに立つような人でも私のような悩みがつきものなのは承知の上ですけどね。
――逆に言えば、デビューしてまだ4年のVoxさんには成長の時間がたくさんあるということですよ。
Vox:そうですね。まだ時間はたっぷりある。逃げるものでもないし、成長したり新しいことに挑戦したりする余地なら常にあるんです。これから何が起こるのか、それは誰にも分かりません。未来を想像するたび、何も想像がつかないことに私の心は軽くなるのです。今の努力を続けていけば、2年後にはどうなるだろう? 4年後には? 6年後には? 10年後には? 分かるはずもない。ただ、とにかく挑戦し続けるつもりです。
マネージャー視点のVoxは「今後の業界の変化に大きな影響を与える存在」
――次はマネージャーさんにスポットを当てましょう。先ほどお聞きした通り、いろんなことに積極的にチャレンジされるVoxさんですが、彼をサポートするうえで大事にしていることはなんですか?
Voxマネージャー:実際のところ、我々マネージャーがライバーにできることというのは限られていると思うんです。Voxさんが話してくださった、ファンと創作との間で日々向き合うことになる葛藤。これに関して自分ができることといえば、Voxさんの話を聞き、自分の意見を伝え、一緒に解決策を考えることくらいです。
Voxさんは日頃からたくさんのことを抱えていて、中には自分が把握しきれていないこともあるのだろうと思います。自分が大切にしていることを1つ挙げるとするなら、それは、Voxさんのプロジェクトやアイデアを会社と共同で具現化できるようにすることです。そうなると、申請であったり、締切や規則が関わってきます。そこで自分は、Voxさんの手を煩わせずにこちらでできることはすべてやって、どうしても本人の手を借りなければならないことがあったときだけ連絡をするようにしています。最善の方法ではないかもしれませんが、これが自分なりのサポートです。
――先ほど、Voxさんはチャットのレスポンスが滞りがち、とおっしゃっていましたね。
Voxマネージャー:目は通していただけるのですが、返信を忘れられている、といったことがたまにあります。それで、確認済みなのかどうかが分からなくなってしまったりしますね。それから、頭の中では答えが出ていらっしゃるけれど、それを文字にしたり自分の耳に入れたりするのを忘れていて、状況が把握できなくなってしまう場合もあります。Voxさんにはほぼ毎週たくさんのメッセージを送ることになるのですが、返信が期待できるのはそのうちの半分くらいで、もう半分は、Voxさんが週次ミーティングに出てくれてそこで確認が取れることを祈るしかない、と覚悟を決めて送信しています。
返信が来ないのは、Voxさんが怠けているからでも嫌がっているからでもないのは分かっているんですよ。ただ、彼がそういう性格だというだけなんです。なのでこちらもイライラすることはありません。ただ冷静に、自分のほうでできることをこなして、急ぎで欲しい情報があるときにだけ電話をかけるようにしています。
それでもだめなら、泣き顔の絵文字を送ります。そうすると大抵返信が来ます(笑)。
――マネージャーさんの視点で感じる、Voxさんの強み・魅力はどんなところだと思いますか? また、マネージャーさんが見つけたVoxさんの意外な一面があればお聞きしたいです。
Voxマネージャー:この業界はまだ新しく、たくさんのクリエイターが自分なりの理由を胸にこの道を選ぶのだと思います。中には、欧米地域にVTuberの存在を知らしめるなど、業界全体に大きな影響を与えたクリエイターもいます。自分にとって、Voxさんはそのひとつです。
自身のチャンネルやコンテンツだけに注力するのではなく、NIJISANJI ENとにじさんじ、ひいては業界全体のことを気にかけているのが伺えます。どうしたらもっと注目を集められるかといったことに加えて、どうしたらこの業界を健全な形でより広く認知させることができるかについても考えていらっしゃるんです。彼のような存在はVTuber業界になかなかいないと思いますし、そういった方々が業界を強くしてきたのだと思います。Voxさんは、今後の業界の変化にもきっと大きな影響を与え続けていくはずです。
――Voxさんは、デビュー当初には知らないことがたくさんあったとおっしゃっていましたが、マネージャーさんのコメントから、どれほど深く今の活動を愛するようになったかが伺えますね。ライバー活動だけでなく、周りの人たちのこともとても大切に思っていることが伝わってきます。
Voxマネージャー: おっしゃる通りです。単なる仕事や趣味を超えるものなのでしょうね。Voxさんが考えるこの業界の捉え方や、いかに多くの物事が関わって成り立っているかという見解は、どれも本当に興味深いんです。デビュー当時からどれほど成長なさったかが分かります。
Vox:とてもうれしいお言葉です。感激しました。どうもありがとう。
――おふたりの話を聞いていると涙がこぼれそうになります。この流れで、Voxさんにお伺いします。マネージャーさんのサポートに助けられたなと感じた瞬間はどんなときでしたでしょうか? またマネージャーさんからかけられた言葉で印象的なものがあれば教えてください。
