会社にまつわる「誤解を解きたい」……エニマガが生まれた理由
ライター TK:ANYCOLOR MAGAZINE(以下、エニマガ)が先日オープン1周年を迎えました。これを記念しまして、どのような経緯・目的でエニマガが出来たのかを、社内の方々からいただいた質問にお答えする形で振り返っていきたいと思います。まず前提として、エニマガ運用チームの構成メンバー、それぞれの役割をご紹介します。これはチームリーダーでもある、TSさんからお願いします。
ANYCOLOR MAGAZINE チームリーダー TS(以下、エニマガリーダー TS):僕がエニマガチームのリーダーとして、全体的なディレクションやプロジェクトマネジメントを行っております。読者の皆さんにもわかりやすいところでいうと、エニマガのトップページを飾るカバーアートのディレクションも担当しています。
チームメンバーは、記事を作成するライター兼編集者がTKさんとMさんを含む数名と、カバーアートの制作進行担当者、そしてデータ分析とサービス改善の担当者で構成しています。サイトの開発自体は社内のエンジニアチームに協力を仰いで、密に連携を取りながら実施していますね。エニマガ編集長には僕たちがいる部署の管掌役員が就任しています。
ライター TK:現場目線でのいろいろな相談事・決めないといけないことはTSさんに舵取りをしていただいて、企画内容などエニマガの方針などに大きく関わる最終的な決定は編集長も交えて決めていますね。
ライター М:ちなみにTSさんたちの前職までの経験を踏まえて、エニマガぐらいの規模の媒体を運用するとなると、今のチームの規模感はどう感じますか? 大きいのか、または小さいのか、どうなのかな?と聞いてみたかったんです。
エニマガリーダー TS:開発陣がとても厚いですし、エニマガをきちんと運用するために必要な仕事を挙げてみると、ちゃんと必要なポジションの人間がいるなとは思っています。ライターは少なめかなと思いますが……。
ライター TK:編集部と呼ばれる組織にいくつか在籍した経験を振り返ると、エニマガでお送りしているボリュームの記事を恒常的に出すとなると、ライターは少なめかもしれませんね。まあ少数精鋭、ということで……(笑)。では社内からの最初の質問です。「エニマガはANYCOLORのオウンドメディアですが、そもそもオウンドメディアを作ることとなった理由を改めて教えていただけますか?」。私とМさんはエニマガのプロジェクトがある程度進んでから入社しているため、TSさんからご説明いただけますか?
エニマガリーダー TS:まず大きな目的の1つとしては「誤解を解きたい」ということでした。もともとANYCOLORは、会社自体が自己開示をする場があまりなかったんです。その結果、おそらく我々は世間から見てよくわからない組織になってしまっていて、憶測が広がって誤解されることが多々ありました。自分たちのことを世間にきちんと紹介してこなかったので、にじさんじファンの方でもそうでない方でもそういうふうに感じてしまうのは、ある種しょうがないことだったのかなと。それを解消するために、ライバーさんたちのことも我々スタッフのことも、自分の言葉で語れる場所が必要だという考えに至ったんです。
もちろんそれまでも他社のメディアや記者の方に、にじさんじを取り上げていただくことはありました。しかしVTuberという業界がそもそも若いこと、ほかのエンタメコンテンツよりも技術的に難しいことが絡んでいるという事情もあって、正確な記事を作るハードルが高くなってしまっていたんです。それと同時ににじさんじを応援してくださる方々の層が昔よりも広がり、いろんな年代の方々に注目いただけるようになってきたので、きちんと正確に情報発信できるメディアの必要性を感じた、という理由からエニマガの企画がスタートしました。
ライター TK:確かに自分たちから「実際はこう」とお伝えしていかないと、誤解は解けませんからね。
エニマガリーダー TS:そうですね。これは余談ですけど、僕自身も入社前にANYCOLORにまつわる断片的な情報をネットで見て「この会社、大丈夫なのかな…」というイメージがあって。いざ入社したら思っていたよりちゃんとした会社でいい意味でびっくりした、という実体験もあります。そこがまさに「よくわからないけど誤解されている」ということかなと思いました。
ライター М:なるほど。エニマガがオープンして1年経ったわけですが、今改めて考えてみて「ANYCOLORにまつわる誤解を解きたい」という、立ち上げ時の意図に対して効果はあったと思いますか?