Vox:大きな出来事としてぱっと思い浮かぶのは、つい最近、自分のやろうとしていることにもやもやして例のごとく方向性を見失ってしまい、なんとか進むべき道を見出そうとしていたときのことです。普段、私とマネさんは毎週決まった日に1対1のミーティングを行っているのですが、それとは別の日に悩みを相談しようと連絡をしたところ、すぐに返信が来てその場で面談を設定してくれました。話し始めると、するすると言葉が出て会話を進めることができたんです。何か印象的な言葉があったかと言われると思い出せないのですが、自分の気持ちを打ち明けられるのがいかに大切なことかを実感しました。
人前に出る立場であれば、例え眼前の聴衆が少なかろうと、常に笑顔でいようとするには大きなプレッシャーがかかるものです。私は感情的なタイプだという自覚がありますが、それでも心を開くのが難しいと感じるときがあります。あの面談は、私が不安を打ち明けることのできた素晴らしい機会で、計画と確かな方向性を得ることができました。加えて、私の途方もないアイデア1つひとつに率直な意見もくれたのです。真摯で、建設的で、私を成功に導くための意見。私の気分を明るくするためだけの建前などではありません。安心できましたし、「支えてくれているんだ」と感じることができました。
大勢のファンが「こんなことをやってほしい」と提案してくれる状況では、絞り込みが難しくなりがちです。自分の決断を貫くことも、「確かにそうだ」と感じる意見に従うことも必要になる。私にとってファンの意見は本当にありがたいもので、しっかりと受け止めたいと思っています。ですが、それと同じくらい、私が何をすべきで何をすべきでないかを、私自身で区別し判断できることも大切だと感じるときがあるのです。マネさんに助けられたのは、まさにその点です。自分自身のアイデアを生み出し、それを譲らないことの大切さに気付かせてくれたのです。
活動5年目に突入しファンに誓う「誰にも真似できないものを提供できるような存在に」
――さて、Voxさん。ライバー活動5年目に突入しますが、この機会に始めようとしている新しいことは何かありますか? もしくは、5年目の目標をお聞かせください。
Vox:現時点ではお話しできないことばかりという前提のもとですが、裏で少しずつ進めているプロジェクトがあるので、それを早くお見せしたいですね。あっと驚かせるものにできることを祈っています。しかし何よりも、ただ単純に5年目、6年目のことを考えるのであれば、そのときに取り組んでいる仕事や配信に胸を張っていられるようになることが一番の課題です。
今日この話をすることができたのも何かの縁でしょうね。私はついさっきまで、10時間もMinecraftのロールプレイ配信をして、自分の演じるキャラクターに入り込んでいた。ある種のメソッド・アクティング(※)をしているような感覚でした。あたかも私自身が、あのMinecraftの世界で今まで生きてきたかのように思えたのです。ロールプレイのキャラクターとして生活を送り、ほかの参加者の会話や行動に関わっていく。私を苛立たせたり動転させたりしていたのは、ほかでもないあのキャラクター自身の感性だったとさえ思えます。
※→映像や舞台などにおいて俳優が役を構築するための演技理論。リアルを追及するために役の内面を深く掘り下げ、その感情・体験を俳優自身の感情記憶を結びつけるもの。
そんな体験を経てしまったら、「以前にも創造力を思い切り働かせた瞬間があった」と思い返さずにはいられない。そうして自分に問いかけるのです。「私が本当にやりたいことは何か?」「私がやってみたいことで、真に唯一無二で価値があると思えるものは何か?」。その核心を突き止められたなら、これだと信じるものを確かに文字で表現できている確信を持てるようになったなら、きっと魔法のように思えることでしょう。
憧れてならない。「これこそ、私が本当に追求したいものではないか」という気がするのです。追い求めたら最後、デビュー当初のような狂おしいほどの高みには二度と手が届かなくなってしまうかもしれない。それでも私は、胸を張って作品を世に送り出す経験を重ねることができるのなら、出発点としては悪くないはずだと信じています。
まあ、このキャリアとライフスタイルの中でやりたいことを極めようと思ったら、続く道のりはきっと長くなってしまうのでしょうけどね。なにせ私は変わりやすいので。人に言われたことに簡単に影響されてしまうし、自分自身を疑いがちなために信念を貫き通すことも難しい。それでももし、私自身の創作意欲の結晶を視聴者にも喜んでもらえるかたちで生み出せるようになれたなら、間違いなく私は満たされることでしょう。目標とするのに申し分ないというわけです。
――先日のWilsonさん(Yu Q. Wilson)へのインタビューでは、台本やシナリオ執筆への熱量を伺うことができました。Voxさんからは、執筆すること、そして演じることが、ご自身の一部であるかのような印象を受けます。おふたりがタッグを組めば傑作を生み出せるのではないでしょうか?