エニマガリーダー TS:完璧とまではいかないと思いますが、一定の手応えは感じています。例えば先日「お仕事手帖」で法務チームのインタビューを掲載しましたが、その直後に実際に法務の対応事例を報告するプレスリリースが出ましたよね。エニマガで法務チームがどういう気持ちで仕事をしているのかが具体的に語られたあとでしたから、記事を読んでくださった方からの「まさにこういう仕事をしているのか。法務の皆さんありがとう」というようなコメントを見かけました。

お仕事手帖 法務編・前編 「ライバー&スタッフを法で守る」法務チームの信念とは
ライター М:そうでしたね。
エニマガリーダー TS:スタッフについては、裏方として働く側も自分たちの言葉で語っているので、いろんなコンテンツの裏にそれを動かす人々がいて、それぞれがちゃんと仕事をした結果が世に出てるんだ、ということは理解していただきやすくなっているのかなと。血の通った人間の集合体としてANYCOLORが形作られている、という一面を前よりも見てもらえるようになったかなと思っていますね。
ライター TK:Мさんの質問は「メディアを立ち上げたゴールとして、こういう未来があってほしい」という目的の話だったと思うのですが、エニマガというメディア自体は当初TSさんたちが思い描いていたイメージ通りのものができたんでしょうか?
エニマガリーダー TS:いい意味で、当初の予想からあまりズレてないと思います。そもそも、僕はオウンドメディアを立ち上げた経験がなかったため、当初掲げていた方針・イメージのままオープンできるとは考えていませんでした。でも、1年経ってみたら「意外と予想通りできたな?」と思いました。
「雑誌のように楽しめる」オウンドメディアはこうして生まれた
ライター TK:エニマガが誕生した理由については伺いましたが、実際にどのような経緯を経てオープンの日を迎えたのかもお聞きしたいです。
エニマガリーダー TS:会社としてオウンドメディアが必要だという意見が出始めたのが正確にいつ頃だったのかは定かではないんですが、僕が入社したのは2023年の5月で、担当として実際に動き出したのがその年の夏でした。そもそも当初は単独のサイトを作るのではなく、にじさんじの公式サイトにメディアの役割を持たせて情報発信をしていこうと思っていたんですよ。
ですが、にじさんじの公式サイトはあくまで「にじさんじ」のサイトなので、ANYCOLORという会社の情報も発信するとなると難しい場面もあるだろうな、ということになったんです。そのため、2024年2月頃に個別のサイトを立ち上げる方向に舵を切りました。
ライター TK:立ち上げから半年あまり議論が続いたんですね。
エニマガリーダー TS:はい。いざオウンドメディアの立ち上げとなると、具体的なコンテンツ面と、UI・UXを含めたサイト作りの両方を企画・進行する必要がありました。開発チームとコミュニケーションを取りながらでしたが、企画側の担当者は2024年春頃まで僕1人だったので、かなり大変だったという記憶があります。
ライター TK:TSさんってそもそも社内で本来の業務があって、エニマガの企画進行はいわばサブの業務でしたよね。
エニマガリーダー TS:そうですね。でも具体的に必要なコンテンツや運用の役割が見えていくごとにだんだんメンバーが増えて、進行もスピ-ドアップしていきました。そして紆余曲折あって、いよいよオープン日を2024年10月に定めた、という流れです。
ANYCOLOR MAGAZINEオープン時の告知ビジュアル。当時の略称は「えにまが」だった。
ライター М:となるとTSさんは2023年に入社してすぐの頃から、本来の仕事と並行してずっとエニマガの企画を動かしていた、ということになりますね。
ライター TK:今もそんなに多い人数で運用している、という感覚はないんですけど、1人で動かすとなると大変なご苦労があったんじゃないかと思います。オープンのタイミングに出す記事を作る時期は我々ライターチームがまだギリギリ入社していなかったので、外部のライターさんにご協力いただいて記事を数本用意していましたよね。そして2024年10月にエニマガをファンの皆さんにお披露目することができましたが、TSさんはエニマガの企画進行をするうえでどんなことに一番苦労されましたか?
エニマガリーダー TS:カバーアートに関することですかね。オウンドメディアを立ち上げて、面白い記事を出し続けられたら多くの方に読んでいただけるとは思いますが、そこに頼っているとエニマガというメディア自体が面白い、ということにはならないんじゃないかという意見がありました。サイト自体に愛着を持ってもらいたいという理由で、特集内容に合わせて撮りおろすカバーアートという仕組みを取り入れたんです。世の中で流通している雑誌の表紙グラビアのようなものですね。
ですが、1つのカバーアートビジュアルが完成するまでに何カ月もかかりますから、その制作スケジュールと特集用インタビュー記事の進行を嚙み合わせるのが少し難しいポイントでした。苦労しましたが、今ではなんとか軌道に乗せることができたと思っています。
ライター TK:雑誌風、という話がありましたが、このサイトってANYCOLOR “MAGAZINE”ですよね。サイトのトンマナ(※1)も雑誌風に寄せていますし。「鶏が先か、卵が先か」みたいな質問ですが、これってどっちが先なんでしょうか? ANYCOLOR MAGAZINEというサイト名称に決まったので雑誌風のサイトを作り上げたのか、雑誌のようなオウンドメディアを作りたいのでサイト名称をANYCOLOR MAGAZINEにしたのか。
※1→「トーン&マナー」の略語。デザインや色調、雰囲気などの統一ルールのこと。
エニマガリーダー TS:それで言うと後者が近いかもしれないですね。雑誌のように楽しみながらいろんな情報に触れてほしい、という思いは最初の頃から変わっていないので。そのことを踏まえて、サイト名をANYCOLOR MAGAZINEにしました。
LOCK ON FLEEK特集のカバーアート
ライター М:そうだったんですね。僕もカバーアートという取り組みはすごくいいなと思っているんです。ファンの方々にも喜んでいただいていますし、カバーアートがサイトを訪れていただけるきっかけにもなっていますよね。
ライター TK:新しいカバーアートが公開されると、多くのファンの皆さんに話題にしてもらえますからね。その様子を見て、私たちもうれしいなと思っています。
ゼロから始める編集部作り、にじフェスで10万歩、美麗ビジュアルに感動
ライター TK:ではお次の質問です。「この1年間、エニマガを運用してきた中で強く印象に残っているエピソードはありますか?」。これはTSさんだけでなく、我々にも話せることがありそうですね。まずМさんどうですか?
ライター М:エニマガがオープンする少し前に入社したんですが、やっぱり最初の頃のあれこれが思い出に残っていますね。先ほど話題に上がったカバーアート特集の更新は今よりもハイペースでしたし、しかもその頃って、ライターが僕とTKさんの2人きりだったじゃないですか。
ライター TK:そうでしたね。「ライター2人っきり時代」はそれからけっこう長い間続きましたが。
ライター М:編集部として動き出すにあたって必要となる、運用ルールや取り上げる記事の方向性などもほぼない状態からライターチームが2人でいろいろと試行錯誤しながら作ってきたので、あの頃のことが一番記憶に残っています。やっぱり何事も軌道に乗せるまでが大変だと思うんですけど、そのために必要なことを整えつつ、記事を作っていましたね。
ライター TK:編集の方向性とか表記統一をはじめとした運用ルールって、ほかの媒体だと何年も何年もかけて次第に形作られる“秘伝のタレ”のようなイメージがあったんですけど、それもない状態でしたからね。本当に編集部作りのゼロの状態から始めないといけなかったんですが、個人的にはすごく新鮮で勉強になったと思っています。でも、あの頃は延々とミーティングを組んでいましたよね……。
ライター М:決めないといけないことがあまりにも多かったですからね(笑)。その後はカバーアートの更新ペースも月1回に整えて、いろいろといいペースで仕事ができるようになったと思います。そんなTKさんは何が印象的でしたか?
ライター TK:「にじさんじフェス2025」(以下、にじフェス)の取材期間ですね。会場準備から撤収まで含めて、Мさんと8日間ぐらい幕張メッセに詰めて取材させていただきました。もちろん主体となってにじフェスを運営しているスタッフがたくさんいるので、私たちが「大変!」って言うのはおこがましいんですが……。いろんなセクションの方々にフェス期間中の本当に大事な時間を割いて協力してもらったおかげで、とても濃密な現地レポ-トが仕上がったという自負があります。それにあの大きなイベントを作り上げるスタッフたちの“創造力”とタフさを目の当たりにして、圧倒されました。

「にじフェス2025」密着レポ前編 開幕前夜! 準備に奔走するライバー&スタッフを追う
ライター М:確かに!