Vox:その話もしなくては。私はWilsonの劇(※)でヴィランを演じたんですよ。あれは本当に楽しかった。衣装を手配したりキャストの団結を保ったりと、ライバーが自分たちの力で取り組んだことが本当にたくさんあったんです。キャストの一員として自己表現ができたことは、何物にも代えがたい思い出です。
それに、Wilsonは優秀な物書きなんです。特にコメディが素晴らしい。私の作家としての最大の弱点は、往々にして暗く、恐ろしく、シリアスになりすぎてしまうこととも言えます。恐ろしい内容にしたいと思ってのことなので、基本的にはそれでいいと思っているんですよ。ですが、もっとおちゃらけたユーモアのある内容を書こうとすると、いつも行き詰まってしまう。その点、Wilsonは本当にセンスがあると思います。尊敬していますよ。友人としてだけでなく、作家としてもね。彼のアイデアにはいつも楽しませてもらっています。
「Terrasanji: Echoes of the Dark Realm」は、Wilsonが脚本・監督を務めたオリジナルのファンタジーコメディ劇。Voxを含む18 名のNIJISANJI ENライバーが出演した。
――対照的なスタイルを持つおふたりには、素晴らしいチャンスがこれからたくさんありそうですね。
Vox:私もそう思います。Wilsonは配信でよくいじられたりからかわれたりするのですが、その扱いにも長けていて、いつも笑いへと昇華させているのです。「やりすぎじゃないか」と心配させることもないし、仮にそうなってしまったら打ち切ることができる。それでいいんだよな、と思わせられます。冗談でも言わなきゃやってられないときというのも、確かに存在しますから。
ですが、私は人の言葉や感情に敏感すぎて、苦しい思いをしてしまうことも多いのです。誰かにからかわれると、最初はただの冗談だと思えるのですが、後になってだんだん、本当はどう思われているのか気になってしまうんですよね。そうなると気持ちを切り替えるのは難しい。その点、Wilsonがうらやましいです。でも、おっしゃる通り、私たちには互いから学べることがたくさんあるのかもしれませんね。Wilsonを見習えば、私もその時々の感情にとらわれずにこれからのことだけを考えられるようになれるかな。
Voxマネージャー:そうそう、Wilsonさんの3Dお披露目(※)での演技も、とても面白かったですよ。
2025年8月16日に実施された、Yu Q. Wilsonの 3Dお披露目配信。
Vox:あれは傑作でした。笑える裏話なんですが、Wilsonがビルの屋上から飛び降りるシーンの収録中に、彼、着地と同時におならをしたんです。Vanta(Vantacrow Bringer)とZali(Vezalius Bandage)は爆笑していましたが、私はすでにヴィランになりきってしまっていた。普通に面白い出来事のはずなのに、カメラが回る中で彼らが笑っていることが急に癪に障ったんです。「私は役になりきっているんだぞ!」ってね。あの怒りは私自身のものではなかった。そのときに、私は何かに没入すると抜け出すのが難しくなることに気付いたんです。恐らくこれは恥ずべきことではなく、長所の1つとして捉えるべきでしょうね。
――最後にVoxさんはファンへのメッセージ、マネージャーさんはVoxさんへの激励のメッセージをお願いします。
Vox:どんなメッセージでもいいのなら、私のファン、Kindredたちには「私は変わりやすいから、追い続けていると疲れることもあるんだろうな」と言うことになってしまうと思います。ライバー活動は決断の連続で、私はいつも、自分が楽しく続けられるだけでなくみんながこれ以上ないくらいに楽しんでくれるものを創りたいと真摯に向き合っています。
常に正しい決断ができるとは限らない。独創的で劇的で実験的なものを創ることに躍起になって、全員には受け入れてもらえないこともあります。そうなれば、今後は君たちに振り向いてほしいあまり、私自身が何をしたいのかを見失ってしまうこともあるかもしれない。時々、「ファンが離れてしまうかもしれない」と怖くなるんだ。君たちを失うことは、私にとってとても大切な人を失ってしまうことだから。それでも、約束させてほしいんです。私はこれからも、正しい道を探すことを諦めない。来年か再来年か、あるいはもっとかかってしまうかもしれないけれど、最高の体験を届けられるプロフェッショナルになってみせます。どんなことがあっても笑顔で、せめてほかの誰にも真似できないものを提供できるような存在に。
人と比べてどうという話ではなく、誰しも自分にしかない声を持っているから、私は私の声を精一杯届けていきたいのです。今はただ「私のことを待っていてくれてありがとう」と伝えたい。君たちの心の広さやあたたかさに触れるたびに涙がこみ上げてくる。この気持ちは一生忘れません。
Voxマネージャー:Voxさんが日々多くの困難に直面していることは理解しています。この言葉で何かが変わるわけではないでしょうけれど、あなたのマネージャーでいられることは自分の誇りであることを、どうか覚えていてくださいね。Voxさんがどんな道を選んでも、自分は必ずサポートします。もちろん自分だけじゃなく、みんなが手を差し伸べてくれます。
Vox:ありがとう。マネさんの誇りになれるようがんばります。
Voxマネージャー:もう十分なってますから、心配しないでくださいね。