エニマガリーダー TS:僕も現地にいたんですが、本当に2人は会場のあちこちを走り回っていました。最終日にTKさんがあの期間中に何歩歩いたか教えてくれましたよね。結局どれくらいだったんでしたっけ?
ライター TK:だいたい10万歩でした。実感が薄いですが、直線距離だと東京から箱根ぐらいまで行ける歩数みたいです。
エニマガリーダー TS・ライター M:(笑)
ライター M:確かににじフェスは僕もかなり記憶に残っています。個人的に初めてのにじフェスでしたし、どんな人が何を担当しているのかを下調べしてはいたんですが、実際に現場を目にするとものすごい迫力や臨場感を感じられて。僕たちが感じたそのすごさをどうやって記事に落とし込むかも、TKさんといろいろ相談しながら作り上げていきましたよね。
ライター TK:実際に取材してみないとわからないことが本当にいっぱいありましたしね。来年開催される「にじさんじフェス2026」にもエニマガは何かしらの形で関わりたいと思っているんですが、「前回よりもファンの皆さんに喜んでいただけるような内容にするにはどうしたらいいのかな」とチーム内で試行錯誤を重ねている最中です。TSさんはこの1年でどんな場面が思い出深いですか?
エニマガリーダー TS:今年3月に公開した「新生活特集」のカバーアートが出来上がったときですね。もちろんエニマガのカバーアートはたくさんのクリエイターさんたちのご協力でいつも素晴らしいビジュアルを制作していただいているのですが、「新生活特集」はエニマガの中でもけっこうチャレンジングな特集だったんです。ライバーさんのアニバーサリーや何かのイベントに絡めたものでなく、これから新生活を始める人たちに向けたエールを送るもので、カバーアートもインタビューにご協力いただいた家長むぎさんと七瀬すず菜さんが桜を背景に立っているものを作成いただいたんですよね。
あのビジュアルが完成したとき、その出来栄えがあまりにも素晴らしくて。僕やМさん、TKさんをはじめチームメンバーが1つのモニターの前に集まって「すごいね」「いいね!」って言いながら見つめていた瞬間がとても印象的でした。
ライター M:確かにあのビジュアルは本当に素敵でしたね。
ライター TK:カバーアート制作進行担当のデスクにみんながわらわらと集まって見ていましたね。
ANYCOLOR MAGAZINE カバーアート特集『新生活特集』
社内ライターのメリットは? 記事作りの特徴は口ぶりが想像できる言語化
ライター TK:「エニマガの記事のほとんどは社員であるライターが作成していますが、自社のライターが記事制作をするというシステムを採った理由はなんでしょうか」。確かに、外部のライターさんに取材・執筆をお願いして、我々はライターさんに書いていただいた原稿をチェックさせていただく、という方法もできますよね。
エニマガリーダー TS:企画の立ち上げ段階の頃ですが、外部のライターさんに協力してもらうことを真剣に検討したタイミングもあったんですよ。
ライター TK:そうだったんですか。
エニマガリーダー TS:ですがメディアとしてのエニマガの性質と目的は、読んでいてちゃんと面白くて、伝えたい情報を深く正確に伝えられるということにあったんです。先ほどVTuber業界がまだ若いと言いましたが、そのこともあって先に挙げた2点をクリアしてお任せできそうなライターさんにめぐり合うのは、なかなか難しいと当時は感じていました。
それと同時に、インタビューの際にはまだ世間に出せない社内の情報にもアクセスすることもありますし、取材のためにライバーさんと会話する機会もあるので、なかなか社外の不特定多数のライターさんにお願いすることは難しいな、と。また、情報を正確に伝えるという目的のために、ライバーさんや社内のスタッフへの非常に細かい確認が何度も必要となることもあるため、ほかのお仕事を抱えている外部ライターさんにお願いするには、工数の面で現実的じゃないという理由もありました。もちろん今でも記事の性質によっては、信頼のおける社外のライターさんにお願いすることもありますよね。
ライター M:そうですね。でも確かに、僕たちが社内にいるライターということもあって、記事に含まれる情報は担当スタッフにきっちりと確認が取れるので、認識の齟齬を無くせている、ということは実感しています。記事作りのために事前に必要な情報にちゃんとアクセスできて、それを十分に活かせる、というのは社内ライターのメリットなのかもしれません。
ライター TK:あと社内ライターはいわばANYCOLOR専属のライターということにもなるので、基本的には会社と、にじさんじなど会社から発信されるコンテンツを中心にアンテナを張っていることが求められますから、自然と理解は深まりますよね。部署をまたいでいろんなスタッフと話して会社のいろんな事業内容に触れていくことになりますが、それぞれが意外なところでつながっていることもあります。思いもよらなかった情報が別の企画に活きたり、過去の取材内容を参考に踏み込んだ取材が出来たり、ということもあるので。そこはすごくありがたいですね。
エニマガリーダー TS:そうですよね。そういう経験をどんどん積んで、エニマガのライターとして成長していってほしいとも思っています。
ライター TK:次の質問は主に我々ライターチーム向けかもしれませんね。「普段の記事制作はどのような段取りで行われているのか」です。
ライター М:ざっくりとご説明すると、まず「こういうテーマで記事化したい」という候補をいくつか出して、編集長にこの企画を通してもいいのかどうか確認を取ります。その後、進行することが決まった企画は社内スタッフ・ライバーさんなどに企画の説明をして、そこで了承をもらえたら質問内容を考えて、取材をする。文字起こしをして、読みにくいところや意味が通りにくいところを編集して原稿を整えて、サムネイルや記事内に入れ込む動画・画像の準備をして公開……という流れです。
ライター TK:だいたいどんな紙媒体でもWebメディアでも同じ工程を踏みますよね。
ライター М:そうですね。ただ、特徴的だと感じることがあるんですが、確認のフローは僕が今までいたメディアと比べてかなり多いですね。記事を1本作るのにもかなり時間をかけていると思っています。
ライター TK:ああ、確かにその点はそうかもしれないです。
エニマガリーダー TS:オウンドメディアとして載せられるものとそうでないものの線引きなど含めて、一般的な記事作りと比較するとエニマガはかなり丁寧にやっていますよね。
ライター TK:そうですね。事実誤認や認識の齟齬、誤解を招く表現がないか……など細かく見ています。社内ライターということもあって、企画を立てるまでに必要な情報はすぐ手に入りますし、相談事もフラットにできるので、企画を立ててから取材をするまでは、ものすごく早く事を運べているなと思っています。逆に取材が終わってから原稿が完成するまでは、それまでと打って変わってかなり時間をかけますね。先ほど話に出たように、いろんな段取りを踏んで複数の視点からチェックをしているので。
通常の記事はフットワーク軽く進めていますが、カバーアート特集にする企画はビジュアル制作などの兼ね合いで、かなり早く予定を立てますよね。たぶん、読んでくださる方々が思っているよりもずっと先まで予定が立っていると思います。記事を作るとき、Мさんはどんなことに気を付けていますか?
ライター М:テキストの媒体はどこもそうだと思いますが、文章ってニュアンスの違い1つで誤解を招いてしまう危険性がありますよね。エニマガには普段配信でファンの方々と交流されているライバーさんの声を届ける、という役割もあるので、ライバーさんの伝えたいことが誤解なく伝わるように原稿化することを心掛けています。
エニマガリーダー TS:ライターチームは、インタビューのときのライバーさんの口ぶりやテンションを活かして原稿を作るようにしていますよね。
ライター М:そうですね。インタビュー原稿としてきっちりした文章にするよりも、ファンの皆さんが普段配信で親しんでいるライバーさんの姿がそのまま見える記事のほうがいいと思うので。
ライター TK:ファンの方々から「文章なのに、ライバーの声が聞こえるようだった」と言っていただくことが多いのですが、私たちもそこは大事にしている部分なので、共感していただけてうれしいですよね。
エニマガリーダー TS:ライバーさんだけではなく、スタッフが登場するインタビューでもそうですよね。同じ社内にいて人となりを知っていることもあって、記事を読むと「確かにあの人はこういう言い方をするよな」とわかるときがあるんです。恐らく読んでくださる方が思い描く印象は、実際にインタビューしているときに我々が抱いているものとほぼ変わらないんじゃないでしょうか。取材をしたときの空気感を損なわずにちゃんと伝達できているのは素晴らしいことだと思います。
ライター М:ですよね。TKさんはどんなことに気を遣っていますか?
ライター TK:オウンドメディアとはいえ楽しんで読んでいただきたいので、内容があまりに固くなりすぎないようにしています。取材の中で出た面白いエピソードや、心が温かくなるような話があればなるべく入れて、真面目一辺倒にならないよういいバランスを目指していますね。
そしてエニマガは本当にいろんな世代の方々にご覧いただけるメディアになりつつあるので、基本ではありますが日本語表現としての誤りがないかどうかはもちろん、オウンドメディアとしてふさわしい言い回し・内容なのかということも、意識しながら記事作りにあたっています。
ライター М:あともう1つ付け加えるとしたら、自社のメディアだからこそできる記事を公開したい、ということも部内で意識していますよね。例えばライブレポ-トは他社の媒体でも記事にしていただくことがありますが、エニマガではライブ終わりのライバーさんの感想コメントを入れるなどして、ファンの皆さんがライブをより楽しく振り返ることができるよう、そして記事をきっかけにより多くの方にライブに興味を持っていただけるような記事作りをしています。
運用チームの記憶に残る、あの記事・この企画
ライター TK:オープンから数えて、エニマガで公開した記事は先日100本を超えました。「皆さんがこれまでで一番記憶に残っている記事はなんですか?」というご質問もあります。
ライター М:僕は壱百満天原サロメさんのインタビューですね。にじフェス2025内で開催されるサロメさんのソロイベントのことを中心にお話を伺って、ご自身の活動についてもお聞きしたんです。“100満点のお嬢様”を目指すサロメさんは活動の柱として「ファンを笑顔にしたい」ということを掲げているんですが、その本当の理由について深く掘り下げて、ファンの方に届けられたなと思ったんです。
エニマガリーダー TS:サロメさんについては、ソロイベントが終了した直後にもご感想を語ってもらっていますよね。
ライター М:はい。あのステージにたどり着くまでにもいろいろありましたし、本番直後ということでお疲れだったんじゃないかなと思ったんですが、サロメさんはすごく晴れやかな顔をしていらっしゃって。本当にやりきった、という印象でした。

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ライター TK:そうやって舞台裏まで密着してお話を聞けるのも、エニマガのよさですよね。TSさんはどうですか?
エニマガリーダー TS:今月(※2)公開されたハロウィン特集の中の、にじさんじオカルト研究部の皆さんのインタビューですね。普通の取材はTKさんとМさんが聞き手としてインタビューを仕切っていると思いますが、このインタビューはもう本当にライバーさんが自由に発言してどんどん会話が発展していって、担当のМさんが完全に翻弄されていましたよね(笑)。その結果、普段とはちょっと違うテイストの記事が完成して、面白かったです。
※2→取材は2025年10月に行われた。

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ライター TK:このにぎやかな空気をそのまま原稿として形にできたのはすごいですよ。原稿を作る前には下準備として取材音源の文字起こしをするんですが、この企画のときМさんは会社でめちゃくちゃ笑いながら起こしてましたよね?(笑)。
ライター М:音源を聴き返していたら、我慢できなくて笑ってしまいました……(笑)。TKさんはどんな記事が印象的ですか?
ライター TK:いろんな記事を担当させていただいたので悩みますが、新スタジオに密着した連載企画ですね。スタジオ移転の話は以前から知っていたので、「どういうものが出来上がるんだろうな」と思って楽しみにしていたんですよ。実際に取材で新スタジオにお邪魔したら、想像を超える規模かつ、ライバーさん・スタッフの要望を最大限取り入れた設計だったので、「この魅力をどうやって伝えたらいいかな」と悩みもしましたが。
連載が終わってみると、スタッフの皆さんの「いいものを作りたい」という熱意が全編を通じて印象的でした。「ライバーさんの魅力が詰まったコンテンツを作るのであれば、最大限いい環境で作られたものを世に出したい」というこだわりや熱意、プライドを感じられるインタビューになったと思っています。あと、連載の1本目はにじさんじのコンテンツ制作を支えてきたスタジオの変遷を社歴の長い社員がたどる……という内容なのですが、ローションカーリングや昔のスタジオの引っ越しなど、面白い裏話も出てきて思い出に残っていますね。

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ライター М:あの連載は記事の反響もすごく大きかったですよね。
ライター TK:「ここまで赤裸々に話してくれるんだ」という声もありました。
エニマガリーダー TS:この記事に限らずですが、やっぱり社員が自分の仕事に誇りを持って働いているなと感じる場面があります。それぞれ自身が担当している仕事や、会社が世に送り出しているコンテンツにも自信を持ってるからこそ出てくる言葉というものは必ずありますし。
ライター TK:取材をすればするほど、スタッフを好きになっていくなと思っています。人柄ももちろんですが、自分たちが熱意を傾けている仕事は素晴らしいものなんだという意識で努力される姿が印象的なので。そういう姿を今後も伝えていきたいですね。次の質問ですが、「先日エニマガのデザインがリニューアルされたと告知されました。エニマガチームからリニューアルポイントについて詳しく教えてください」とのことです。リニューアルを行った理由と合わせて、TSさんからお話しいただけますか?
エニマガリーダー TS:まずリニューアルの理由についてですが、サイトの使い心地について「ここがこうだったらいいのに」というコメントをSNSなどで目にしていたので、そういうご意見を拾い上げて少しでもよくしようと思っていたんです。僕たちも仕事をする中でサイトデザインについて「もっと読みやすくできそう」と感じる部分が出てきたので、そこも含めて解消しようということが理由でした。
また、エニマガの記事もずいぶん増えてきましたので、お目当ての記事を読んでいただいたあとにほかの記事も一緒に読んでいただけるようなサイト作りをしたいということもありました。例えば、1つの特集内で関連する記事にアクセスしやすくできたり、そのままほかのインタビューやライブレポのページに目を止めていただく機会も増やせないかなと。
そのために注目してほしいポイントとして、「キーフレーズ」という新たなコーナーを設けています。エニマガのページ下部にコメントが流れているコーナーがありますが、過去に掲載した記事の中から、面白いひとことや興味深いキーワードをピックアップして更新しているんです。エニマガには面白い記事がたくさんありますが、タイトルとサムネで面白さが伝わりきらずスルーされてしまっていたらもったいないなと感じていました。そこで、何か気になるひとことをきっかけに記事をチェックしてもらえたらいいなという理由で追加した機能です。
ライター TK:あとエニマガのサイトって、紙のフォルダのようなあしらいがあったり、カバーアート特集のアーカイブが雑誌のようなデザインになっていたりしますよね。Web上であえて紙のエッセンスを感じられて素敵だなと思います。
ライター М:僕もエニマガのサイトデザインが好きですね。自分たちが関わってる媒体ですけどすごくいいデザインなので、そのよさは引き継いでこれからも運用していきたいです。
エニマガリーダー TS:あとすごく細かいところですけど、SNSなどでの検索性を考慮して、デザインリニューアルより少し前に、ANYCOLOR MAGAZINEの略称をひらがなの「えにまが」からカタカナの「エニマガ」に変更しました。もしご感想を投稿していただける場合は「エニマガ」でしていただけると僕たちも見やすいので、読んでくださる方は是非お願いいたします。
ライター TK:最後の質問は、「ANYCOLOR MAGAZINEの目標や、今後挑戦したいことは何かありますか?」です。TSさんからお願いします。
エニマガリーダー TS:僕としてはファンの皆さんに、にじさんじをもっと好きになっていただいて、ANYCOLORという会社を好きになっていただける方も増やしていきたいです。この思いは、エニマガのプロジェクトの担当になった頃から変わっていません。あと密かに考えていることですが、エニマガを読んでANYCOLORに入りたいと思ってくださった方と一緒に仕事ができたら、なおうれしいですね!
ライター М:先程話に上がってはいますが、エニマガのライターをしていると、必然的ににじさんじライバーやANYCOLORスタッフの皆さんのお話を直接聞く機会が多くなり、毎回その熱意に感動させられているんです。自分自身もそんな仕事に携わることができていることをとても光栄に思っているのですが、だからこそそこで聞いた言葉を読者の方に正しく伝える責任があるとも考えています。これからもそういった言葉をより読者の方に伝えることができるような記事作りを意識していきたいと思っていますね!
ライター TK:エニマガは「『にじさんじ』と『ANYCOLOR』を読み解くエンタメWebマガジン」をスローガンとして掲げていますが、個人的にはそれに加えて、ライバーさんと会社がさまざまなコンテンツを生み出していく未来に期待していただけるようになったらいいな、と思っています。そのために多角的な視点から知見を深められる記事をお届けしていきたいですね。皆様からいただくご感想・ご意見は私たちにも届いておりまして、本当に励みになっています! 2年目ももっとがんばりますので、是非お付き合いいただけたらうれしいです。